平野先生の国語通信(その1)

東陵中学校 第三学年
国語通信 第一号 
発行*二年続けて三年生を担当する平野先生。

 心にスイッチを   東井義雄

誰だい?
ぼくは 頭は悪いし、ダメな人間かも知れないなんて
心配しているのは?
ダメな人間なんてあるものか
人間はみんなすばらしいんだ
何でも見えるすばらしい目を
君はもっているじゃないか
何でも聞けるふしぎな耳を
君はちゃんともっているではないか
覚えることだって考えることだってできる
ふしぎな働きをやってのけることのできる頭が
君のためにちゃんとあるじゃないか
立ちあがり
どこまでも前進することのできる二本の脚が
君のためにちゃんとあるじゃないか
字を書くことだって
物をつくり出すことだってできる二つの手が
ちゃんとあるじゃないか
たべたものを血にし、肉にし、骨にし
働きのエネルギーにかえていく
魔法のような働きをやってのける胃や腸が
今も君の腹の中で働いているんだよ
明るく 健康で 賢い君になってもらおうと
君が眠っているときにさえ休まず
働きずめに働いている心臓が
ほら 今も 君の胸の中で
ドクドク 働いているじゃないか
どこがダメだというんだ
どこがつまらないというのか
つまらないのは
このすばらしい君のすばらしさに気づかず
自分はつまらないなどと考えている
君のその心だとは思わないか
しくみのりっぱな電球でも
スイッチを入れなければ光は放たない
人間のすばらしい目も
見ようという心のスイッチが入らないと
見ていても見えない
聞こうという心のスイッチが入らないと
耳も耳の働きをしない
頭もそうだ
しくみのせいじゃないんだ
スイッチのせいなんだ
スイッチを入れて鍛えてさえいけば
どんなむずかしいことだって覚えられるようになるし
どんなむずかしいことだって
考えられるようにもなるんだ
月の世界へ飛ぶ知恵だって
人間の頭が生み出したじゃないか
心のスイッチが
人間をダメにもし、すばらしくもしていくんだ
電灯のスイッチが
家の中を明るくもし暗くもするように。

 これから一年間、みなさんの国語を担当する平野博通です。よろしくお願いします。まずはあいさつがわりに詩のプレゼントです。国語の勉強する「スイッチ」は入っていますか?

 みなさんは、国語というとどのようなイメージがあるでしょうか。苦手意識を持っている人もいれば、何を勉強していいか分からないという人もいるでしょう。数学のように答がはっきりと出ないのでわかりにくいと思っている人もいるのではないでしょうか。「国語なんてしゃべれるから勉強せんでもええわ」なんていう人いませんか。
 そんなみなさんに、国語の授業でつけてほしい力を紹介します。

東陵中学校 第三学年
国語通信 第二号 
発行*発言が増えてきてうれしい平野先生。

文章の種類
 世の中の文章にはいろいろなジャンル(種類)があります。はじめに読むときにそれらを区別することで、「読み」の方向性が決まります。たとえば、詩ならば技法に気をつけて読もう、小説だったら登場人物の心情や情景描写に気をつけて読もう、説明文なら書かれている事実を読み取ろう、などと考えることができます。これを逆転させてしまうとどうなるでしょうか?小説で空想の世界が描かれているのに、説明文のように事実だと考えて、そんなのありえないと思ってしまう。そういう読み方がいけないとは言いませんが、ずいぶんまわり道をしているなあとは思います。文章の種類をはじめに確認して、それにふさわしい読み取り方を学ぶ、これをこの一年間の課題にしましょう。
 では、左の図をつかって、日本語で書かれた文章の種類分けを勉強しましょう。

              記録文(時間の順序)
   説明的文章(筆者)  説明文(事実と論理)
              論説文(仮説含む)
文章             随筆
              詩・短歌・俳句(韻文)
   文学作品(作者)   戯曲(シナリオ)
              小説(散文)

 では、それぞれのジャンル別の読みとり方を簡単に説明します。くわしくは授業でやります。

記録文 時間の順序で書かれているので、「アサガオの観察日記」をイメージしましょう。時間を表す言葉を抜き出し、「いつ どうした」という事実を正確に読み取っていきましょう。
説明文 書かれている事実(ことがら)は何か、それをどのように述べているのか(述べ方)をつかむようにしましょう。その際、文と文、段落と段落の関係をつかむために、接続語に注意して読みとりましょう。
論説文 基本的には説明文と同じですが、まだ社会では認められていない筆者独自の意見(仮説)が述べられているので、その意見が正しいものかどうか、考えながら読みとっていきましょう。
随筆 説明的な随筆(事実やできごとが説明されている)と文学的な随筆(筆者の考え方が述べられている)があるので、まずそれを見分けましょう。それぞれによって読みとり方が変わりますが、筆者のものの見方や考え方が出ている点は同じです。発想が飛躍している点に注意しましょう。
詩・短歌・俳句 韻文と言ってリズムを大切にしている文章です。表現技法やリズムに注意して読みとりましょう。短い文章の中に選び抜かれた言葉の裏を読みましょう。
戯曲 劇のシナリオのことです。小説と違ってセリフとト書き(背景説明)で書かれているので、書かれていないことを補って読みとることが必要です。
小説 人物像・事件の流れ・表現の工夫などの要素を中心に、書かれて言葉の裏側を想像・推理していくことが必要です。作者がしかけている設定を読み解き、テーマに迫っていきましょう。

 さて、先日は「春に」(谷川俊太郎)という詩の勉強をしました。その中で、詩のジャンルをさらに細かく勉強しました。

      口語詩(話し言葉で、口語文法によって書かれている)
文体
      文語詩(書き言葉で、文語文法によって書かれている)

      自由詩(形や音数が決まっていないもの)
形式    定型詩(音数が五七五などのように決められているもの)
      散文詩(物語のように改行せずに、表現されているもの)
 
 これらを組み合わせて、口語自由詩などと言っているのです。それぞれの特徴に応じた読みとり方がありますので、注意しましょう。