第3回関西サークル例会報告(2006.5.20 京都)
2006年5月20日、京都市・本能寺会館において第3回例会を開催し、9名の参加で教材研究を深めました。
報告1では、「動物の体」(東京書籍・小学5年)を使った説明的文章の読み方指導について加藤郁夫氏(大阪樟蔭女子大学)が提案を行いました。加藤氏は、構造よみ・論理よみ・吟味よみの指導過程に沿って教材分析を提案しました。加藤氏から、「従来の読み研方式では論理を読む際、〈柱〉の概念を説明しないと先に行けない問題があり、そこに実践上の困難さがあった。あるいは、〈柱〉さえわかればそれでよしという傾向があり、内容が読めなくなってしまう問題もあった。しかし、〈柱〉という用語を使わなくとも、『まとめてのべているのはどこ?』という発問でも授業化が可能ではないかと考えている」との問題提起があり、新たな授業化の方法をめぐり意見交換を行いました。
報告2では、小説「とんかつ」(三浦哲郎著、東京書籍・高校1年)の教材分析を藤田隆介氏(大阪商大堺高校)が行いました。構造よみ・導入部の形象よみの提案でしたが、構造よみをめぐっては意見が二分するなど、特殊な構造を持つ作品であることが見えてきました。「母子の別れ」と「子どもの成長」と、どちらに重点を置くかによって山場の部・クライマックスが揺れてしまうのです。しかし、対立したまま討論を進めてゆく中で徐々に作品の形象が明らかとなり、それに関連する「とんかつ」の持つ象徴性が読めてきたときは、「一読したときはつまらない作品だと思ったが、形象性が豊かで見直した」との発言も飛び出しました。今回の検討を土台に、藤田氏は、8月2~3日に東京で開催される「全国私立中学高等学校国語科研修会」で小説の読み方指導について発表することになっています。
今回、HPをご覧になって香川県から小学校の方が初参加されました。次回は7月の予定です。初めての方も遠慮なくご参加下さい。
以下、参加者の感想を一部紹介します。
○国語教育として何を子どもたちと学んでいくか、指導者の教材に対する取り組みの大切さに気づかされました。
○「とんかつ」の読みの議論が楽しかった。クライマックスがどこかについて、私は少数派だったので、特に熱が入った。少数派の生徒の意見を大切にしようと改めて思った。
○久しぶりの参加でしたが、「読み研」の奥行きの深さを改めて感じました。
○互いの「読み」を交換しあって深めていく楽しさを改めて再確認しました。授業でも生徒たちに同じ楽しさを味わわせたいと思います。読みの指標(ものさし)に当てはめて読むことで、型にはまっていないことも発見できることを実感しました。
○「動物の体」「とんかつ」ともに楽しく勉強させていただきました。以前、「ゾウの時間ネズミの時間」を扱ったことがあります。科学的な随筆や評論は豊かな切り込み口があると感じたことが記憶に残っています。段落のあつかい方、筆者のことばの使い方など、いろいろと気づかされました。「とんかつ」は一度授業で取り上げたいと思います。二時間の議論の中で読みがかなり深まったように思いました。
○文章を散漫に通読するのではなく、構造を把握しつつ全体を押さえる読み方は、非常に有効に感じた(教師の解釈力・力量が問われると痛感した)。小説の形象よみの深さには、相変わらず圧倒された。自分も少しでも身につけて行きたい。
○久しぶりの読み研。学校から逃げるように飛び出してきたけど、やっぱり正解でした。夏の報告、見えてきました。
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