福岡・八女サークル5月例会の報告と6月例会のご案内
1.5月例会の報告
(1)参加者 6名
(2)日 時 5月30日(土)14:00~17:00
(3)場 所 おりなす八女 第5研修室
(4)内容(概要)
①論説文「壁に残された伝言」(井上恭介 三省堂 中2)の構造よみと論理よみ
本教材は30段落からなる論説文である。まず前文と後文を見つける。9段落に「壁の下の文字は、どのように保存され、またどういった事情で白黒逆転して現れたのだろうか。」と問題提起があるので、ここまでが前文と考えられそうである。しかし、この問題提示の答えは19段落までに述べられて解決しているので全体の問題提示とは言えない。そうすると、「そのような中で出会ったのが『伝言』だった。」と「伝言」との出会いを述べている2段落までが前文(話題提示)となる。後文は、30段落のみで、これまで述べてきたことをまとめつつ筆者の主張が述べられている。他に、後文の候補として、前文の「広島のあの日(八月六日)をたどる取材を始めるが、自信をもてないでいた中で『伝言』に出会った。」ことに対応する部分なので25段落~30段落が後文である、という考えもある。しかし、そうなると本文が本文1(伝言がどのように保存され、どうして白黒逆転して現れたか)、本文2(伝言が注目されるようになったわけ)との関係が分かりにくくなる。なので、後文は30段落のみで、25~29段落が本文3(伝言からあふれ出たあの日)と考えるのがよい。論理よみは割愛するが、特に本文2以降の書き方が随筆に近く、論理関係がとらえにくいという印象をもった。
②小説「羅生門」(芥川龍之介 桐原書店 高1)
本教材は、まずクライマックスを見つけるのが分かりやすい。クライマックスは、『では、俺が引剥をしようと恨むまいな。俺もそうしなければ、飢え死にをする体なのだ。』である。それまで飢え死にをするか盗人になるかと逡巡していた下人の心がここで決着するからである。次に事件の終わりである結末を見つける。結末は、クライマックスのすぐ後の「下人は、はぎ取った檜皮色の着物を脇に抱えて、瞬く間に急なはしごを夜の底へ駆け下りた。」である。ここで下人が「舞台」から姿を消したこと、次の文「しばらく、死んだように倒れていた老婆が、・・・」との間に時間が経過しているからである。よって、「しばらく、・・・」から後の部分が終結部となる。次に発端を見つける。「ある日の暮れ方のことである。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。」でこの小説は始まる。下人の逡巡が説明的に語られている部分は導入部であり、下人が行動を起こし始めたことを描写的に書いている「下人は、大きなくさめをして、それから、大儀そうに立ち上がった。」からが発端である。最後に山場のはじまりを見つける。二つの考えが予想される。一つは「そこで、下人は、両足に力を入れて、いきなり、はしごから上へ飛び上がった。」(A)である。下人が老婆の前に姿を現すところである。もう一つは、「下人は、太刀を鞘に収めて、その太刀の柄を左の手で押さえながら、冷然として、この話を聞いていた。」(B)である。下人に盗人になる「勇気」が生まれクライマックスへと向かうところである。この小説の事件は、下人の心の変容、下人の心の「悪への自己解放」である。山場のはじまりは(B)となる。
「悪への自己解放」は、「悪は自分にも返ってくる」という必然性を含んでいる。最後の一文「下人の行方は、誰も知らない。」はそのことを示唆しており見事というほかない。
2.6月例会のご案内
(1)日 時 6月27日(土) 14:00~17:00
(2)場 所 「おりなす八女」 第4研修室(℡0943-23-2131)
(3)内 容(予定)
①物語・説明文の読みの基本
「化けくらべ」「ドラえもんのひみつ」を使って
②小説「少年の日の思い出」(ヘルマン・ヘッセ 光村図書 中1)
③その他、持ち込み教材を使って
連絡先:福岡県八女市立黒木中学校 熊添由紀子
プロフィール
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