高橋喜代治著『続・耕地の子どもの暮らしと遊び ~旧倉尾村長沢耕地の記憶~ 』 (ブイツーソリューション)
著者は、読み研事務局長。2016年年に発行された『耕地の子どもの暮らしと遊び ~旧倉尾村長沢耕地の記憶~』の続編。「昭和30年代を秩父の小鹿野町藤倉長沢耕地で過ごした著者が綴る回想録。様々な遊びと山仕事・家事労働で育った山村の子どもたちの日常が描かれている」とされる、前著に書ききれなかった当時の山村子供たち、さらには大人たちの姿が描かれている。
高度成長で日本が劇的に変化する前の、日本人の生活は、土地と地域の人々との結びついた本当の意味で「文化」というものが存在した時代だったということが、しみじみとよくわかる。人々の確かな営みがあり、その中で子供たちが、周りの自然や、人々の営みとの結びつきの中で育っていた時代だったことを改めて感じる著作である。ここにある生活と子供たちの育ちはほんの50年程前のことに驚きを感じる。
著者とは、昭和32年生まれの私とは世代も若干違い、生まれた地域も関東秩父と岐阜の東美濃の農村と離れていても、書かれている内容が、農村で育った私の子どもの頃の暮らしと重なることが多く、あーそうだったよな、そうそうと思いながら読むところが多く、興味深かった。
エピソードの一つ、「水車」。私の地域にも、窯業原料をつくる小さな工場が多く、水車がずいぶん回っていた。別のエピソード「お客に行く」。これは、とても共感しながら読んだ。正月やお祭りや、そいうい特別の日に、親戚へ行き、従兄弟と遊ぶ、ごちそうになる。布団に入ってもうれしくてなかなか寝付けなかった。たしかに「いっちょうら」を着ていった記憶がよみがえる。
「下刈り」は30年ほど前まで共同の持ち山へ行ってやっていた。真夏の作業で、嫌いだった記憶がよみがえる。下刈り鎌はいまでも錆びてはいるが、家にある。「お蚕様」もそうだ。繭をゆでたときの、あの独特の匂い。「金借り」は読んでいて切なくなる。
今回も、私にとってあの頃の自分や、あの頃の近所の人々に出会ったような気がした。
著者によれば、「秩父のじいさん、ばあさんたちが、この本を回し読みしてる」とか。
前作同様に、各エピソード全てに添えられる著者の教え子小山美和さんの暖かみのある挿絵も秀逸である。
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プロフィール
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