小・中・高における国語授業の改革 文学作品・説明的文章を読む方法 -構成・構造、形象・論理、吟味・批評- の追究 「読み」の授業研究会

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研究紀要

読みから書きへの発展

研究紀要IV(2002.8)

小林義明(学習院女子大学)

一 学習指導要領と読み研の課題

 科学的「読み」の授業研究会 (読み研) は、「読み」の分野に重点を置いて実践研究を続けてきた。しかし、学習指導要領では、コミュニケーション能力を重視し、新しく「伝え合う力」が取り上げられている。また、三領域の中では「話すこと・聞くこと」がトップに位置づけられ、「書くこと」、「読むこと」の順になっている。これは、単なる順番の問題ではない。「読みの力」は、明らかに下位に置かれて軽視されている。しかし、国語学力の基礎・基本が「読むこと」「書くこと」にあることは、誰にも否定できない。いま、危惧されている「低学力」の問題は、単に授業時数の削減や教える量の多い、少ないの問題ではない。国語学力の基礎・基本を重視し、その系統的な発展を図りながら、コミュニケーション能力を育てていくことが求められているのである。
 読み研は教育現場の新しい状況に対応しつつ、「読み」の分野を基本に置きながら、他の領域との関連を視野に入れて研究を発展させる必要がある。この論稿は、その端緒を開くことを目指している。

二 学習指導要領の「書くこと」についての扱い

 「学習指導要領」では、小・中学校の「書くこと」について、次のようになっている。
◇小学校
 1・2学年
 順序が分かるように、語や文の続き方に注意して文や文 章を書くこと、楽しんで表現しようとする態度を育てる。
 3・4学年
 相手や目的に応じ、調べた事などが伝わるように、段落 相互の関係などを工夫して文章を書くこと、適切に表現 しようとする態度を育てる。
 5・6学年
 目的や意図に応じ、考えた事などを筋道を立てて文章に 書くこと、効果的に表現しようとする態度を育てる。
◇中学校
 1学年
 「必要な材料を基にして自分の考えをまとめ、的確に書き 表す能力を高めるとともに、進んで書き表そうとする態 度を育てる。」
 2・3学年
 「様々な材料を基にして自分の考えを深め、自分の立場を 明らかにして、論理的に書き表す能力を身に付けさせる とともに、文章を書くことによって生活を豊かにしよう とする態度を育てる。」
 この「学習指導要領」に基づく二〇〇二年度版小学校教科書については、次のような批判的な指摘もある。
(1)例えば広告や紹介のように、何を書くかを決めて情報を 集め、それをまとめて報告する。
(2)総合的学習にかかわって意見をまとめ、情報を発信する。
(3)読書指導とセットにして書くことを取り入れる。
(4)例えば新聞作りを行なって、伝えたり、知らせたりする 文章を書く。
(5)例えば手紙、礼状、招待状、依頼状など「相手や目的意図 に応じて」書く。
  自分のことや自分の周りで起きた様々な出来事につい て考え、丁寧に書き綴る生活文が減っている。 (注1)
 確かに、実用的な文章を書くことが多くなり、いわゆる生活作文が減少しているという問題点はある。しかし、小・
中学校の「書くこと」に一貫しているのは、「目的や意図に応じ、考えた事などを筋道を立てて文章に書くこと」「自分の考えをまとめ、的確に書き表す能力を高める」「自分の考えを深め、自分の立場を明らかにして、論理的に書き表す能力を身に付けさせる」など、筋道の通った論理的文章を書く力を重視しているのが特徴である。
 その上にたって、ここでは読みの力の発展として論理的な文章を書く実践的な取り組みを提起する。
注1 都教組編「小学校新教科書検討資料」

