全国学力調査と犬山市の教育

 4月24日、全国学力調査が行われました。43年ぶりです。
46年前(1961年)のそのとき、歴史が動きました。私たちは処分覚悟で全国的な「学テ反対闘争」に立ち上がりました。やがて実施結果の矛盾が噴出し、テストは4年間で中止されました。いわば、全国学力調査は、すでに証明済みの欠陥商品なのです。
 朝日新聞の社説(4月25日付)は、同じような学力調査がすでにいくつもあるのに、「このうえ、新たなテストが必要なのか」、「テストの結果がどう使われるか。それも依然として心配だ。」と危惧の念を表明しています。国宝犬山城で有名な愛知県犬山市は、今回のテストに参加しませんでした。「全国学力テストが日本の公教育の健全な発展にとって有害である」(犬山市教育委員会・編『全国学力テスト、参加しません。犬山市教育委員会の選択』・明石書店2007年)との確固たる判断です。
 犬山市教育委員会は、今日の大きな教育改革の流れは二つあり、一つは安倍晋三内閣がすすめている教育再生会議の方向であり、もう一つは犬山のすすめている教育改革である、と分析しています。
 犬山市は、少人数学級をすすめ、学校選択制や習熟度別指導を採りません。学校選択制を前提に子どもたちの集まり具合で予算を配分する「教育バウチャー制度」は、民間企業が生き残りのために顧客競争に奔走しているのと同じしくみだと批判し、市場原理は時代とともに移り変わる流行にすぎず、競争と評価で教育はよくならない、と断言しています。学校の最も重要な役割は、授業をとおしてすべての子どもの「学び」を保障することだという基本原理に立っているのです。
 心配なことは、言っていることは正論だが、実際の学力はどうなっているかです。小学4年と中学2年の算数、数学・理科では日本全国の水準を上回っています。中学校の5教科では5段階分布で1・2が少なく、3・4が多いという結果です。東京大学基礎学力開発センターは、犬山市では「少人数の学習環境のもとで、授業理解度の格差を縮めるという成果を得ることができた。」(東京大学基礎学力研究開発センターのプロジェクトチームによる犬山市の教育の実態を調査分析した結果より/『教育改革を評価する―犬山市教育委員会の挑戦』岩波ブックレットNo.685、2006年)という報告をまとめています。
 全国学力調査の本質は、テスト問題の良し悪しというより、別のところにあるようです。