教材研究 詩の授業『山頂』

読み研通信78号(2005.1)

岡本康子(東大阪市立八戸の里小学校)

1 はじめに

 この教材は、読み研の友人が持ってきたものを、数人の仲間と教材分析をしたものです。それをもとに自分なりの授業をしています。ここ数年、若い教師と学年をもつことが続いています。そこで、山登りの遠足前になると、いつも、この教材を一緒にやろうと誘うことにしています。
・経験が少なくても取り組みやすい
・子どもたちに、技法を教えやすい
・子どもたちから意見が出やすい
と、考えるからです。

2 授業展開


I 遠足の話・目読・範読をする
II 時・場・人物を読む
III 難語句について調べる
IV 技法読みをする
V 表現読みをする


 一般的な読み研の詩の授業と少し違い、この教材では、構造読みや主題読みをしていません。五年生の一学期に起承転結を理解できるだろうかということと、読みを自分のものにして、表現(音読)を楽しませたいからです。

3 教材

    山頂        原田直友

1 すんだ青空よ 高い山の頂上よ
2 その頂上に立って ぼくらは口々にさけぶ

3 おうい やっほう やっほう

4 どうしてだろう なぜだろう 大声でどなりたくなるのは……

5 ぼくの家はあのあたり
6 学校が見える 役場が見える お宮の森が見える
7 ひとすじ川が細く光って流れている
8 その土手をけむりをはきながら汽車がのろのろ走っていく

9 おうい 

10 ぼくらは手をふる ハンカチをふる
11 向こうから見えないと知っていながら
12 ああ なぜ
13 こんなに手がふりたくなるのだろう よんでみたいのだろう

14 おうい
15 やっほう やっほう やっほう
                          (七連 十五行)

4 教材分析

難語句について
 山頂・役場・ひとすじ川(川の名前と思っている)・土手
 都会の学校なので、役場、土手がわからない。
時がわかる言葉をさがす
 汽車……少し前の時代・戦争より前
 青空よ・光って……晴れている日
場がわかる言葉をさがす
 高い山の頂上……(T、どれくらいのさだろう。C,富士山。)とてつもない高い山の名前を出していたが、そのうち、そんなに高くないことに気づいた。頂上から、役場、学校 汽が見えるぐらいの山だと。
(T、みんなの知っている山ならどこぐらい。C、生駒山かな(632m)      
 役場・お宮の森・土手……小さい町か村
人物のわかる言葉をさがす
 ぼく・ぼくら……数人・山の近くに住んでいる   
技法を読む(普通の文と違う表現や書き方をさがす、または、作者の工夫しているところとも説明している)

        ⑤     ⑥⑤
 1 すんだ青空よ 高い山の頂上よ
   ⑯     ⑦
 3 おうい やっほう やっほう
     ⑧                        ⑬
 4 どうしてだろう なぜだろう 大声でどなりたくなるのは ……
          ⑨
 5 ぼくの家はあのあたり
       ⑩      ⑩       ⑩    
 6 学校が見える 役場が見える お宮の森が見える
            ⑪       ⑫
 8 その土手をけむりをはきながら汽車がのろのろ走っていく
   ⑯
 9 おうい
 ⑭       ⑩       ⑩
 10 ぼくらは手をふる ハンカチをふる
 ⑭
 11 向こうから見えないと知っていながら
   ⑮
 12 ああ なぜ
                ⑩          ⑩
 13 こんなに手がふりたくなるのだろう よんでみたいのだろう
   ⑯
 14 おうい
   ⑰    ⑰    ⑰
 15 やっほう やっほう やっほう

① 句点がない
② 読点がない
③ 一ます空け
④ 「 」がない
⑤ よびかけ
⑥ 山頂にすると、山の山頂になるので山がダブル
⑦ リフレーン
⑧ 倒置 
⑨ だ がない、体言止
⑩ 脚韻
⑪ 擬人法
⑫ 擬態語
⑬ 考えている
⑭ 倒置
⑮ 感歎
⑯ リフレーン
⑰ リフレーン

*5行目と6行目は、一ます空きで書いているのに、7行目と8行目は一ます空きがなく書かれている。ここで、視覚・聴覚からの違い、効果を考えさせる。
*それぞれの技法によってどんな効果があるかを教えたり、考えさせたりする。この学習が次の表現読みにもつながる。

5 テーマ

・山の頂上から見た景色があまりにもきれい、感動的だったので、思わず叫びたくなった。
・頂上に登りついた喜び。

6 表現読み

 自分は今、山の頂上にいるということで表現読みをさせる。特に子どもたちは、おういや、やっほうをよろこんで表現していました。遠足に行ったときにもさっそく、やっほうとさけんでいました。

 詩の授業で困っている方には、ぜひ実践をお勧めします。

プロフィール

「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。