日本語のひびきにふれる 「短歌の世界」(小4)

読み研通信103号(2011.7)

1 はじめに

 新指導要領により、伝統的な日本文化を学習することが取り入れられた。古典が各学年の教科書に取り入れられることになり、さて、どうやって教えていくのか、どうやって活動を作っていくのかという事態に直面することなった。
 教育出版の4年の教科書には、短歌といっても、万葉集・古今和歌集などの古典から与謝野晶子・石川啄木まで、時代を越えた6つの短歌が時代順に配列されている。
 古典として学習することと、短歌として学習すること精査し、現代語訳を参考にしながら詩歌のひとつとして、書かれていることを味わうこと、暗唱をすることを学習の柱とした。

2「短歌リレー」

 東の野にかぎろいの立つ見えて かえり見すれば月かたぶきぬ
 
 単純に「暗唱をしましょう」と子どもたちに投げかけてみたものの、「覚えにくい」「難しい」という言葉がいくつも返ってきた。内容のよくわからない古典の短歌をそう簡単に覚えられるはずもない。
 そこで、無理は承知でゲーム化することにした。「短歌リレー」である。クラスの座席8列を4チームに分け、伝言ゲームのように教科書を見ないで言えたら次の人ヘバトンパスする。前から後ろへと進み、隣に移って前まで来たら、アンカーが先生に暗唱を聞かせる。間違っていたら、席に戻って覚え直す。そんなルールの単純なゲームである。
 全体の意味がわからないが、何となくわかる言葉もある短歌を、子どもたちは、まさにぴょんぴょん跳ねながら覚えていった。跳ねることで子どもたちの唱える短歌に「五・七・五・七・七」のリズムが自然に生まれていった。ゲームにしたことで、自分のチームの覚えられない子に一生懸命教える姿も見られた。

3 いよいよ読み取り

 まず、最初はわからない言葉を出し合うことから始めた。「東」「かぎろい」「かえり見すれば」「かたぶきぬ」がわからない言葉としてでてきた。ほぼ全部といってもいい。教科書の現代語訳を読みながら、言葉の意味を考えさせた。現代語訳によって、大まかな意味はつかめた。
 そこで「いつ、どこで、だれが、何を歌にしたのか」を質問してみた。
 「夜明け前、野原で、人麻呂がかぎろいと月がしずむのを見たこと」という答えにまとまった。
 しかし、理科で月についての学習をしていない子どもたちにどっては、月が満月であることがわからない。そこは説明をしてやらねばならない。太陽が昇ろうとしているときに、満月がしずんでいく歌なのだとわかって、空に太陽と月が見えそうな瞬間の歌だということがわかった。

4 起承転結の「転」はどこ?

 読み研の加藤郁夫氏の「古典の授業」によると短歌は起承転結の「転」を探し、その前後の変化を読み取ることで短歌を深く読み味わえるとあった。草野心平の「春のうた」で、起承転結の「転」を探す学習は経験していたので、短歌が詩の仲間であることを知らせることで、「転」を探す学習を進めることにした。
 「かえり見すれば」からという意見と「月かたぶきぬ」からだという意見に真っ二つに分かれた。そこで、転」ではどんな変化があるのかをグループごとに話し合うことにした。意見に出された変化は次のようなことである。

 ①東から西になった。
 ②太陽から月に変わった。
 ③昇っていくのと、しずんでいくのと向きが変わった。
 ④夜から朝ヘ
 ⑤振り返ったので人麻呂の向き
 ⑥赤い色から白い色ヘ
 ⑦明るい感じから、暗い感じ

 どちらの意見も、変化を読み解くために出た意見であるが、人麻呂の向きや、振り返る行為が暗い感じを表しているということになり、「かえり見すれば」からを「転」とすることとした。
 後日の授業で、この歌は柿本人麻呂が草壁皇子の死の後、その息子の軽皇子が次期天皇になることを歌ったとされていることを知らせた。月がかたぶくのは、草壁皇子の死、かぎろいは軽皇子のことを表していることを、豆知識として知らせた。「転」からの暗い感じ、東から昇っていく太陽の力強い感じなどについて、「景色だけじゃないんだ」と子どもたちは納得していた。

5 グループで読む

 藤原敏行の短歌を読んだ後、残りの4首については、自分たちで「転」を探して発表することとした。グループごとに1首選んで、自分たちで分析させてみた。

 与謝野晶子
 金色の小さき鳥のかたちして いちょうちるなり夕日のおかに

 子どもたちは、いちようの葉を見て、「本当だ、鳥の形に見える」と大発見をした気分になった。「どこが頭?」「細いところが頭だよ」「あ、これが羽根ね」とノートにかいたいちょうの葉を指して説明する。「いちょうが散るのはいつ?」と問うと、「秋」と答える。机間指導で他を回った後、戻ってみると、「『転』は『いちよう散るなり』から。その前は、ほんとに見たことでないから」と話し合っていた。「本当でないことを言っているのを何て言うか知ってる?」「……。比喩?」「その通り!」「比喩と見たことで変化している!」「鳥に見えたのはどんな風にいちょうが散ったのかな?」「バサバサって、いっぱい散って、風の音や落ち葉が落ちる音が聞こえたんだと思う」
 このようなやりとりをして、グループごとに短歌の歌っている内容について考えたことを発表した。
 グループごとに、短歌について発表した後、短歌について感想を出し合った。
 「短歌は短い歌だけど、 一つの言葉にいろいろなことが表されている」「昔の言葉も考えるとわかることがわかった」「自分たちでも作ってみたい」
(以下略)