第27回 夏の大会 報告(3)

多数の御参加ありがとうございました。冬の研究会でもお会いしましょう!

竹田博雄

二〇一三年八月一八日(日)~一九日(月)の二日間に渡り、京都の立命館大学において、今年度の「読み研」夏の大会が開催されました。延べ二〇〇名近い参加者が集う、実りある大きな大会となりました。

 初日は、大会に先立って「読み研」代表の阿部昇先生によるオプション企画・特別講座、「全国学力・学習状況調査ー秋田県連続トップの秘密ートップクラスの要因をデータをもとに解き明かす」から始まりました。そこで明かされた秘密とは、ことさら特別なことなど行ってはいない、教室での学びと家庭学習の重要性でした。教室における子どもたちの授業への参加意識の高さと、家庭における学習習慣の定着率の高さが、秋田県では、県全域で広がっていました。当たり前のことを高い質で確保し、継続させ、定着させている秋田の教育に対して参加の先生方も、改めて強い関心を寄せておられるようでした。続いて、茨城銘渓学園の鈴野高志先生による「オプション企画・特別講座2」、お昼を挟んで、午後1時より、「読み研」事務局長の加藤郁夫先生による「開会ミニ講座・本大会で『言語活動』をどうのように展開していくのか」と題する講座を皮切りにいよいよ大会がスタートしました。

◆ワークショップ的分科会Ⅰ
 ここでは、4名の先生方による「言語活動」を生かした国語の授業提案がありました。共通のテーマは、〈「言語活動」を生かした説明的文章の授業・徹底入門〉です。どの分科会もとても好評で、参加された先生方も、活発にご意見を述べ合い、中身の濃い内容となりました。

◆記念講演と討論的対話
 分科会の後は、阿部先生による講演がありました。タイトルは、〈活動主義を乗り越え、豊かな「言語活動」の授業を創る〉です。現在、国語科教育においても盛んに謳われている「言語活動」。ややもすると「活動」自体が目的化してしまうという、その陥穽について、丁寧な解説と説明がありました。「単元を貫く言語活動」という語句にも、一定の注意を払う必要性にも言及され、とても刺激に満ちた講演となりました。ここでも参加の先生方の、強い興味が感じられました。

◆オプション企画
 夕方からのオプション企画は、4名の先生がたによる、「言語活動」の授業入門講座です。どれも、教室は20名を越え、発表の先生も、フロアの先生方も、疲れたご様子を見せることもなく、最後まで熱気に包まれた初日でした。

◆ワークショップ的分科会Ⅱ
 大会二日目は、二つ目の分科会からスタートです。タイトルは、〈「言語活動」を生かした物語・小説の授業・徹底入門〉です。ここでは4名の先生方による授業入門講座が展開されました。小中学校の教材合わせて計8つの作品を使い、それぞれ個性的な提案がありました。

◆全体模擬授業
 大会を締めくくる模擬授業、今回は、愛知県立大学の加藤辰雄先生による、「ごんぎつね」の授業です。山場の部の形象よみを中心に、「ごん」と「兵十」双方の変化を読み解いていく斬新な授業展開でした。「ごん」の呼称の変化にも着目し、「テクスト」から遊離しない発問、指導言は大変勉強になるものでした。また班を組織し、活発な意見を展開させ、それらを一つの合理的なまとまりや解釈に収斂させていく指導も、とても見事でした。この模擬授業に、フロアの参加者も強く刺激されたようで、授業後の検討会では、発言を希望される方がたくさん出て、とても活発な議論が展開されました。二日間の大会は成功のうちに閉会しました。「言語活動」とは、「活動」中心に決まった形のものがあるのではない、ということが明らかにされた大会であったと思います。

●参加者の感想
※データの分析を元に分かり易い解説でした。特に強調された二つの視点(学校・過程・地域の連携と教員チ ームの研究・研修)の大切さを改めて実感しました。
※阿部先生のお話は明快で分かりやすく、参考になると思います。
※本でクライマックスの見つけ方を理解しても、今ひとつどうしていいか分からないところを、今回、いくつ かの教材でやって頂き、基本がわかってよかった。
※読み研のルールに触れられてこれからに生かせます。
※教材解釈のヒントを頂きました。
※指導過程や実際のやり方を詳しく教えていただき、とても勉強になりました。
※なぜ「言語活動」がこのように言われるようになったのか背景がわかった。
※「言語活動」が活動主義に陥ることに対する危機感を共有できた。
※模擬授業での生徒体験、検討会等は参考になった。
※意見が少ないグループの気持ちがよくわかりました。9月からそんなグループのフォローをしっかりしたい です。
※発問の仕方、一つ一つの動作が参考になりました。発問の作り方、教材分析の難しさを強く感じました。
※ごんぎつねに対する呼びかけ方で、兵十の気持ち、二人の関係の変化を読むというところが参考になりまし た。
※生徒役をさせてもらいまいた。大変分かりやすく、子どもの思考に沿った発問でした。
※とてもテンポよく子どもを授業から離さない進め方だったと思います。
※言葉や表現にこだわって形象を読み取ること、しっかり検討された発問の重要性を感じました。
※「読み」とはすごく多様で深く正答がないものなのでつきつめて考えることが難しいと感じました。参加し てさらに興味がわきました。

プロフィール

「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。