三 「読み」と「書き」の関連

 文章には構造がある。説明的な文章では、前文 (序論) ・ 本文 (本論) ・ 後文 (結論) がその典型構造である。論理的な文章を書く場合には、
(1)テーマを決める。
(2)自分の立場を明確にし、主張や結論を短く文章化する。
(3)本文 (本論) の中身を、短い文やメモで列挙しておく。
 a具体例をあげて、詳しく説明する。
 b根拠となる理由を明確にする。
 c資料や他の見解などを援用して自説を論証する。
(4)構想を立てる。
 三部構造で文章の骨組みを作る。例えば中学生の場合、四〇〇字詰め原稿用紙一枚で、論理的な文章を書くようにする。前文・後文を各3行以内に収め、本文は行以内を目安に書いていく。
 前文 (序論) … テーマの提示・問題提示・結論など。
 本文 (本論) … 詳しい説明・論証。
 後文 (結論) … 主張・結論など。
(5)文章を書く。
 書き出しは一字空け、段落は改行して一字空けて書くなど原稿用紙の使い方にも注意する。
(6)推敲する。
というのが指導の順序性である。
 「構想を立てる」際には、読み研の「構造よみ」が有効に働く。また、意見文や論評を書く場合には、要約よみ・要旨よみが活きてくる。相手が何を述べているかを的確に把握しなくてはならないからである。その際、柱の段落・文・語に着目すれば、要約や引用も的確にできるようになる。
 文章の吟味も重要である。相手が述べている文章のどこが優れているか、不充分なところはないか、誤りがないかなどが吟味できなくては、論評は書けない。文章吟味の結果、不充分さや誤りがあれば、リライトして文章を修正するといった読みの力は、添削や推敲に生きてくる。読みの力が「書き」の基礎になるのである。
 文章吟味の指標は次の通りである。 (注2)
A文章のすぐれた点を明らかにする。
 1)文章がわかりやすい。
 2)事実と論理の整合性。
 3)内容がすぐれている。(問題意識・科学性・社会性・文化性・価値観など)
B文章の問題点を明らかにする。
(1)事実にかかわる吟味
 1)書かれててる事実・概念に誤りや問題がないか。
 2)書かれている事実・概念に曖昧さがないか。
(2)論理にかかわる吟味
 1)他の選択可能性を無視していないか。
 2)他の解釈可能性を無視していないか。
 3)論理の不整合がないか。
注2 阿部昇『説明的文章教材の徹底批判』 (明治図書)

四 具体的な実践への提起

(1)演習問題
 次の文は新聞の投書欄に掲載されたものである。 この様子を観察している第三者の「私」の立場から、四〇〇字以内で意見を述べよ。ただし、前文・後文各3行、本文行を目安とする三部構造で書くこと。

 先日、新大阪駅のホームで列車を待っているときのことです。
 すぐ近くに若い両親と三〜四歳の男の子の三人家族がいて、父親がのぞみやひかりなどの特急列車について教えてあげていました。
 子どもは一生懸命に聞いていたようですが、入ってくる列車をもっと近くで見たくなったのでしょう。入線してくる列車に向かって駆け寄ろうとしました。すると母親があわてて「そんな近くに行ったらしかられるよ」といいました。子どもは「だれにしかられるの?」と聞き返しました。母親は少し考えて「運転手さんにしかられるよ」と答えました。
 そこまでは私もぼんやりと母子の会話を聞いていたのですが、次の子どものひとことが耳を打ちました。
「運転手さん、ピストル持ってるの?」

(2)学生が作成した意見文

 私は驚いて、思わず運転手の方へと顔を向けました。
 この光景とあまりにかけ離れている言葉が不意に聞こ えたからです。すると、そこには指さし確認をする運転手の姿が。私は男の子のその年頃特有の素直な感性に感心し、また可愛らしさに思わず苦笑してしまいました。
 私と同様に、その男の子の両親も、はじめは驚いたふうに運転手を見ましたが、子どもの言いたいことを理解できたらしく、母親が、「違うのよ。あれはね、運転手さんが危なくないかどうか、確認しているのよ。」と、教えていました。子どもは、大人が見ても何とも思わないようなありふれたものにも、こうして新鮮な印象を与えてくれます。子どもには、私たち大人は持ち得ない真っすぐで素直な感性が備わっているのだなあと感じました。
「子どもは小さな天才」とはよく言ったものです。男の子とその子の両親に感謝したくなるような、そんな出来事でした。(岡田綾子)


