福岡八女サークル7月例会の報告と8月例会のお知らせ

 1.7月例会の報告
(1)参加者  5名
(2)日 時  7月29日(土)14:00~17:00
(3)場 所  おりなす八女 和室
(4)内容(概要)

 ★「初恋」島崎藤村(三省堂 中3)
 
  島崎藤村の「初恋」の教材分析を行いました。「初恋」は、三省堂や光村図書など、昔から様々な
  教科書に採用されている詩の教材ですが、文語詩ということもあり、その意味などを教師が解説す
  ることに終始してしまう、というお悩みをお持ちの先生も多いのではないかと思います。
   教師が解説するよりも子どもたちが詩を豊かに読み深められるように、視点を持たせて構造よみ
  をさせたり、言葉にこだわらせて技法よみ、主題よみをさせたりする方法について検討しました。

   詩の構造は、起承転結で捉えます。起は「書き起こし」、承は「起を承ける」、転は「大きく一転」、
  結は「全体をまとめ結ぶ」ところです。
   「初恋」の場合は、起が第一連、承が第二連、転が第三連、結が第四連です。構造よみの検討は、
  まず転がどこかというところから行いますが、第三連が転である理由としては、主題の浮上が挙げられ
  ます。第一連では出会いが描かれ、第二連で恋の芽生え、第三連で「恋の成就」という主題が浮上しま
  す。第四連は結ですが、会話文で始まっていることや、現在のことを描いているということから、第四
  連が転であるという意見も子どもたちから出されることがあります。しかし、「恋の成就」が主題であ
  ることを考えると、第四連はあくまでもその出会いから成就するまでを振り返っているところというこ
  とになります。詩の中で表現したいことが何なのかという主題から転を見つけさせるようにするとよい
  かと思われます。
   技法よみ、主題よみについてもたくさんの意見が交わされましたが、ここでは省略します。

 ★「盆土産」三浦哲郎(光村図書 中2)

  文学作品「盆土産」を使って、構造よみをしました。

  「盆土産」の発端は、「父親は、村にいる頃から、……額をまる出しにして帰ってきた。」という父親
  が家族のもとへ帰ってくるところです。発端は日常とは違うことが起こるところ、事件のきっかけにあた
  るところですが、ここは、東京に出稼ぎに出ている父親が、家族のもとに帰ってくるということが、理由
  として挙げられます。発端については、その前の、「盆には帰る。……」という速達が届くところが、事
  件のきっかけだとして生徒が挙げることもありますが、冒頭が「えびフライ、とつぶやいていた。」とあ
  ることを考えると、速達が届くところは、主人公である息子が川で魚釣りをしながら回想している部分で
  す。導入部は、父親が聞きなれない「えびフライ」という土産を持って帰ってくることを知り、そんな父
  親を出迎える準備をするところであり、また、クライマックスが父との別れであることからも、発端は父
  親が帰ってくるところをとる方が適切だろうということになりました。
   クライマックスは、「バスが来ると、父親は右手で……うっかり『えんびフライ』と言ってしまった。」
  という、父との別れの場面で、父への感情を抑えていた主人公が、父に頭を手荒くゆさぶられて混乱し、
  思わず「えびフライ」という父の愛情を象徴する言葉で父への思いが表れるところです。息子が、父を困
  らせてはいけないという思いから、甘えたい気持ちをずっとこらえていたのが初めて出てきたことが大き
  な理由として挙げられます。子どもたちからは「するとなぜだか不意にしゃくり上げそうになって……」
  というところも挙がりますが、ここは思いが溢れそうになるのをとっさにこらえているところなので、ま
  だ最高潮には達していません。「頭をわしづかみにして……いつもより手荒くて……」という素朴な愛情
  表現に父親の切なさが表れているということから、息子と父親の互いへの思いの高まりが表れていると
  いう意見も出されました。
  
   今回、参加者はやや少なかったですが、それぞれの教材について深いところまで活発な意見が出され
  たように思います。八女サークルでは、色々な教材を持ち寄って、子どもたちが作品に出会うのと同じ
  ように、まず一から教材を読んで、授業と同じ形で読み深めています。どうぞどなたでも授業に参加す
  るようにお気軽にご参加ください。たくさんの先生方のご参加をお待ちしております。

 2.8月例会のご案内
 
(1)日時   8月5日(土) 14:00~17:00
(2)場所   おりなす八女 研修棟  和室  ℡ 0943-22-5332
(3)内容   (予定)参加者の持ち込み教材を使って

                連絡先:福岡県久留米市立諏訪中学校  渡邊 絵里

プロフィール

「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。