第14回関西サークル例会報告(2009.7.4 京都)

児玉健太郎(立命館小学校)

 日 時 2009 年7月4日(土)2時~5時
 場 所 立命館小学校
 参加者13名

〔発表と議論の内容〕

(1)小学校 「三年とうげ」(光村図書・小学3年)  村田 純子(立命館小学校)

 村田先生はご自身がなさった研究授業での実践をもとに発表されました。登場人物の「気持ち」を問う授業、イメージと感覚に頼った読みの授業から脱却するということを意識された発表でした。
 教材分析では「構造よみ」を中心に議論が行われました。村田先生の分析ではクライマックスは17段落の「おじいさんは、すっかりうれしくなりました。」の部分です。参加者からは13段落ですでに変化しているのではないかという意見、18段落で変化が確定しているという意見などが出されました。実際に村田先生の研究授業を参観した時の様子を踏まえ、子どもたちが描写性の高さに気づいて18段落をクライマックスと発表していたことも指摘されました。クライマックスにおいておじいさんの中で「三年とうげ」の見方、意味・価値付けの仕方が変化しているという点では参加者の意見が一致したようです。
 さらに、教材分析を踏まえて、小学3年生という発達段階をどうとらえ、授業化していくのかという議論もありました。クライマックスをどこまで限定するべきか、発問・助言のあり方はどうすべきか、といった点について話し合いました。

(2)中学校「月夜の浜辺」(中原中也)の教材研究  岩崎 成寿(立命館宇治中学高校)

 岩崎先生は、読み研方式の詩の読み取り方を、中学生に実践された方法でわかりやすく説明されるところから発表を始められました。その後、中学生への実践を元に「月夜の浜辺」についての発表です。「月夜の浜辺」の作者、詩人の中原中也が、昔この立命館小学校の敷地にあった立命館中学高校で学んだという点も、興味をそそられる材料でした。
 まず、参加者全員に実際に「月夜の浜辺」の構造を読ませ、二人一組で相談させるというミニ模擬授業のような楽しい雰囲気で発表が始まりました。読み研方式の「起承転結」の構造は、参加者の中でほぼ一致します。さらに、「承」から「転」における変化は何かを巡っての意見発表です。
 その後、岩崎先生のレジメが配布され、技法よみ・主題よみはレジメに沿って発表されました。議論は主に次の2点を巡って行われました。

 1「ボタン」の象徴性。「ボタン」とは何なのか。

 2 否定語の連続使用という技法から何を読み取るべきか。

 そのほかにも詩の中の言葉・表現にこだわって様々な分析・読みの交流が行われ、この詩の理解が深まりました。

〔参加者の感想から〕

○今回始めて参加させていただいたのですが、先生方がざっくばらんに意見をぶつけておられて非常に面白い経験をさせていただきました。中原中也の詩では、「ボタン」という語に対してさまざまな意見が出ていましたが、私はむしろ、この詩が誰に対して、誰に読まれることを想定して作られたのかを考えました。幼い人に向けてかかれていたとすれば、「ボタン」というのが珍しい、ちょっとした宝物のような愛すべき対象としてもよいかなと。あまりに「辛く重い詩である」という読みが多かったので、明るく読んでみても面白かったかなと思いました。今日はありがとうございました。

○先日教育実習を高校の日本史・世界史で行ったばかりで、どっぷり社会につかった後での国語の“読み”について考えさせて頂く機会だったのですが、あまりカルチャーショックを受けずにすんなりと先生方のお話を聞くことができました。それは、やはり国語の読みも一つ一つ分析しながら読んでいくことが必要だからなのだと思います。その読みを前提に、どう文章を解釈するのかを考えていかなければならないのだということを今日参加させて頂いて感じました。なんとなく、自分の考えで、自分勝手に作品を読んでしまいがちなので、上記のことを学べたので良かったです。ありがとうございました。

○国語を教えることの難しさを改めて感じました。それと同時に、教師側の教材分析の大切さを実感しました。授業を受ける生徒を見据えて、教材をしっかりとらえていける教師になりたいと思いました。今日参加したことで、先生方の意見をたくさん聞いて作品の見方が変わったり、とても勉強になりました。

○久しぶりの例会でとても楽しみにしていました。現在、支援学校勤務なので、国語の学習の難しさを改めて感じました。特に「月夜の浜辺」は、最初に読んだときには全く意味がわかりませんでしたが、皆さんの議論を聞いて、「なるほど、そんなふうに読むのか。」と分かっていきました。教室には読み取りの苦手な子もたくさんいると思います。活発に議論するような授業展開こそ、理解を深めていくのだなと思いました。

○一つの作品に対して様々な意見が出ることが研究会の大きな意義だと考えています。その点で今日の研究会は実にすばらしいものでした。また、今回聴かせて頂いた話の多くが授業で使えるものでしたので、さっそく月曜日に使わせて頂きたいと思います。ありがとうございました。

○教材のひとつひとつの言葉を読み取る大切さを実感できました。解釈の仕方やまとめ方については様々な意見があり、やはり答えは一つじゃないんだなと安心すると同時に、いろんな考え方を自分がもっと吸収して研究していかないといけないと思いました。

○久しぶりの例会で、大変楽しかったです。後半からの途中参加でしたが、とても良い刺激になりました。現在、高校三年生を受け持ち、受験指導が中心となっていますが、“教材分析”の感覚を失わない為にも、これからも積極的に参加していきたいと思います。

○今日はお世話になりました。国語の先生方の前で自分の国語の授業について話す(!!)という大それたことも、自分の実践をもう一度考え直す良い機会となりました。教材研究の力量と授業の力量を上げるためには、もっと人に授業を見てもらったり、今回のように自分の実践を公表したりしていかねばと思います。

プロフィール

「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。