「自分の意見」を述べるための指導

「読むこと」から「書くこと」へ

宮城洋之(東京都杉並区立荻窪中学校)

1.2つのハードル

 「書くこと」の授業で、なかなか書き出せない生徒や、書き始めたのは良いけれど途中で立ち往生してしまう生徒っていませんか。「書くこと」が苦手な生徒の多くは「何を書けばよいのか」「どう書けばよいのか」という2つのハードルを超えることが難しいのですね。
 2003年のPISA調査の結果では自由記述の問題の無答率の高さが話題となりました。また、国立教育政策研究所が実施した教育課程実施状況調査でも、自分の考えを明確にして書く力、根拠を明確にしながら自分の考え方を述べる力が十分身に付いていないことが指摘されています。これらの結果の背景にあるのもこうしたハードルの問題だったのではないでしょうか。
 さて、大西忠治氏は説明的文章の「要旨よみ」の指導として次のように述べたことがあります。

「最後に到達した要旨そのものに対して、理解と納得がいくか、理解できない所があるか、理解できるがそれに反論したいか……要旨 をうけ入れるか、受け入れにくいか、理解できないか-の三つの態度をあきらかにし、その理由がのべられることが大切である」(「教育技術著作集13 説明的文章『読み』の指導技術」p.64)

 このように説明的文章の授業は「理由を明確にして自分の考えを述べる」という「書くこと」の学習への契機となります。事実や論理の吟味を終えた生徒たちは、その文章に納得するにしても納得しないにしても、たくさんの「ネタ」(「事実」はどうだったか、「論理」はどうだったか)を手にしているはずです。つまり自分自身の「態度」さえ明らかにできれば「何を書けばよいのか」は自ずと決まってくるでしょう。
 では、一つ目のハードルを越えた生徒たちに「どう書けばよいのか」という二つ目のハードルを越える方法を身に付けさせるにはどうすればよいでしょうか。
 今回は、「読むこと」の学習を「書くこと」へとつなげる際に私が実践してきたことの一端をご紹介します。

2.論述の「型」を身に付けさせる指導 

 私は筋道の通った意見を書くためには、ミニマムな論理の「型」を身に付けさせることが有効だと考えています。「型」を身に付けた生徒は自分自身の考えを論理的に構成することができるようになります。

 私が指導しているのは次の三つの「型」です。

(1)箇条型     私は……と考える。その理由は次の○点である。
         第一に、◎◎は△△である。なぜなら……
         第二に、□□は※※である。なぜなら……
         以上の理由により、私は……と考える。

(2)PREP型   私は……と考える。(Point)
         なぜなら……からである。(Reason)
         たとえば……だ。(Example)
          よって私は……と考える。(Point)

(3)譲歩型     私は……と考える。
          もっとも(たしかに)、……という考えもあるだろう。
          しかし、……である。
          よって私は……と考える。

「(1)箇条型」では自分の主張を支える根拠が複数ある場合に適しています。「第一に」「第二に」とナンバリングしながら提示する根拠は、より説得力のあるものから順に並べるように指導します。またそれぞれの根拠がMECE(もれなく、だぶりなく)になるように指導することで、書き手の考えを整理することにもつながります。
「(2)PREP型」は主張と根拠を例によって支えることを教えます。またこの時に例示の仕方には体験・たとえ話・一般的な事例などがあることも指導します。
「(3)譲歩型」では自分とは意見の異なる第三者を想定して説得することを指導します。自分とは対立する考えを予測し、それに対して根拠を示しながら反論するといういわば「攻撃的な型」です。
「型」の習得には反復練習が必要です。そのため、200字程度の短い意見文をくり返し書く機会を設けることが効果的だと考えています。私の場合、説明的文章の授業につなげるだけではなく、定期テストでも毎回かならず意見文を書く問題を出題しています。また、これらの「型」を最初からすべて教えるのではなく、1つをマスターしたら次の型へと進む(たとえば中1で「(1)箇条型」中2で「(2)PREP型」中3で「(3)譲歩型」というように)ことで確実に身に付けさせるようにしています。

