第19回夏の大会報告(2005.8.22-23 東京)
子どもが自力で読むためのスキルをめぐり熱く討論!
去る8月22、23日、東京・吉祥寺の成蹊大学にて第19回夏の大会が開催されました。
今年度の大会テーマは「子どもが自力で読むための国語スキルを解明する──国語科・教科内容の新提案と授業づくりの追究──」というものでした。今大会には、215名もの方々のご参加があり、東京での大会としては過去の大会の中でも記録的な人数となりました。
基調講演では阿部昇氏(読み研事務局長)が、読み研のこれまでの研究成果・到達点をふまえた上で、物語・小説の「構造」「構成」に関わる提案と、文学作品における「吟味」についての提案を行いました。初めて参加された方々をはじめ、これまでに何度か大会に参加された方々からも「新鮮かつ斬新だった」という感想をいただきました。
そのあと行われた講座・模擬授業では、特に初参加者の方々が多かったことから、「入門講座」が賑わいを見せました。初めてであるにも関わらず、果敢に生徒役を買ってでてくださった方が多く、グループまたは全体の中で積極的な発言が相次ぎ、実に「熱い」講座が展開されました。他にも、「国語スキル」の解明とそのための授業展開を追究した講座・模擬授業(文学作品、説明的文章、メディア・リテラシー)で深く実りある学習ができました。
さらに、今大会では初日のオプション企画も含めて、講師を招いての3つの講演がありました。
音声言語教育がご専門で元・群馬大学の高橋俊三先生には、初日に「朗読」、2日目には「群読」の講演をしていただきました。聴き手である我々が参加できるワークショップの要素を取り入れた講演で、先生お得意の「洒落」も頻繁に飛び出し、時間の経つのがとても早く感じられました。
また、教科書研究、「読むこと」についての研究をご専門とされる横浜国立大学教授の高木まさき先生には、言語技術教育、読むことの学習などについて、歴史的な背景も含めた示唆に富んだお話をいただきました。
2日目後半は、読み研の運営委員である千葉・松戸の柳田良雄氏による全体模擬授業が行われました。教材は重松清の「カレーライス」(小6・光村)です。時折、柳田氏らしいセンスある「笑い」も交え、しかし鋭い切れ味とメリハリのある授業が展開されました。まさに思春期に入りかけた主人公の少年と父親との、モヤモヤとした微妙な“すれ違い”を描いた場面、そのモヤモヤが「線引き」と「形象よみ」によって明らかとなりました。
読み研大会では、模擬授業での生徒役の方をはじめ、その後の検討会やその他様々な場面でたくさんの人たちが発言します。その「熱さ」と、発言の自由を保障しあう研究会としての健全な空気を今大会でもひしひしと感じました。
感想「夏の大会に参加して」
国語の授業を行いながらいつも考えるのが、「たくさん発言して、楽しく学習できたのに、どうしてテストでは一人で問題を解くことができないのだろう。」ということだ。
教科書の指導書には、「それぞれの感じ方の違いを大切に」「個に応じた読みで作品のよさを味わう」といったことが書かれている。しかし、文意を読み取れず、訊かれていることに答えられない子に対して、「好きに読んでいいんだよ。」という無責任な指導もない。何とか一人で文章を読み解く技術を身につけさせてあげることはできないだろうか。そんな思いから、『読み研・夏の大会』への参加に至った。
まず、感銘を受けたのが、『線引き』のスキルである。「文章のどこに目をつければ大事なところが見えてくるのか。そこを意識させる発問によって、子どもたちが、自分で線を引き、自力で文章を読み取っていけるようになるのだという。教師の側から、「大切なところだから線を引きなさい。」というのではなく、線を引くこと自体が、「読む」スキルの学習であり、そこから子どもたちの「読み」の力が育っていくと聞き、目から鱗が落ちる思いだった。
また、説明的文章の模擬授業では、『千年の釘にいどむ』の教材から、「吟味よみ」を体験した。教科書の記述から、感じたことを根拠に基づいて評価し、批判する。そのことでより深く文章を探り、著者に迫り、そして思いがけない事実の追究をすることができた。模擬授業では丁寧な教材研究が、子どもたちの知的興奮と、より豊かな読みを生み出すことも学んだ。
今回の大会参加を機に、読み研の実践や、指導方法に倣って、自分でも授業を組み立ててみたいと強く感じた。
関係者の皆様、お疲れ様でした。どうもありがとうございました。(東京都・小学校)
■「日本教育新聞」に取りあげられました。↓
プロフィール
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筑波大学日本語・日本文化学類卒業 同大学院教育研究科修了
茗溪学園中学校高等学校教諭/立教大学兼任講師
[専門]日本語文法教育
[趣味]落語
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