平野先生の国語通信(その3)

東陵中学校 第三学年
国語通信 第五号 
発行*中間テストも終わり、ホッと一息ついている平野先生。


敬語使える?

 普段意識していないかもしれませんが、じきに社会に出るであろうみなさんにとって、知らなくてはならないことが、この「敬語」です。教科書は196ページ、便覧211ページ、新文法ノート80ページ、新研究124ページに掲載されています。
 
敬語の種類

 敬語には以下の三種類があります。場面に応じて使い分けしましょう。

尊敬語 相手や話題の人物を直接高める
・(相手が)おっしゃる、ご覧になる、いらっしゃる(それぞれ「言う」「見る」行く)の尊敬語)
・言われる(尊敬の助動詞「れる」「られる」)
・お話になる(お~になる、ご~になる)
・ご両親、お宅(相手方の呼び名、持ち物など)

謙譲語 自分を低めて相手を間接的に高める
・(自分が)申す、拝見する、参ります(それぞれ「言う」「見る」「行く」の謙譲語) 
・お払いします(お~します、ご~になる)
・小社(自分方の呼び名、持ち物など)
※ 自分の父親は「お父さん」ではなく、「父」と言う。相手の父親は「お父さん」でよい。

丁寧語 話全体を丁寧にする
  ・行きます、時間です (丁寧の助動詞)
・お菓子、ご飯(接頭語「お」「ご」)
→美化語とも言う

 敬語で大切なのは、相手との人間関係です。相手は自分よりも目上であり、敬うべきであること。だから相手側の行為や持ち物には尊敬の気持ちを表す言葉をつけ、自分側の行為や持ち物には、へりくだる気持ちの言葉を付けることです。
 みなさんが、特に注意すべきは、就職選考や入学試験の面接の時でしょう。面接では、面接官が目上の人ですから、自分や自分の家族などを指して言うときには、謙譲語をつかいます。
※敬語一口メモ(授業では教えませんが、面接などで知っておくと便利)

①尊敬語にも強弱がある
 「食べる」の尊敬表現を敬意の強い順に並べてみると…
 召し上がる→食べなさる→お食べになる→食べられる
 気をつけたいのは、これらの表現を混ぜないこと。
(悪い例)お食べなさる、お食べになられる

②尊敬語これだけ知っておこう
 「いる」いらっしゃる、おいでになる、みえる
 「言う」おっしゃる
 「食べる」召し上がる
 日常生活に密着した言葉は使用頻度が高いので、知っておくと良いでしょう。

③尊敬語と謙譲語との違いをはっきりとさせておきましょう。
  ア 利用する
  イ 利用なさる
  ウ 利用いたします
  エ 利用申し上げます
  オ 利用します
  カ 利用になる
 この中で、主語が相手側のものは尊敬語、主語が自分側のものは謙譲語になります。
ア・ウ・エ・オが「私は」という主語を付けることができるので自分側(謙譲語)、イ・カは「先生が」という主語を付けることができるので相手側(尊敬語)にすることができます。

④接頭語「お」「ご」の付けかた
 ア 田中さんがお話なさる。
 イ 私が田中さんにお話しする。
右のアとイではどちらが尊敬語でどちらが謙譲語でしょうか。どちらも田中さんに敬意を表していますが、アは主語が田中さんで、イは私が主語になっています。もうわかりますね。アが尊敬語、イが謙譲語です。おおまかに次のように考えることができます。
尊敬語…「お(ご)」+名詞+なさる
謙譲語…「お(ご)」+動詞
 「話」は名詞で、「話し」は動詞の活用した形(連用形)です。

東陵中学校 第三学年
国語通信 第六号 
発行*修学旅行が楽しみな平野先生。

説明的文章の読み方

 説明的文章とは、小説のような空想を描いた作品ではなく、事実を筆者の考え方(論理)でもって述べた文章です。ですから、どのような事実が書かれており、どのような順序で述べてられているかをはっきりと読みとることで、筆者の主張(要旨)をつかむことが必要です。
 なお、説明的文章には記録文、説明文、論説文などの種類があります。記録文は時間の順序で書かれていますので、接続語や時を表す言葉に目を付けること、論説文は筆者独自の主張(まだ世間には認められていない仮説)が書かれていますので、それが正しいかどうかの検証が必要になりますが、ここでは一般的な読み方のコツをお伝えします。

表層の読み
①通読(音読) 全ての漢字を読めるように
②形式段落確認 通し番号を付ける。
③難語句確認 語句の意味を調べる。

構造よみ 文章の構造を大まかにつかむ
①大段落に分ける
段落の大まかな意味と、段落と段落の関係をつかむ
※ヒント1 接続語に注目(順接・逆接・理由・転換など)
    2 問いと答えの関係に注目
    3 指示語の指し示す内容に注目
②形式段落に小見出しをつける
 体言止めか短文でキーワードをつかってまとめる。
③柱の段落とそれ以外(例・くわしい説明)に分ける。

要約よみ 柱の段落を要約することで、文章全体の要約(要旨)をつかむ。
①「柱の段落」の中の「柱の文」を見つける。
②「柱の文」をさらに主語・述語・それに最低限必要な修飾語を中心にして要約する。
③日本語として意味が通じるように文章をまとめて、要旨とする。

吟味よみ 事実のまちがいや論理の矛盾など、わかりにくいところ、おかしいことがら、ひっかかりを感じることがらはないか。文章全体を吟味して、正しく書きかえる。
①書かれた事実に問題はないか。
・他の言葉の方が適切だということはないか。
(例)「新しい」の反対は「古い」だが、「古い」の反対は「総合的」?
・言葉の表す意味の範囲があいまいで誤解を生まないか。(例)「天文学」と「天体現象」は同じか。
・文章の途中での言葉のすりかえはないか。
(例)「知識」・「知恵」・「知」の違いは何か
・自分の生活実感に照らし合わせて納得できるか。
(例)「年を隔てて…かに星雲は高速度で膨張」とあるが年を隔てるくらいの期間を高速度というのは実感にあわないのではないか。
②文と文、段落と段落の関係に論理的な飛躍や矛盾はないか。
・主語と述語は対応しているか。
・主語は隠されていないか。
(例)~と考えられています、という受け身の文章の主語は誰か。主語を隠すことで責任の所在を隠していないか。
・大げさすぎる比喩や表現がつかわれていないか。
(例)「文学作品に生かした例は数多くあります。」とあるが本当に数多くあるのか。例はあげられるか。
・断定的な表現は確かにそう言えるのか。
(例)「博物学から発展した科学は…専門分野の集まりになってしまったのです。」とあるが、博物学でなく科学が専門分野であってもよいのでは?
・根拠は納得いくか。
・主張(結論)に向けて根拠もなく、強引に論理を展開していないか。
(例)「ハリー彗星のものと断言できるのです」とあるが周期が同じというだけで、たまたま同年に表れた彗星の可能性を捨てていないか。
・その事実(具体例)が筆者の説明と結びついているか。
(例)かに星雲は一〇五四年出現。藤原定家は一一八〇年から記録を始めたなら、「過去の」誰の「文献」から取ったのか。一〇〇六年の記録も定家のものではないはず。
・別の根拠は成立しないか。隠されていないか。
・その論理を成立させる条件はすべてにあてはまっているのか。
(例)「以来、天文学者は古典を調べて天文現象の記録を調べるようになりました。」とあるが、すべての天文学者について言えることか。
③筆者の主張の妥当性はあるのか。
・筆者の主張は誰の利益につながる立場で書かれているのか。