まぎらわし漢字克服プリント

0.きっかけ

 生徒がしょっちゅう間違える漢字がある。
 例えば、「募集」の「募」。かなりの割合で、下の「力」の部分を「刀」にしている。テストの答案に限らず、廊下の壁に貼られているポスターで「○○実行委員、募集!」などというものがあると、5割以上は間違っているのではないか。おそらく「券」などのような、視覚的イメージが似た漢字との混同によるものと考えられる。他にも、「友達」の「達」のつくりを「幸」にしていたり、「描写」の「描」を「猫」と書いたり、「迎」のつくりを「卯」としていたり、「全然」を「全々」と書いていたり等、実は生徒が間違える漢字と間違え方のパターンは決まっているのだ。

1.あえて、集めてみる

 そのような漢字のミスを、教師の側が気づいたタイミングで指摘するのも大切だが、あえてそういった間違えやすい漢字だけを集めたプリントを作ってみたらおもしろいのではないかと考えた。「こういう間違い、よくするよなぁ」と思いつくものと、ついでに「この漢字と混同しているんだろうなぁ」と考えられるものをセットにしてリストアップしてみたら、全部で100字程度になった(必ずしもそういうセットではない単独のものも入れた)。リストには、上に挙げたもののほかに次のようなものが挙がった。(下線部がそれに当たります。平仮名で示すので、漢字に直してみてください。まぎらわしさが実感できると思います。)

 ・成せきが伸びてうれしい。/努力をつみ上げる。
 ・試合は15回までえん長します。/大和朝てい。/たん生日は9月19日だ。
 ・おぎ原さん?/いいえ、私ははぎ原ですよ。
 ・和洋折ちゅうの料理店。/体力がおとろえる。/人生の悲あいを感じる。
 ・よう稚園の桜が咲いた。/まぼろしの魚を求めて。
 ・こ独な日々を送る。/きつねにだまされる。/こを描く。/つめにゴミが入った。

2.プリントにして授業でチャレンジ!

 集めた100字を(平仮名で)パソコンの表計算ソフトに入力し、プリントにまとめたものを中学2年生の授業で配ってチャレンジさせた。「漢字のプリントなんて嫌がるかもなぁ・・・」と思いながら配ったが、生徒たちは意外にも(あ、この「意外」を「以外」と書く子もよくいます)楽しそうに取り組んでくれた。「かゆいところに手が届きそうで届かない」的な、ちょっとしたゲーム感覚で解いているような生徒が多くいた。「うー、まぎらわしー!」などと、こちらの期待どおりの反応を見せてくれる生徒もいた。
 平均すると50~60%程度の正解率だったが、答え合わせが終わってから、こちらが指示しなくても大事そうにノートに貼っている生徒もいたりして、こういう企画もまんざらではないと感じた。

3.こういう時代だからこそ

 手を使って文字を書く機会がますます少なくなっている時代である。自分で書く機会が減るから、正しく覚えようとしない。覚えなくてもメールの機能が勝手に変換してくれるからである。しかし、メールであってもいわゆる「誤変換」が多く見られるように、やはり漢字を正確に覚えさせる指導は必要だ。それに、大人になって何かの機会に大勢の人に自分が手書きで書いたものを見られ、そこに誤字があって恥ずかしい思いをするのは避けたいところである。
 重めの文学作品や説明的文章の読みが1つ終わってポンと時間ができたときなどに、こういうプリントによる授業を1本はさんでやれると、子どもたちも軽い気持ちで取り組むことができる。
 間違いが多いことを予想してリストに入れたが実際には間違えた生徒が少なかった漢字もあった。新たな「まぎらわし漢字」に気づいたら、差し替えなどもして、よりまぎらわしい漢字集としてプリントを完成させたい。そうだ、「紛らわしい」を「粉らわしい」と書く生徒も多いぞ!

プロフィール

鈴野 高志
鈴野 高志「読み」の授業研究会 運営委員/つくばサークル
筑波大学日本語・日本文化学類卒業 同大学院教育研究科修了
茗溪学園中学校高等学校教諭/立教大学兼任講師
[専門]日本語文法教育
[趣味]落語