3.生徒が書いた文章とテスト出題例

(1)生徒例1:乾正雄「夜は暗くてはいけないか」(旧版・東京書籍「新しい国語3」)の授業を終えた後、この文章に納得できるかどうかを論題として書かれたもの。

 私はこの乾氏の文章には納得できない。その理由は次の三点である。
 第一に乾氏は「夜の街のにぎやかな照明に対応する人間活動として、享楽がぴったり」と述べているが、この定義は一方的である。なぜなら、繁華街だけを取り上げているし、住宅地の安全の為の照明を無視しているからである。
 第二に「北米やヨーロッパには暗い部分が広く残っているのに比べて、日本は暗い部分が少なく……」と述べているが、これには納得できない。なぜなら、面積・人口密度が違う為、欧米との比較はできないからである。
 第三に「暗さが人にものを考えさせる」「現代の夜は考える能力を喪失させた」と述べているが、この結論は正しくない。なぜなら、これは三段論法が使われているが、大前提の「暗さが人にものを考えさせる」というのは文章中で全く証明されていないからである。
  以上の理由により私はこの文章に納得できない。

(2)生徒例2:演奏会での過度のアンコールに対して「本来の演奏のほうの余韻」を消しかねないものだと批判し、自制を求めた新聞投書を読んで意見文を書いたもの。

(中三女子)
 私は○○さんの投書に賛成である。なぜなら奏者の気持ちを考え、客の立場としてアンコールをひかえた方がいいと考えるからだ。
 もっとも、一曲でも多く聴きたいという意見や、奏者は好きでやっているのだから、アンコールをもらえてうれしいはずだ、という意見もあるだろう。または、好きだからこそ、たくさんの曲を聴きたいという考えもあるかもしれない。
 しかし、何回もアンコールをするということは、投書に書いてある通り、本来の演奏のほうの余韻を消してしまう。また、貴重な一曲一曲を味わって聴くと言うよりも、たくさんの曲を聴けた、という印象だけしか残らないだろう。
  以上の理由により、「アンコールに自制を求めたい」という○○さんの投書に賛成である。

(中三男子)
  私は○○さんの「アンコールに自制」の投書には納得できない。なぜなら、○○さんはアンコールをする観客の見方が一方的で、他の可能性を無視しているからである。
 たしかに「同じ入場料でより多く聴かねば損だ」と思い、アンコールを二度三度求める観客もいるだろう。そういう人のアンコールには自制を求めてもいいと思う。
 しかし、素直にすばらしい音楽がたくさん聴きたくて、アンコールを何度も求めてしまう人もいると思う。そういう人にアンコールをやめろ、というのは、あまりに厳しすぎるのではないかと思う。○○さんはこのような人達もいることを全く無視している。
  以上の理由により、私は○○さんの「アンコール自制」の投書には納得ができない。

(3)定期テストでの出題例

(問)次のテーマでPREP型の意見文を書きなさい。なお、以下の条件に従うこと。
 ケンカをした友人と仲直りをするのなら、メールで謝るよりも直接会って謝った方が良い。

条件1・あなた自身の考えにかかわらず、「直接会って謝った方が良い」という立場で書くこと。
条件2・身近にある具体例を使うこと。
条件3・二〇一字以上二四〇字以内で書くこと。(書き出しや改行の際の空欄は文字数に含める)
条件4・常体に統一すること。
条件5・原稿用紙の記入ルールにしたがうこと。
条件6・誤字・脱字に注意し、習っているはずの漢字は使うこと。

4.「型」からの脱出

 このような「型」を意識した学習を積み重ねることで論理的に書く力が身に付いてきます。そして最後の段階では3つの「型」を応用しながら長文を書くことを指導します。たとえば、生徒が実際に書いた文章には次のような応用が見られました。

○○は△△である。なぜなら……だからである。
もっとも……という考え方もあるだろう。……ということもあるかも知れない。
しかし、それはおかしい。以下のその理由を◎点述べる。
第1に、……である。たとえば……。このように……。
第2に、……である。なぜなら……。たとえば……。

 先に述べたように、「型」はミニマムな論理です。したがって、このように「型」を組み合わせて一つの主張をさまざまな方法で支えながら論を展開することが可能です。

5.おわりに

「書くこと」の学習の中でも、特に主張や根拠を述べる文章を書くことは論理的な思考を鍛える上でとても効果があります。それは事実や論理をとらえて吟味する説明的文章の指導と表裏の関係にあります。「読むこと」と「書くこと」が連接した授業。これからも実践的に研究を深めていきたいと思っています。

プロフィール

「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。