第4回関西サークル例会報告(2006.7.25 京都)
7月25日、キャンパスプラザ京都において第4回例会を開催、9名の参加で教材研究を深めました。
報告1では、松井健氏(立命館守山高等学校)が小説「夢十夜」(夏目漱石)の分析を行いました。この教材は高校1年の教科書(4社)に収録されており、扱ったのは「第一夜」の部分です。
松井氏は、「幻想的で非現実的な内容であるが、形象の読みを積み重ねて主題を導くのに適当な教材ではないかとの動機から教材を選定した」と述べ、分析を提案しました。特に、「作品構造をどう読むか」「解釈困難な指示語が一箇所あるが、それをどう読むか」「女が『百年待っていてください』と依頼したのはなぜか」といった点をめぐっての意見交換が行われました。この作品は授業化が難しい教材ですが、豊かな形象が読みとれる箇所もある教材であることが見えてきました。今回、公立高校の社会科の先生が初めて参加され、他教科の立場から見た国語科のめざすべき「教科内容」や、国語科が道徳教育化する問題について有意義な議論ができました。
報告2では、日浦成夫氏(東大阪市立枚岡西小学校)が説明文「花を食べる」(大阪書籍・小5)の分析を提案しました。この教材は、桜や菊の花を料理に使用する例を挙げて、「花を食べる」という日本人の食文化について説明した文章です。
日浦氏は、教室で実践した構造よみの授業について紹介した後、吟味よみの分析例を提案しました。参加者からは、並列関係にあるべき事柄の次元がずれている点や、伝聞したことを根拠に断定的な結論を下している点など、小学校5年生でも読みとれるであろう問題点についての意見が様々な角度から出されました。特に、「筆者の論理展開では、生きるために昔の日本人が花を食べざるを得なかったという側面と、嗜好品として花を食するという側面が区別されていない。それらを全て『食文化』と定義するのは問題ではないか」との読みがこの文章の根幹に関わる吟味であることが見えてきました。
読み研関西サークルには回を重ねる毎に新しい方が参加され、大きな広がりができています。最後に、参加者の感想を一部紹介しておきます。
○久しぶりの学習会でとても楽しかった。教材文を「読む」ことの面白さ、一人ではなくみんなで「読む」ことの知的な刺激もあたえてもらった。次回も楽しみにしています。
○教科書教材である以上、「何かが読める」と思ったが……。結局消化不良のままですが、「手がかり」はつかめたようです。しばらく「夢十夜」にこだわります。
○いっしょに教材研究することの大切さをあらためて感じました。読み研での教材研究はとても深く鋭いものです。それは読み研方式が教材分析の方法も目的にして学んでいるからだと痛感しました。
○奈良で素浪人をしているので、日頃より不勉強!そんなんで、久しぶりに頭を使いました。パニックです。
○国語科の教材研究の在り方について知ることができました。議論はとても刺激的でしたが、教材の内容について深入りしすぎているような気もしました。今後、指導方法などについても議論を深められればと思います。
○今日は後半からの参加でしたが、それでも来てよかったです。「花を食べる」に関しては、食の「文化」という安直な結論に収束させるのではなく、その歴史的背景までを考えるべきだという発言者の考察力の深さには感服した。
今年の夏の大会は、京都が舞台です。関西にお住まいのHP読者のみなさん、是非夏の大会にお越し下さい。みなさんのご参加をお待ちしております。
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