短歌・俳句の授業を「対話の生まれる楽しい学び」に

 短歌や俳句の授業を行うとき、私はもうずいぶん前から「読み研」八女サークルの先輩方に教えていただいた、次の七つの読むべき項目を挙げたプリントを用いています。

(1)大意  (だいたいの意味を捉える。)
(2)時   (作品から伺われる時とその根拠、俳句の場合には季語)
(3)場   (話者はどこにいるのか、その根拠)
(4)人物  (話者は何をしているのか)
(5)着目したい語句(特に重要だと思われる語句についての形象よみ)
(6)表現技法(使われている技法とその効果、句切れや切れ字を含む)
(7)主題  (この作品にこめられた作者の思い、感動を読み取る)

 (1)~(4)で、その作品に描かれるおおまかな情景がイメージできるようにし、(5)~(7)で形象よみ、主題よみへとつなげていきます。特に、(5)着目したい語句のところでは、切れ字などの感動の中心と言われるところだけでなく、「引っかかりを感じる表現」「あえてその言葉を選んでいると感じられる表現」はどこかと問うと、読むべき箇所が見えてきます。
 
 この方法自体はとてもよいのですが、教科書に載っているすべての作品を繰り返し同じ形でやっていくと、だんだん子どもたちが飽きて集中力が切れてくる感じがあり気になっていました。そこで、最初の三句(三首)ほどを私が授業し、あとの作品を班ごとに振り分け、子どもたち自身にプチ授業のような形で発表をさせることにしました。
 
 まずは班ごとに項目だけのプリントを配布し、それぞれの班で担当の作品を検討させます。検討している各班を教師がまわって、それぞれの作品の読むポイントを教えたり、読みが不十分なところについて助言したりします。検討したことをすべて記入した清書を配布用プリントの原稿として提出させますが、その際、検討していて一番面白いと思ったところ、発表するときに皆に考えてもらいたいところを一か所選ばせ、☆印をつけさせておきます。その部分を教師が修正テープで消して印刷し配布します。
 
 発表(プチ授業)をするとき、発表者の生徒たちは、全体を説明しつつ、伏せたところを「〇〇という言葉からどんなことが読めると思いますか?」と皆に問いかけ、考えさせ発表させる時間を取ります。問いかけ方についても「『君には一日』と『我には一生』の順番はこのままと逆にするのとどちらがいいと思いますか?」「咳をしてもの『も』があるのとないのではどのように違うと思いますか?」というように、聞いている人が考えやすいように工夫をさせます。発表の後に、誤りや不十分なところがあれば、教師が修正や補足説明をします。
 
 プリントを読めばその作品についてだいたいのことがわかりますが、一か所読むべきところを伏せることによって、ちょっとしたクイズのようになります。発表する側には、発表する緊張感と共に自分たちだけが深い読みまでできているというちょっと得意気な感じが生まれ、聞いている側には、ただ受け身的に発表を聞くのではなく、なんとか言葉を手がかりにして考えようとする姿勢が生まれて、授業が盛り上がるようになりました。
 
 検討させる時間や準備させる時間はかかりますし、教師が効率よく班をまわってうまく検討・準備ができるような助言を打つことや、子どもたちから提出された原稿の一部を消して印刷することなど手間もかかりますが、子どもたちの「言葉にこだわり、自らすすんで読もうとする意識」は高まるような気がします。一昨年二年生で短歌を、昨年三年生で俳句を同じ方法でやらせましたが、俳句のときには、二年生のときに一度やった経験から、班での検討はスムーズになり子どもたちの読みも深くなったような気がしました。

 以下に掲載したのは、短歌の学習の際、発表の準備のために配布したプリント(俳句もほぼ同じ内容)と、子どもたちが実際に班で検討した原稿です。授業をされる際のヒントになれば幸いです。

短歌班研究生徒提出原稿「観覧車…」
俳句班研究生徒提出原稿「咳を…」