第12回関西サークル例会報告(2008.10.4 大阪)
10月4日(土)、大阪市で第12回例会を開催し、11名の参加で教材の徹底分析を行いました。
(1)「大造じいさんとがん」(椋鳩十、小5)の教材研究
報告:永橋 和行(立命館小学校)
構造よみ、特にクライマックスにかかわる教材分析と実際の授業記録について検討しました。
構造よみを実践する際、ともするとクライマックスの場所を決定することが目的化してしまう恐れがあります。しかし、大切なのはクライマックス討論の過程で作品固有の構造的特徴や文学的な仕掛けが読めてくることです。この作品で言えば、「が、何と思ったか、また、じゅうを下ろしてしまいました」か、「大造じいさんは、強く心を打たれて、ただの鳥に対しているような気がしませんでした」かのどちらがクライマックスなのかの討論を通じて、この作品の事件の軸が「大造の残雪に対する見方の変化」にあることが浮き彫りになります。そして、「大造の残雪に対する見方の変化」が、「作品のどの部分の形象を重点的に読むべきか」という「線引き」の第一の基準となるわけです。今後、「事件の発展」を中心としつつも、線引きの基準をどう整理すべきかが課題となりました。
なお、今回の実践は『国語授業の改革8 PISA型「読解力」を超える国語授業の新展開』(学文社、2008年)にも掲載されていますので、ご参照下さい。
(2)「食感のオノマトペ」(早川文代、中1)の教材研究
報告:児玉 健太郎(豊中第八中学校)
児玉氏は、文章構成・論理・吟味について分析を提示されました。この教材は、構成・論理が比較的明快であり、吟味を中心に検討を行いました。
「そもそもなぜ吟味が必要なのか」との根本問題から、「この教材ではどの部分が吟味の中心になるか」という教材分析にかかわる問題、「吟味における主要なものと瑣末なものをどう選り分けるか」「実際の授業では、吟味の場所を指定するべきか、読みのモノサシを先に与えるべきか、自由に取り組ませるべきか」といった実践的問題まで議論が展開しました。
PISA(OECDによる国際的な学習到達度調査)の結果によると、日本は文章や作品の批判的読解を問われると無答率が平均の約2倍前後に上ります。読み研が従来から提唱してきた「吟味よみ」の先進性が浮き彫りになっています。今後、小中高の各段階で授業実践の典型例を作ることが課題となります。
参加者の感想を一部紹介いたします。
◆吟味よみについて、まだ「イチャンモン」の感がぬぐえずにいたのですが、本日の論議の中で意義と方向性が見えてきて、今後の自分の授業にも取り入れてみようかと思いました。また、構造よみから形象よみへのつなぎ方についても明確なイメージがつかめ、今日のお二人の発表はまさに「読み」の力が体系的に理解できた、有意義なものでした。
◆今日で二回目の参加でしたが、なかなかついていけず、発言を何とか理解していくにとどまってしまいました。非常に勉強になりました。みなさんが次々と疑問点を出されるのを聞くにつけ、日頃の国語に対する自分の甘さを実感したように思います。次回以降、もっと積極的に参加できるように日々研究を重ねます。
◆今日は初めての参加で、よく分かっていないまま思っていることをたくさんお話しさせていただき、失礼しました。疑問に思っていることがずいぶん明快になりました。 まだまだ自分の教材分析が甘いこと、そしてわずかの分析したことを実際に子どもたちにどう返していくのかということについては、まだまだ考えを練っていかねばならないと感じています。吟味よみについては、加藤先生のお答えで私の中ですっきりいたしました。
◆今回も貴重な実践報告をありがとうございました。「大造じいさんとがん」では、クライマックスに対する議論がとてもおもしろかったです。クライマックスを見つけた後の形象よみでは、言葉を読み広げていくという話がなんとなく分かりました。でも、「どういうこと?」という疑問も出てきました。「食感のオノマトペ」では吟味よみについて議論がありました。「重箱の隅をつつく論議になる」という批判に対して、「ものの見方考え方を広げていく手だて」という話がとても印象的で納得できました。
◆本日は急な申し出にもかかわらず参加させていただき、大変ありがとうございました。ここまで徹底的に教材研究し、授業に臨まれているとは……!!正直、うちの教材が今日出てこなくてホッとしております……。(教科書会社の方)
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