第7回関西サークル例会報告(2007.6.16 大阪)
6月16日(土)、7名の参加で例会を開催し、教材分析の検討を行いました。
(1) 小説「やまなし」(宮沢賢治、光村小6)
提案 永田 彰(神戸市立広陵小学校)
永田さんは昨年の夏の大会が読み研初参加です。「やまなし」の実践は昨年の秋のもので、今意欲的に読み研方式に取り組まれているところです。報告は主として構造よみに関わってなされました。
提案では、発端を「お父さんのかにが出てきました。……」、クライマックスを「どうだ、やっぱりやまなしだよ。……」のところではないかと指摘。「やまなし」は難教材といわれる作品です。構造よみをめぐっては、二つの勢力をここで考えていくことは有効なのか、構造よみと次の形象よみとの関わりをどう考えていくかなどをめぐって議論が展開されました。
また、生徒の様子や反応も紹介されました。「五月」と「十二月」が対比になっていること、カワセミが飛び込んでくるところとやまなしが落ちてくるところが照応しているなどの読みが生徒たちからも出されたといいます。構造よみは、発端やクライマックスを決めることだけに目を向けるのではなく、そこでどのようなことが読みとれたかを押さえていくことが大切ではないかという指摘がありました。
(2) 俳句(光村中3))
夏河を越すうれしさよ手に草履 与謝蕪村
ちるさくら海あをければ海へちる 高屋窓秋
木の葉ふりやまずいそぐないそぐなよ 加藤楸邨
あるけばかつこういそげばかつこう 種田山頭火
提案 山本瑞絵(京都・立命館宇治中学校)
山本さんは、「表記のバリエーション」を視点に、近世・近代俳句を形象よみする分析を提案。「表記のバリエーション」とは、漢字・ひらがな・カタカナという日本語の持つ視覚的効果のことです。なぜ「夏川」でなく「夏河」なのか、なぜ「嬉しさ」でなく「うれしさ」なのか、という点にこだわることを通じて、実は意外な読みの可能性が開けてくることが浮き彫りになりました。
検討の中で、「指導書では鑑賞文が載っているが、それと俳句作品が遊離しているために、解説しても生徒はピンと来ない。しかし、今回の提案のように、一語一語にこだわり、表記の効果を読むことで、作品と鑑賞文がつながっていくことが実感できた」という意見が出され、形象よみの意義が明らかとなりました。また、「季語を読むことは、〈時〉〈場〉を読むことである」「表記の効果を読みの方法(スキル)として意識化させることによって、生徒は俳句を自力で読む力を身につけられる」ということを学ぶことができました。
以下、参加の感想を一部紹介します。
○はじめて参加させていただきましたが、大変勉強になりました。「科学」ということと「国語」ということばが最初は本当につながるのかなと思っていましたが、例会に参加して、なるほどこういうことなのかと納得しました。今、生徒が国語へのおもしろみを感じていない様子を見るにつけ、また生徒の読解力不足を感じるにつけ、私自身の授業の教材研究不足と発問のしかたのまずさも大いに問題があったと思いました。説明文や小説はどんなふうに読むのかスキルを学びたいと思いました。
○昨年、授業で実践したことを教材研究として報告させていただいた。「やまなし」は構造よみをするには難しい作品であるが、自分なりに悩みながら授業を行った。今日、たくさんの先生方からアドバイスをいただいたことはとても勉強になった。「自立した読み」を子どもたちができるようになるためには、もっともっと「読み研方式」を学ばねばならないと改めて感じた。このような場に若い先生方がたくさん参加されたらとても勉強になると思う。
○「読み研」では、生徒に、より深い読み、気付き、発見などをさせる読みの方法が学べます。文学作品の指導など、主観・独断に陥ってしまいがちですが、あるモノサシで作品の構成などを科学的に分析することは、教師の技術能力向上に深く関わると感じました。
プロフィール
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