 私は、この母子の何げない会話で子どもの単純ながら明確である思考回路に驚いてしまった。
 自分をしかる。=自分より偉い=自分では太刀打ちできない力をもっているという図式が、この子どもの頭を巡ったのだろう。その太刀打ちできない「力」こそが、ピストルなのだと感じたのだろう。大人にしてもそうだが、ピストルは、どんな口論、人格、暴力をも一瞬で静かなものにしてしまう力があると子どもは思っているに違いない。と同時に、ピストルを持っていない大人は無力なのだとも感じているかもしれない。そこには、単純ながら明確である子どもの思考回路というものが浮き彫りにされている。
 私は思うのだが、子どものこういった発想について、親はどう受け止めるべきか、どう誤りを正すかがいちばん重要だろう。(熊谷清香)


 現在の社会事情、私たちをとりまく社会環境は多大に変化している。この会話はそんな現在の事象を表すよい一例である。
 この母子の会話において問題となることが二点ある。一つめは母親が子どもへ注意を促すのではなく「しかられるから」やめなさいという、もし「しかる」人がいなかったらしてもよいという親として子どもの行為に責任を放棄しているという考え方。二つめは子どもの返答である「ピストルを持っているの?」という、子どもにとって「しかる人」は悪いときめつけ、また悪い人はピストルを持っているという固定概念を持っている考え方である。
 最近は親が子どもを育てるうえで大切な倫理観を持たないために子どもも倫理観を持たない親へと成長してしまったり、情報を受身的にのみとらえ、自分で考えることをしなくなるがゆえに創造力が欠如している子どもも多いという。これらのことを解決するためにも親としての義務や価値を見直さなければいけない。(伊藤真由美)


 運転手さんにしかられるから入線してくる列車に近づいてはならない、という説明と、危険だから近づいてはならない、という説明ではどちらが子どもを納得させることができるだろうか。
 子どもは理不尽な理由で怒られたり注意を受けることに敏感である。道理の通らない説明では納得できずに、ただ行動を制限されたという印象を残してしまうだろう。
 若い両親と子ども一人の三人家族であるが、この場面で注意をしたのは母親だけである。かたわらにいたはずの父親は一切発言していない。父権が弱体化している日本ではよく見られる光景なのかもしれないが、ある小さな出来事の中で父親の威厳を示すことはできるはずである。
 子どものしつけは両親二人の手にゆだねられているということを改めて感じた。(岡本真波)


 この文章は、日本の現代社会の問題を明確に表している。
 まず第一に、「そんなに近くに行ったら、しかられるよ」という言葉である。日本の現代社会において、家庭内における「しつけ」は、昔より比べて甘くなってきてしまっている。他人にしかられると言う前に、母親が子どもに注意することが大切である。
 第二に、子どもの言った「ピストル持っているの?」という言葉からは、日本社会の安全神話が崩れ去ってしまっていることが見てとれる。犯罪の低年齢化や犯罪の多発が子どもにまで恐怖感を植えつけてしまったのである。
 このような問題を解決するためには、まず家庭内でしっかりと子どもを教育し、愛情豊かな家族を作ることが大切である。そして、家庭や地域が共に社会を作っていくということを頭におき、生活していくことが重要になってくるのである。(東 佳奈)

(3)新聞投稿の読みの問題
 実は、問題文には省略した部分 (後文) がある。そこには筆者の感想と意見が書かれている。もし、全文を引用すると意見文の作成が筆者の感想・意見に引きずられる可能性がある。
 省略した部分は次の通りである。

 入ってくる列車に近づくと危ないからと注意するのではなく「しかられるから」という母親の言葉にも疑問を感じましたが、「運転手さん、ピストル持ってるの?」という小さな子どものひとことにギクリとしました。
 人をしかったり注意したりするものは、何か武器を持って相手を威圧するのが普通の感覚になっているとしたら、それはたいへん怖い感覚です。考えさせられるひとことでした。

