実践報告 「アーチ橋のしくみ」(教育出版・小4)
読み研通信72号(2003.7)
《始めに》
私は、読み研の指導理論がよくわかっていない。だから、新教材にぶつかるたびにクライマックスは?柱は?と揺れてしまう。私自身の教材分析力の足らなさになさけないおもいをしている。
しかし、読み研方式の授業は気に入っている。それは、指導の組み立てが子どもに優しく、全員参加を目指していて、そして子どもの知的好奇心をかき立てるからだ。
とはいえ、私のつたない授業では、子どもたちは「おもしろかった」と言ってはくれない。言ってはくれないが、嫌がらずに授業に参加している。そして、少しずつ読みの力がついてきたと自信を得ている。子どもたちの目を毎日見ていてそう感じる。
これといった指導方法を確立していない私にとって、この読み研の指導方法は魅力的だった。その魅力が私に松戸読み研の高い敷居をまたがせた(としておこう)。
毎日の実践の中でまさに子どもと共に学習している私だが、拙い実践について報告を試みてみたい。
《実践報告》
教育出版四年生・下巻『アーチ橋のしくみ』で説明文の柱について次のように指導してみた。
ねらい
・説明文の構造よみについて定着を図る。
・論理よみの柱の概念を理解させる。
指導計画
表層のよみ・・・・5時間
構造よみ・・・・・2時間
論理よみ・・・・・1時間
まとめ・テスト・・1時間
◎本教材では、前文・本文の柱の段落が見つけにくい。そのため、わかりやすい後文についてのみ取り上げることにした。後文は⑬段落~⑮段落である。
後文全文を掲載する。
⑬アーチが重いものをささえるのにてきしているということや、石をどう組み合わせればアーチになるのかということは、ヨーロッパや中国などでは、ずっと昔から知られていました。今から二千年以上も前に、ローマ人によって作られた水道橋も大がかりなアーチ橋として有名です。
⑭日本でも、石がよく使われていた九州地方を中心に、中国から伝わってきたぎじゅつにもとづいて、三百年ほど前から、石づくりのアーチ橋が数多くつくられてきました。長崎市の「眼鏡橋」、熊本県矢部町の水道橋「通潤橋」などはその代表です。
⑮現代のアーチ橋は、初めの写真で見たように、鋼鉄やコンクリートを用いてつくられており、昔のものとは形も大きさもずいぶんことなっています。けれども、アーチが重さをささえる仕組みそのものは同じです。昔から受けつがれてきた人々の知恵は、今もこうして生きているのです。
◎次の様に論理よみを行ってみた。
松戸読み研では、柱の概念を、例文をもとに理解させることが有効だと考えている。本時でも、次のような例を用いて柱の概念について指導してみた。
① 佐俣先生は、スーパーマジシャンだ。
② ぱっと消えることができる。
③ 瞬間移動もできる。
この例文では、①が柱である。子どもたちに問うと、②と③は①の例であるとの答えが多く、柱を理解することが出来た。
そこで、次の様に発問して、後文の柱を考えてみた。
⑬⑭⑮段落のうち、柱の段落はどれだと思いますか。今の例をもとにして考えてごらんなさい。
子どもたちの予想は、次のようであった。
⑬段落・・・・19人
⑭段落・・・・2人
⑮段落・・・・14人
次に、理由をいわせた。
T. 理由を発表して、みんなで討論してみましょう。
P1.⑮だ。昔のことが分からないといけないといっているから。
P2.⑮は違う。⑮はまとめだから。
P3.⑬だと思う。⑬は昔の橋のことだ。P4.⑮は昔のことと関係ない。
P5.⑭は違う。⑭は橋の紹介だ。
P6.⑬も橋の紹介だ。
T. ⑭に賛成の人はいないようですね。⑬と⑮に絞って考えていってもいいかな。
P7.⑭は日本の橋のことで⑬は世界の橋のことだから、⑬の方が大事。
P8.⑬は世界の橋のことで、⑭は日本の橋のことで、⑮は橋のこと全体をまとめている。だから⑮だ。
このような討論がなされ、最終的には、
⑬段落・・・・5人
⑮段落・・・・30人
という結果になった。
この討論は、内容的にも時間的にもこのくらいが限界であると判断し、私が次の様にまとめた。
柱の段落というのは、他の段落まとめたり、文章の中心になっていたりする段落のことです。
⑬段落は、アーチ橋が昔から世界中の国で作られてきたこと。⑭段落は、アーチ橋が昔から日本の各地で作られてきたことを紹介しています。これは、たくさんの人びとがアーチ橋の良さを知り、作ってきたことを私たちに教えるための例です。
そのことをずばり言っているのは⑮段落ですから、⑮段落が柱となります
授業を終えて
次のような成果と課題があった。
◎作者が言いたいことをまとめなさいと問うたのでは学習に参加できにくい子も、柱というものさしにより、文章をよく読み、見つけ出そうとしていた。
◎例文を用いたことで、柱の概念をわかりやすく指導できた。しかし、P7の児童のように、四年生では『世界』と『日本』という言葉レベルでの軽重の比較は出来ても、段落間の軽重比較はとても難しいのだということがわかった。
◎例文を用いるのは有効ではあったが、柱を教える手立てとしては限界を感じた。P2の児童のように⑮段落がまとめの段落だと分かっていても、例文の影響(例文は最初の段落が柱であった)を受けて混乱してしまうことがあるからである。
◎本教材の論理読みは、後文だけで行った。本教材の本文は、アーチ橋の作り方やアーチ橋の強さを試す実験のやり方が書かれており、柱の段落が分かりにくいからである。
松戸読み研での研究でも、小学校教材には、柱の段落を見つけられない説明文(記録文)が多いのではないかと気が付いている。柱については、今後も研究を深めていきたい。
プロフィール
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