「読み研」八女サークル5月例会の報告

内藤賢司

        「読み研」八女サークル 5月例会の報告
                            

  八女サークルの5月例会について、報告します。八女サークルは毎月1回、教材分析を中心とした例会をもっています。(第1回から通算すれば、今回は188回目の例会となります。)
○日時:4月30日(土)13:30~16:30 
*4月とあるのは、5月分を4月にしたから。4月は、2回もったことになります。
○場所:八女市立見崎中学校
○メンバー:中学校教師4名。*だいたい3~7名ぐらいでやっています。
○内容:3つの教材の分析――「構造よみ」を中心に
    ①小5 小説「世界でいちばんやかましい音」(東京書籍)
    ②中1 小説「オツベルと象」(教育出版)
    ③中1 説明的文章「動物の睡眠と暮らし」(教育出版)

 ここでは、①と③の教材の「構造よみ」を中心に報告します。

Ⅰ 小5 小説「世界でいちばんやかましい音」(東京書籍)

【構造よみ】

    ○冒頭  もう、ずいぶん昔のことです。……
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    ○発端  さて、あと一月半もすると王子様の誕生日が来るというある日、……
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    ○山場の始まり さて、いよいよギャオギャオ王子の誕生日がやってきました。……
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  ◎――クライマックス まさかと思いましたが、まちがいありません。王子様です。王子様がうれしそ     |        うに手をたたいているのです! 
    ○結末  ……、王子様は、それがすっかり気に入りました。  
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    ○終わり  ……世界でいちばん静かな町
  
【クライマックス】について。
・もう一つの可能性(これをAとする。上記のものをBとする)
「何百万、何千万、何億という人が、世界でいちばんやかましい音を聞くために耳をすましました。そして、その何億という人の耳に聞こえたのは、全くのちんもくでした。」
・どちらがクライマックスとしてふさわしいのか。
①Aは、事件の流れで言えば決定的な箇所である。王子様も、そして世界中のすべての人々も、世界でいちばんやかましい音を聞こうとして待ち構えていたにもかかわらず、それに反して全くの沈黙であったという結果が出てしまったのである。
②Bは、王子様の期待を裏切ってしまったという思いを抱いて人々は帰ろうとしていたところ、なんとその王子様は、うれしそうに手をたたいているのだ。予想もできないことが起こったのである。
③ストーリーとしての事件であれば、Aをとるべきであろう。だが、主題にかかわる事件という点から見れば(プロットから見れば)、Bをとるべきである。ここで初めて、沈黙の世界のすばらしさを王子様は知ったのである。ここから、この町は、世界でいちばんやかましい町から、世界でいちばん静かな町に転換するのである。
 
  【主題】
①世界で一番やかましい音を求めていた王子様が、沈黙の世界のすばらしさを見いだすという物語。
②ガヤガヤの都が、世界でいちばんやかましい町から世界でいちばん静かな町へと転換するという物語。

  【読みのポイント、方向性】
・王子様の音についての考え方の変化を読んでいくこと。そのために仕掛けられているところをとりあげて形象読みをしていくこと。繰り返し表現、変化しているところ、普通とは異なる表現、話者の語り方、表現技法などに着目する。

Ⅰ 中1 説明的文章「動物の睡眠と暮らし」(教育)

【構造よみ】
 ( )は小見出し。*は柱の段落。
前 文 なし。 題名の「動物の睡眠と暮らし」を前文としてもよい。
本文1 1~7段落。(動物の睡眠量と睡眠時間帯について)
*柱の段落は7段落。
本文2 8~11段落。(動物の寝方について)
*柱の段落は8段落。
本文3 12~13段落。(人間の睡眠量・睡眠時間帯・寝方について)
*柱の段落は13段落。
後 文 14~16段落。(まとめ。)
*柱の段落は16段落。

 【いくつかのコメント】
①1段落を前文としない理由について。筆者は「動物の睡眠と暮らし」ということで、睡眠量と睡眠時間帯と寝方を取り上げて説明している。この1段落は、その中でも、睡眠量と睡眠時間帯について(だけ)取り上げている。寝方については取り上げていない。すなわち1段落は、本文1を展開するための問題提示(話題提示)となっている。「前文」の働きである全体を支配する段落とはなっていないからである。
②題名を「前文」と考える理由。この題名を「動物の睡眠と暮らしはどのような関係になっているのだろう」というふうに考えることもできるからである。このように考えることができるとすれば、これは全体を支配する問題提示だと言える。

 最後に。国語の教材分析は、なんといっても共同でやるのが一番だと思います。数名の仲間たちとやることで、一人では気づかなかったことが見えてきます。教材分析に広がりと深まりが生まれるのです。このことは、授業でも生徒たちの考えや意見を深く広く受け止めていくことを可能にします。教師としてのボディが生まれるのです。
 また、分析をしていく過程で、授業構想も見えてきます。どこで話し合いをさせるか、どのような方向で授業を展開していくか、などなどです。
 ぜひ、サークルで学び合いをされ

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「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。