 省略した部分の筆者の感想・意見は次のようになろう。

  母……「そんなに近くに行ったらしかられるよ」
    ◇「しかられるから」 (疑問)
         ↓
     「危ないから」とすべし。
  子……「運転手さん、ピストル持ってるの?」
    ◇ (ギクリとした)
         ↓
     人を叱ったり注意する者は武器で威圧するものだ、という感覚になっているとしたら怖い。

 次に、問題文とした投稿の内容を吟味する。
 第一に、「そんなに近くに行ったらしかられるよ」という母親の注意についてである。
1)「列車に近づくと危ない」という事実認識を教えて注意 すべきである。
2)「だれかにしかられる」の「だれかに」は、「叱る人」を 特定しない書き方である。幾通りかに読み取れる。
 a母だけでなく、他の人も同じように注意する。 (共通の認識)
 b母は許すとしても他の人は許さない。 (許容の範囲)
 cこわい人にしかられる。 (他者への責任転嫁、権力関係の導入)
3)「危ない」よりも「しかられる」を使う方が効果的である。(表現効果)
4)「しかられる」は、悪いという評価である。 (規範、あるいは価値観による指導)
5)「しかられる」は感情的表現である。 (感情に訴える)
6)「危ない」 (事実認識)から「しかられる」 (感情的認識)へ の短絡的な転化。認識のレベルにズレがある。
など、多様な読みが可能である。
 第二に、「運転手さん、ピストル持ってるの?」という子どもの質問についてである。
1)ピストルの本質
「ピストルとは何か」について考えを深める。
 a威嚇用の武器。例えば、警察官のピストル携行。
 b殺人用の武器。例えば、ピストルによる犯罪。
 c護身用の武器。例えばアメリカなどでピストルの所持が認められているのは、護身用であるとともに人権の擁護という側面がある。
 d戦争用の武器。兵器として認められるのは、国家権力の問題が関わってくる。
 しかし、いずれも「力 (武器) によって相手を屈服させる手段である」点に共通性がある。
2)単純で無邪気な、幼い発想。
3)「しかられる」ような悪いことをしているという認識。
4)マスメディアの影響。
5)銃犯罪の多発という社会状況の反映。
6)親の注意の仕方の問題 (躾、教育)
 第三に、父親の問題である。
1)子どもに電車の種類を教える。 (知的興味)
2)電車に近寄る子どもへの反応は不明だが、子どもへの父 親と母親の対応の違いは読める可能性がある。
 これらの読みの可能性と吟味によって、書くべきテーマを定め、自分の意見や主張を打ち出していくのである。

(4)構想を立てる
 学生が書いた意見文から、文章構造を分析してみよう。読む側から見た構造と書くが側から見た構造は基本的には同じである。学生の実作から構想を立てる際の文章構造の具体例を挙げてみよう。
1)三部構造
 文章の組み立てを構造という。説明的文章では、前文 (序論) ・本文 (本論) ・後文 (結論) の三部構造が典型構造であることは既に述べた。各部の性格を書く側の立場で述べると次のようになる。

