新年度版国語教科書の中で貴重な『平和文学教材』 ─「ちいちゃんのかげおくり」(小3・光村)─

読み研通信66号(2002.1)

橋口みどり(町田市立原小学校)

一 教材の今日的な意味をさぐる


① 小学校光村図書一~六年の国語の中で、三つしかない平和教材、そのうち物語は、三、四年でそれぞれ一つ、六年生の教材は、伝えることを目的とした「総合」としての説明文である。本教材は、文章に則して読み取り、主人公に寄り添って、戦争と平和について想いを持つことのできる平和教材として、貴重である。
② 学ぶこどもたちが、かわいく親しみを感じる幼い「ちいちゃん」が主人公である。ちいちゃんに自分を重ねて、人物像を読み進めることができる。
③ 「ちいちゃん」が、最後「小さな子の命」という表現になり、同じ運命を強いられた多くの子どもたちという視点に立つことができる。
④ 空襲や焼け跡の場面は、文章からも戦争の悲惨さを読み取ることができるが、不十分である。三年生にわかるような絵や写真など資料で補うようにしたい。体験したことのない戦争のイメージを持ち、文章を読み進む中で、戦争の悲惨さがより強く伝わる。
⑤ 二回出てくる「きらきら」を対比して読む。意識が朦朧とし、〔星〕になってしあわせになる切なさに対して、現実の中でしあわせになること、平和の尊さが強調されている。
⑥ 終結部の中で、地球上では、現在に至るまでずっと、そして今もアフガン等で戦争が繰り返されており、沢山のちいちゃんや沢山のお兄ちゃんがいることを話し合い、平和への願いや大切さを考える。
⑦ 新学習指導要領で、文学作品も「総合」的な考えが色濃く出ており、
「手引きで」
 ・この物語を人に伝える。
 ・話してもらう人に手紙を書く。
 ・戦争の頃の話を聞く。
 ・戦争文学を読んで紹介する。
等、多面的な活動が組まれている。しかし、配当十一時間の中で、活動主義に陥らず、文学作品として、文章に則してていねいに、読み取らせたい作品である。

二 構造表


○冒頭「かげおくり」って遊びをちいちゃんに……

    家族でのかげおくり

○発端 夏のはじめのある夜、空しゅうけいほうの……

    戦争

○山場の始まり 明るい光が顔に当たって……

    一人だけのかげおくり

◎クライマックス そのとき、体がすうっとすきとおって、空にすここまれていくのが分かりました。

    死

〇結末 ……命が、空に消えました。

    現実の中での平和
  ○終わり ……遊んでいます。

三 授業のポイント
①表層の読み
 語句の読みと意味については、小学校では、時間をかけ丁寧に指導することが重要である。特に中学年では、語彙を拡げ、イメージを拡げることができる時期なので、動作化、ゲーム化等興味が持てるよう工夫して指導する。特に、出征、空しゅう、ほのお、ぼう空ごう、ざつのうなど、戦争に関する言葉については、実物や絵や音など、資料を提示する。
 言葉の中で、次にあげる三つは、主題に関わる形象をつくる上で、重要なので、とりたてて指導する。
・かげ
 1 日・月・星・灯火などの光
 2 かげぼうし
 3 物の姿 
 4 物の後の隠れた所
・ほしいい たいた米を干してかわかして貯えておく飯。これを水に浸せば、すぐに食べられる。
・消える
 1 霜・雪などがとける。
 2 熱や光が絶える。
 3 事物が亡びる。
 4 感覚がなくなる。
 5 心情がなくなる。
 6 死ぬ。
 7 我を失う。



②導入部の読み
 四要素の中で、特に事件設定をしっかり読む。家族の固い絆で守られている、幸せなちいちゃんが、戦争の色が濃くなっていき、負わされるであろう悲しい運命が伏線となっている。


③展開部の形象読み
 資料の助けで、空しゅうや焼け跡をイメージ豊かに読み取る。その中で、父を奪われ、母と兄を奪われ、おじさん、次におばさんとも別れ、一人ぼっちになっていく、切ない哀れなちいちゃんを読む。

④山場の部からクライマックスの読み
 一人でやったかげおくりを、はじめ家族四人でやったかげおくりと比べて読む。家族の愛を求めて死んでいったちいちゃんの悲惨な、切ない運命を焦点化して読み取る。
・ちいちゃんの体がすきとおってきたわけ(死んだわけ)を読む。
 〔疲労、不安、空腹(少しの乾飯)喉の乾き、ふらふらする足〕
・ちいちゃんの死んでいく時の行動と心情を読む。

⑤クライマックスから結末の主題読み
・ちいちゃんが、幻覚、幻聴の中で家族を求めて死んでいった願いを読む。
・「ちいちゃん」が、「小さな女の子」になっているところから、一般化されていることを読む。
・ちいちゃん一人だけのかげおくりから、きらきら(星のかげ)となって、空の上でわらい、やがて朝になって、星のかげ(光)も消え、死んでいったことを読む。

⑥終結部六行の主題読み
 最後の「きらきら」を、結末の「きらきら」と比べて読む。
・星となって天国で幸せになる切なさに対して、太陽の輝きのもとで遊んでいられる幸せ、現実の中での幸せ、平和の尊さを読む。
・「それから何十年」「青い空の下」「今日も」というところで、地球上では戦争が繰り返され、ちいちゃんやお兄ちゃんと同じ運命の子どもたちがたくさんいて、今も苦しんでいる。世界各地の戦争にさらされている子どもたちの現実を描いたメディアなどと対応させながら、ちいちゃんや作者の平和への願いを読む。

プロフィール

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