第5回関西サークル例会報告(2006.11.18 大阪)
11月18日に5回目の例会をもちました。参加は8名でしたが、うち4名の方が夏の大会初参加の方でした。
内容は、日浦成夫さんの「カレーライス」の構造よみと、加藤の「モアイは語る」の教材研究の二つです。
まずは、加藤の報告から。「モアイは語る」は光村図書中学二年生の説明的文章教材です。構造よみと、吟味よみに焦点を当てて、大阪樟蔭女子大学での授業の様子も織り交ぜながらの報告でした。構造よみでは、2段落に問題提示があることはすぐわかるものの、具体的に問題提示をどの文とするかということでは二通りの考え方があり、そこのことが後文の決定にも関わるということが問題とされました。最初は、きれいに構造よみできると考えていたのが、やっていくうちに結構意見が分かれてくることも、議論の中でわかってきて面白かったです。
吟味よみでは、後文にあたる現代の問題と関わらせて述べているところが議論の焦点となりました。イースター島について述べているところは、スリリングな論理運びで興味深く読めるのですが、現代の地球の問題について述べているところは、かなり論理がずさんではないかといった意見が出されました。
後半は、日浦さんの「カレーライス」(光村・小学校6年)の構造よみについて。主としてクライマックスについて参加者の中でも意見が分かれ、おもしろい議論が展開されました。日浦さんは、
「そうかあ、ひろしも『中辛』なのかあ、そうかそうか」……うれしくなってきた。
をクライマックスとして出されました。ここで「父親は子どもの成長に気づき、ぼくはやっとわかってくれたかという父親とぼく二人の理解が成立した」との理由です。それに対し、「カレーライス」を授業でやったことがあるという先生からは、もっと前の方をクライマックスとする意見が出されました。その他、昨年の夏の大会での柳田さんがクライマックスとしていた箇所、あるいは作品の最後のあたりがクライマックスではないかという意見も出されました。議論は錯綜しましたが、クライマックスの話しあいを通して、「カレーライス」という作品が、ひろしの成長の物語ではあるものの、それはまだ成長の途中段階にあることを示している物語であることが明らかになってきました。
小中高の教師が集まっての議論は、お互いの状況や、校種によっての状況の違いも交流でき、有意義なものでした。(文責 加藤郁夫)
以下、参加者の感想を載せます。
◆ 私は中学校の教師です。最近小学校の国語の授業をみる機会が三度ありました。その時思ったことを今日は「カレーライス」の読みについて話し合う中で、たくさん発言することができました。小学校の先生方も来ておられたので、私の思ったことについて答えていただくことができて、大変面白かったです。小中の教師が国語学力についてしっかり話し合うことはとても重要で有意義だと考えます。
◆ これまで文学教材では、人間の成長ということが強く頭にあったが、今日の「カレーライス」の教材分析などにより、教材の内容により違うことがわかった。これまでは1時間ごとの授業をこなすのに、表現のことを主に授業を流そうとしても、途中からのすすめ方がわからなかったが、今日の会で一つのヒントが得られたし、前の部分の形象をしっかりおさえたり、同じまとまりの中での前の形象の分析をもっとしなくてはならないことがわかった。
◆ 今日はたくさんのことを教えていただいてありがとうございました。国語の一つの教材をどう見ていくのかということの勉強ができる会が(自分の考えにあった)なかったので、読み研で勉強する機会が得られてうれしいです。
◆ 読み方を教えることは大切だと思います。この基本がないことが教室に混乱をもたらし、妙な読みの自由がはびこります。
◆ 「カレーライス」は四月に授業をしていたので、「構造よみ」のお話は非常にわかりやすくよかった。自分の読みの修正にもなった。特に「クライマックス」は、全く違うところであったので、今日来て学習してよかったと思う。このように「国語の読み」を校種も異なる人びとで学習しあうことのよさも発見できた。
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