前文 (序論)
・問題提示
・テーマ (話題) の提示・テーマを取り上げた動機・テーマの意味づけ
・結論

本文 (本論)
・導入・前提条件の提示
・詳しい説明(いくつかの問題について述べる場合は、段落を変えて述べる。)
・論証
・論旨の発展

後文 (結論)
・結論
・まとめ
・感想
・予想される発展・新たな問題提示
・残された課題・留保条件

2)段落
「段落」とは、文章の一区切りである。本文はいくつかの段落で構成されていることが多い。この投書の例文では、「そんなに近くに行ったらしかられるよ」という母の注意について1段落、「運転手さん、ピストル持ってるの?」と発した子どもの疑問について1段落費やしている。本文は二段落構成になっている。
 「論理的な文章を書く」初期の学習としては、「三部構造の四段落構成」で文章を綴ることをネライにしてはどうだろうか。「四段落構成」と言っても、起承転結の四部構造ではない。本文 (本論) を二つの段落に分けて書くのである。例えば、
・具体例、資料→考察 (帰納法的に)
・論点を一般的に述べる→具体的に論証する (演繹的に)
・論点を箇条的に、第一に・第二に、と二段落にする。
・論点を述べる→論旨を発展させる。
というように、本文 (本論) を二つの段落に分けて書くと文章の論理性も明確になる。八〇〇字程度の小論文には有効である。
3)前文をどう書くか
 「最初の書き出しができると、後はスラスラ進む」とは体験を通してよく言われる言葉である。文章の書き出しには気を遣う。特に文学作品の「冒頭」は重視される。作品の仕掛けがなされていることが多いからである。しかし、論説文の書き出し (序論) は、基本的には明確であればよい。表現効果は第二義である。
 学生の作品からいくつかのタイプを例示しよう。
a問題提示
・この子どもは、ピストルが人を脅かすものであることを知っているのだろうか。
bテーマ (話題) の提示・意味づけ・取り上げた動機
・母親の「そんなに近くに行ったらしかられるよ」という
 言葉に、私は現代の価値観を見た。
・私は、この母子の何げない会話で子どもの単純ながら明確である思考回路に驚いてしまった。
・この新聞の投書欄に掲載されたものを読んで、父親についての感想を述べる。
・「運転手さん、ピストル持ってるの?」という子どもの言葉に、ひどく胸が痛んだ。
・最初に、この文章を黙読して何がおかしいのだろう思った。でも、次々と疑問が出てきたのである。
c結論
・私は列車に近づくことが、運転手にしかられるからいけ ないことだと子どもに教えるのは間違っていると思う。
d導入・前提条件の提示
・子どもの視点にはいつも驚かされるものである。
・子どもの思考というのは、幼ければ幼いほど実体験に基づいている。
・現代社会において、マスコミの力は私たちの生活に大きな影響を与えている。
・最近は、しかる大人が少なくなったと言われる。
・最近、日本でも銃犯罪に関する報道が多くなった。三歳の子どもにさえ銃 (ピストル) という言葉が身近になっている。
4)本文をどう書くか
 新聞投書に対する意見文の作成は、いわば「論評」である。
したがって、投書に書かれている内容、ないしは書かれてはいないが読みとれる内容の「何を」取り上げ、「どんな切り口で」、「どう述べるか」が本文となる。
 例に挙げた学生の本文作成を検討してみよう。
 Aは、「運転手さん、ピストル持ってるの?」という子どもの質問をテーマに選び、2)の「単純で無邪気な、幼い発想」を肯定的な切り口にしている。
 Bは、Aと同様に子どもの質問を取り上げながら、1)の「ピストルの本質」を切り口にして、6)親の注意の仕方 (躾、教育) に論旨を発展させている。
 Cは、母親の注意をテーマに選び、1)の「列車に近づくと危ない、注意すべきである」と2)cの「怖い人に叱られる」 (他者への責任転嫁、権力関係の導入) を切り口にしている。
 Dは、母親の注意の仕方を切り口にしながら、父権の弱体化に論及しているのが特徴的である。
 Eは、親の注意の仕方 (躾) と子どものピストル発言から、4)マスメディアの影響、5)銃犯罪の多発という社会状況を取り上げ、現代社会の問題に論及している。
 しかし、学生は自覚的にこれらの視点を選んでいるとは言い難い。提示された投稿の読みと吟味を行って、はじめて自分の論点の位置づけが明確になったと言う。
5)後文をどう書くか
 論説文では、明確な主張・結論・課題が後文 (結論) となる。その際、「思う」などの曖昧な表現を避け、「〜である」と断定すること。主観的に「思う」「思わない」かが重要なのではなく、「思った」内容こそが重要だからである。レトリカルな表現効果は第二義である。
 学生の作品からいくつかのパターンを例示する。
a主張・結論
・子どもは怖いくらいに純粋である。大人はあいまいな答えを教えるのではなく、はっきりとした理由をやさしい言葉で教えるべきだ。
・親の役目というのは子どもに好かれることではなく、愛情をもって善悪を教え導いていくことである。子どもをしかることは愛情であるのだ。
・母親は、子どもに、電車にぶつかったり、線路から落ちたら大怪我をするということを教えなければいけないと思う。
bまとめ
・だから、私は、父親も母親も一緒に、いろいろな面で子どものことを守るとともに、正確な心理教育をするのも大事なことであると言いたい。 (留学生)
・親が子どもに「教える」ということは大切なことであるが、その内容を十分に考えなければならない。
・以上のことから、母親の言葉に反応した子どもの発言は、彼自身が視覚的に得た知識に基づいた結果だと言えるのである。
c感想
・この文章を読んで本当にこの世の中からピストルなどの兵器が無くなって真の平和が訪れてほしいと思いました。
・私がいつか母親になったときは、しかるイコール愛情だと自分の子どもが思ってくれるような育て方をしたいと思います。
d予想される発展・新たな問題提示
・銃を三歳の子どもが知っている。これは、日本が銃社会に近づいている証拠である。
・このように、子どもにとってメディアは大きな影響を与えており、それを大人もしくは親がコントロールする必要があるのではないでしょうか。
e残された課題・留保条件
・将来、子どもたちが怖い思いをしない日本をみんなで協力し、作り上げていかなければならないなと思いました。
・これからの情報化社会にともない、ますますメディアは発展していくと思う。そのため、私たちも子どもとメディアの関係に気遣うべきだと思う。
・本当に好きなものを間近で見る喜び、それについて聞く喜びを大切にすべきだ。そして、それを自分の力で人に伝えることも大切だ。

