ディベート入門

ディベート指導で使用していいるプリントです。

1 なぜディベートをするのか?

 ・自己を主張するコミュニケーションの能力を養う。
 ・「人」と「論」とを区別して討論できる能力を養う。
 ・物事や問題を多面的に認識できる能力を養う。

2 ディベートとは何か?

 ディベートと一般的に言われる討論とは違う。
 ディベートとは、一定のルールにもとづいて行う討論ゲームである。
  ルール1 論題を決める。
  ルール2 形式的に肯定側・否定側の二つの立場を決める。
  ルール3 立論・質疑・反駁の三つの要素を持つ。
  ルール4 勝ち負けの評価をする。
  ルール5 時間を決める。

3 ディベートの形式
(1) 役割
  ①司会者  ②審判  ③タイムキーパー  ④肯定側  ⑤否定側

(2) 配置
  板書で説明

(3) 試合例
  ① 肯定側立論(3分)
  ② 否定側質疑(2分)
  ③ 否定側立論(3分)
  ④ 肯定側質疑(2分)
  ⑤ 作戦タイム(1分)
  ⑥ 否定側第1反駁(3分)
  ⑦ 肯定側第1反駁(3分)
  ⑧ 作戦タイム(1分)
  ⑨ 否定側第2反駁(3分)
  ⑩ 肯定側第2反駁(3分)
  ⑪ ジャッジ (3分)

4 試合までの手順
(1) 論題の提示・選択・決定

(2) ブレインストーミング(ブレストシート作成)

(3) 肯定・否定の立場の決定

(4) 立論・質疑・反駁の準備(プランシート作成)

(5) 立論・質疑・反駁の分担

5 論題の種類
(1) 政策論題(ある事柄を実行するか否かをあらそう。)
   ・ 患者へのガン告知を医師に義務づけるべし。
   ・ 学校給食は廃止すべし。
   ・ 財政再建よりも景気対策を優先した国家予算を組むべし。

(2) 事実論題(ある事柄が事実と推定されるか否かをあらそう。)
   ・ タバコは有害である。
   ・ UFOは存在する。
   ・ 日本人は働き過ぎである。

(3) 価値論題(ある事柄についての価値判断をあらそう。)
   ・ 男と女はどっちが得か。
   ・ 先輩、後輩関係はあったほうがいい。
   ・ 定年制は不要である。

6 立論の仕方
(1) 肯定側立論
  ① 定義
   論題に対しての基本的立場を説明する。
   論題の内容や、語句の内容の具体化をする。
  ② プラン
  「誰が、いつ、どこで、何を、どのように」を明らかに。
  「なぜ」の部分は③で述べる。
  ③ メリット(今回は2点に限定。)
   ・ 筋道(メリットが発生する過程、必然性。)
   ・ 重要性(メリットが重要であることの説明。)
    ポイント1 ナンバリング   論点の数を示す。
    ポイント2 ラベリング    小見出しをつける。

(2) 否定側立論
  ① 定義
   原則として肯定側の定義を採用。代替の定義を提出することもできる。
  ② プラン
   現状維持の立場をとらなければならない。対抗プラン(カウンター・プラン)を出すことは出来ない。
  ③ デメリット(今回は2点に限定。)
   ・筋道(メリットが発生する過程、必然性。)
   ・ 重要性(メリットが重要であることの説明。)

7 質疑の仕方
(1) 相手の立論構造の確認。
   ・ 定義の確認。ラベルの確認。その他。

(2) 根拠や証拠資料の確認。
  ポイント1 簡潔に答えられるように聞く。
  ポイント2 「~ですか」よりも「~ですね」で聞く。
  ポイント2 質疑で聞いたことを反駁で生かすこと。

8 反駁の仕方
(1) 攻め……相手のメリット(デメリット)が成立しないことを述べる。
  ① 発生する過程を否定。
  ② 重要性を否定。

(2) 守り……自分側のメリット(デメリット)の成立や重要性を述べる。

(3) 総括……メリットよりもデメリット(デメリットよりメリット)の方が大きいことを述べる。

9 チーム分け
(1) 1チーム、2~4名とする。

(2) 立論、質疑、反駁を分担して発表すること。

10 ジャッジの仕方
(1) 心構え
  ・ 論題に関する自分の知識を捨てる。
  ・ 議論の事実を指摘して判定する。
  ・ 議論の範囲内に限って判定する。

(2) 講評のスタイル
  ① ディベーターをねぎらう。
  ② 講評する。(議論の大まかなまとめ、良い議論の指摘、アドバイスなど。)
  ③ 勝敗のポイントを述べる。
  ④ 判定する。(勝敗の宣告。引き分けはなし。)

(3) 勝敗の決し方
  ・最終的なメリットの総和とデメリットの総和との比較で決まる。

(4) 反則事項
  ① 相手チームへの非礼行為
  ② 証拠の捏造
  ③ 相手の議論の意図的曲解、歪曲
  ④ 反駁での新しい議論
  ⑤ タイムオーバー

11 フローシートのとり方
(1) フローシートとは?
  ・ 議論の「流れ(フロー)」を記録する用紙。
  ・ フローシートを書くことで、議論の流れがハッキリし、どのメリットやデメリットが攻撃されているの    かがわかりやすくなる。

(2) フローシートのとり方
  ① 記号化する。
    とにかく、素早く書けるように。
  ② 「ナンバリング」「ラベリング」をする。
    なるべくディベ―ターが用いた言葉で書く。
  ③ 関連発言を線で結ぶ。
    論点が違ったら記入する段を変えるとわかりやすくなる。

(3) フローシートの形式
  別紙フローシート参照。

12 その他
   ディベートは言葉の格闘技です。勝ち負けにこだわるところが面白さです。ただし、
  ゲームとしては勝ち負けにこだわりつつも、真偽や正誤の判断はまた別に考えましょう。
  勝って楽しく、負けてさわやかがディベートの試合です。

プロフィール

杉山 明信「読み」の授業研究会 運営委員/つくばサークル
茗溪学園中学校高等学校(茨城県)、成蹊大学(東京都)
[専門]国語科教育法、学力論
[趣味]万年筆、鞄