教材研究 「体を守る仕組み」(光村・小四下)

読み研通信70号(2003.1)

甘利祐子(東大阪市立加納小学校)

1 はじめに

 もし、自分が病気にかからなければ、原稿を書くというだいそれたことは、しなかっただろうと思います。手術後、夏の大会に参加し、原稿依頼を受けてしまったのは、本人の気の迷いというほかありません。つたない教材研究であることを最初おことわりしておきます。

2 教材文について

◎出典 教科書のための書き下ろし
◎筆者 中村桂子
 一九三六年 東京都生まれ
 生物学者
 主な著書「生命科学」
     「子どものなぜに答える本」
◎ジャンル 説明的文章 
      教科書は説明文と明記
◎語句調べ(取り上げる語句)
微生物・セ氏・栄養分・老化・せん毛
原因・皮ふ・毒・白血球
仕組み(題になっている)
 ①組み立て。こうぞう
 ②計画。やり方

3 構造よみ

 文章を大まかにつかむため、前文・本文・後文の三つに分ける。
「体を守る仕組み」では、内容から本文を二つに分ける。
 小見出しをつける。

 前文 1~4段落
   「微生物から体を守る仕組み」
 本文 5~段落
  I 5~7段落「侵入を防ぐ仕組み」
  II  8~段落「白血球の戦い」
 後文 段落
    「働き続ける体の仕組み」

 

 病休の先生のクラスでいきなり構造よみをしたところ、前文は4段落までということにほとんどが賛成した。
 また、後文は・段落と答える者もいたが、「自分を守る仕組みが働き続けています。」という段落がまとめになっているという考えを述べた者の方へまとまった。
 しかし、本文を二つに分ける時は、意見が分れた。つまり、8段落をどちらに入れたらよいのか、むずかしかったからである。

7 これらとともに大事なのは、のどのおくに生えているせん毛です。せん毛は、鼻や口から入ってきた微生物を外へ外へとおし出す役目をしているからです。
8 このほかにも、わたしたちの体には、自分を守るための、たくさんの仕組みがあります。しかし、それにもかかわらず、微生物が、体の中に入りこんでくることがあります。

 

 そして、白血球による体の中の戦いにうつっていく。この8段落をどうとらえるのか。一文目は、7段落を受け、しかしの二文目で、体の中での戦いへとつなげていっている。どちらにいれるか迷うところだが、やはり本文?の方へ入れるべきだと考える。(ちなみにクラスでの学習は、構造よみだけ、グループ学習を行った。)

4 要約よみ

 柱の段落を決め、さらに柱の文を決め要約していく。
 何度も読み研に参加しているにもかかわらず、柱の段落をどれにするか悩んでいます。

〈前文〉問題提示
 (1→2+3)→4  4段落②文が柱

要約(わたしたちの体には、自分を守る体の仕組みがある)

 4段落を柱の段落と考えるが、先ほどのクラスでは、3段落の方が多かった。
 それは、柱の段落とは何か理解させていない、つまり説明が不十分であることから来る結果とも考えられる。また、私も絶対4段落といいきれない曖昧さもあると思う。(とりあえず4段落とした。)

3わたしたちの体は、だいたいセ氏三十六度から三十七度くらいの温度にたもたれています。また、体の中には、水分や栄養分があります。ですから、微生物にとっては、とても住みごこちがよく、ふえやすい所です。病気の原因になる微生物がふえたら大変ですね。
4でも、安心してください。わたしたちの体には、自分で自分を守るための仕組みがあるのです。

 

「柱の段落」とは「つつみこむ段落」といっても、「……。」ピンと来ない様子だったので、あせった私は「一番大事な段落」「この段落がないと困る」とかやたらややこしくなるような言葉を連発。子どもは、内容で3段落と考えたのではないか、大事な説明がされていると。もちろん題にかかわる言葉があるのにふれて、4段落と主張する意見も少数あったと思う。
 4段落に一応した後、柱の文は、すんなり②文となった。

〈本文I〉 侵入を防ぐ体の仕組み
5 ①←(②+③)皮ふ
6 ①+② なみだ
7 ①←② のどのおくに生えているせん毛


〈本文II〉
8→9←(+)
 9段落①文が柱

要約(体の中にも微生物と戦う仕組みがある)

〈後文〉
段落①文が柱

要約(わたしたちの体では、自分を守る体の仕組みが働き続けている)

5 吟味よみ

 文の中でもっと調べてみたい点や疑問に思った点などを取り上げていく。
○体を守る仕組みにはどんなものが他にあるだろうか?調べ学習をしていくと総合学習につながるだろう。子ども達に課すと次のような調べ学習をしてきた。
 ・髪の毛(インターネット)
 ・胃の仕組みと働き(家庭の医学)
 ・汗の働き(力の五000題理科)
 ・赤血球の働き(ふしぎがわかる図鑑)
 ・心ぞう(ミニ図鑑)
 ・耳の働き(なぜなに事典)
○書かれている事は事実なのか、説明不足で分かりにくい所はないか、疑問に思った点を取り上げる。
◆3段落 微生物は「セ氏三十六度から三十七度」で住みやすいのか?
◆段落「大きな白血球は、角のようなものを出して、微生物をつかまえます。」とあるが、その後、どうするのかが書かれていない。
◆段落「高い熱」を出す仕組みが述べられていない。
◆段落「体にごくろうさまと言ってあげたい」はとってつけた感じがする。

プロフィール

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