五 読みから書きへの発展

 「読めない者は書けない」とは大西忠治がよく口にした言葉である。考えてみれば、外国語が読めないで外国語の文章が書けるはずがない。話せても書くことはできない。
 幼児は、話し言葉と具体的事物を結合させて言語を獲得し、やがて抽象世界へと認識を広げていく。例えば、母親が自動車を指して、「ブーブーよ」と教え、泣いて見せて「悲しい」という抽象的な感情語を獲得させる。やがて、文字が読めるようになり、文字を使って認識を表現することができるようになっていく。文章を読んで、書き方の技術を身につけていく。文章を深く読みとって思考や認識を発展させ、内容豊かな文章を書くことができるようになっていく。読みから書きへの発展である。大西はいつもこのことを考えていたに違いない。
 これまでに述べてきた授業展開は、いきなり問題演習から入った。問題文の構成を考えるとその方が有効だと判断したからである。次に、省略した文章を提示し、構造よみ・要約よみ・要旨よみを行い、内容を吟味した。最後に、実作を集団的に相互検討した。集団的な相互検討は学習班を作って、よい点・直すべき点を出し合い、全体で検討した。検討が不十分であれば補足した。 (今回は紙幅の都合から集団的な相互検討の部分を割愛した。機会があれば報告したい。)
 しかし、一般的には、むしろ教材文の読みと吟味を先行させて、意見文や論評の書き方を指導する方が適切かもしれない。そのほうが「読みから書きへの発展」という必然性にも応える方法論である。
 この実践は学生を対象にしたものであるが、中学生段階でも十分応用できるのではないかと考えている。大方のご批判を仰ぎたい。

読みから書きへの発展

一 学習指導要領と読み研の課題

 科学的「読み」の授業研究会 (読み研) は、「読み」の分野に重点を置いて実践研究を続けてきた。しかし、学習指導要領では、コミュニケーション能力を重視し、新しく「伝え合う力」が取り上げられている。また、三領域の中では「話すこと・聞くこと」がトップに位置づけられ、「書くこと」、「読むこと」の順になっている。これは、単なる順番の問題ではない。「読みの力」は、明らかに下位に置かれて軽視されている。しかし、国語学力の基礎・基本が「読むこと」「書くこと」にあることは、誰にも否定でき

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