「教室に俳句を」よい句にたくさん触れさせよう

『読み研通信』第132号(2019.11.3発行)の熊谷 尚先生の「教室に俳句を」を再掲します(一部抜粋)。

 今、子どもたちの間にちょっとした俳句ブームが起こっている。

 今年度、小学3年生の国語を担当しているのだが、教科書の「俳句」の単元に入ったとき、ある子どもが開口一番、「先生は『プレバト』見てますか。」と訊いてきたので、ちょっと驚いた。「プレバト」は、芸能人を様々なジャンルで査定する番組で、中でも特に、俳句査定のコーナーが人気を博している。俳人の夏井いつきさんが、芸能人の作った俳句を一刀両断にし、鮮やかに添削する、あのコーナーの面白さは、小学3年生にも十分に分かるようだ。

 さて、冒頭で触れた光村図書の小学3年生の教科書の単元「俳句を楽しもう」では、次の六句が取り上げられている。

  • 古池や蛙飛びこむ水の音 芭蕉
  • 閑かさや岩にしみ入る蟬の声 〃
  • 春の海ひねもすのたりのたりかな 蕪村
  • 菜の花や月は東に日は西に 〃
  • 雪とけて村いつぱいの子どもかな 一茶
  • 痩せ蛙まけるな一茶これにあり 〃

 広く人口に膾炙されている名句ばかりで、音読や暗唱をさせるにはふさわしいラインナップラインナップと言えよう。

 しかし私は、せっかく「プレバト」で俳句に興味をもっている子どもたちなので、教科書に載っている文語調の俳句だけでなく、近代の俳人や現代の作家による多様な俳句作品にも触れさせたいと考えた。

(        )と月光降りぬ貝割菜

 次のように板書し、授業を始めた。

(       )と月光降りぬ貝割菜
川端茅舎

熊谷 尚

今日は「俳句クイズ」に挑戦してもらいます。カッコの中に、どんな言葉が入るでしょう。

子ども

先生、これ、俳句ですよね。

子ども

それなら、五七五になるはず。

子ども

最後のところは、なんて読むんですか。

熊谷 尚

「かいわりな」と読みます。貝割大根って知ってるでしょう。「貝割菜」は秋の季語なんです。

子ども

月光だから、だ。

熊谷 尚

そうです。夜、畑に芽を出した貝割菜に月光が降り注いでいるんですね。

子ども

何かちょっと怖い。

子ども

怖くない。月が出ていれば明るいから。

熊谷 尚

なるほど、いろいろと想像がふくらみますね。

子ども

先生、ヒントください。

熊谷 尚

ヒントか。まず、カッコにいくつの音の言葉が入るかというと…

子ども

それは分かる。たぶん4文字。

熊谷 尚

うん、すごい。4文字。正しく言うと4音です。
(手をたたきながら)「タタタタと」でちょうど五七五になります。
では、重要なヒントを言います。カッコの中には、月光が降り注ぐ様子を表す言葉が入ります。前に勉強した「かさねことば」です。

子ども

「ぐんぐん」とかですか。

熊谷 尚

そうそう、「雨がザーザー降る」とか。

子ども

はい。僕は「ぱらぱら」だと思います。

熊谷 尚

では、Aさんの言ったぱらぱらを入れて、みんなで読んでみましょう。どうぞ。

子ども

(全員で)ぱらぱらと月光降りぬ貝割菜

熊谷 尚

どうですか。

子ども

いいと思う。

子ども

なんか、ちょっと合わない。

熊谷 尚

ほかの言葉が浮かんだ人、いませんか。

(以下省略)

子どもたちから出てきた答え

きらきらと・しとしとと・はらはらと・さらさらと・しんしんと・らんらんと…等々

 ちなみに茅舎の句は、「ひらひらと月光降りぬ貝割菜」である。
 擬態語「ひらひらと」が、月光と貝割菜(の風にそよぐさま)の両方に同時にかかっていくところに、レトリックの妙がある。子どもたちは、「『ひらひらと』は思い付かなかったけど、とてもいいなあ。」と感想を述べていた。

 しかし、この「俳句クイズ」は、正解を見いだすことを目的としていない。子どもがそれぞれに、自分が「いいな」と感じた言葉をカッコに当てはめ、一句が出来上がればそれでよいのである。時には、原作を超える名句が出来上がることもある。子どもの自由な発想に、私自身が感心させられることもしばしばである。

 学級担任をしていた頃、「朝の会」で、毎日のように「俳句クイズ」を出し、子どもたちとの〝俳句談義〟を楽しみながら、よい句にたくさん触れさせるよう心がけていた。「塵も積もれば…」とはよく言ったもので、子どもたちの語彙力の向上や言語感覚の育成に大いに役立っていた。

挑戦してみよう!「俳句クイズ」

 では、読者のみなさまも、「俳句クイズ」に挑戦してみてください。(答えは最下部)

  • 第1問

チューリップ(      )だけを持つてゐる
細見 綾子

〔ヒント〕感情を表す言葉が入ります。

  • 第2問

(      )と蟷螂蜂の皃を食む
山口 誓子

〔ヒント〕オノマトペが入ります。

  • 第3問

顔じゆうを(      )にして笑うなり
 閒石

〔ヒント〕春に咲く花の名前が入ります。

  • 第4問

摩天楼より新緑が(      )ほど
鷹羽 狩行

〔ヒント〕ある野菜の名前が入ります。

  • 第5問

(      )のひかりの棒をいま刻む
黒田 杏子

〔ヒント〕これも野菜です。季節は冬。

  • 第5問

暑い夏わたしも(      )も動かない
小6 女子

〔ヒント〕夏と言えば、やっぱりこれ!

 第6問の句。実はこの句は、かつての私の教え子が詠んだものです。もう十年も前のことですが、私の心の中にずっと残っている印象深い句です。子どもが作った句をクイズにして出題すると、いつも以上に教室が盛り上がります。

「俳句クイズ」の答え

第1問:喜び/第2問:かりかり/第3問:蒲公英(たんぽぽ)/第4問:パセリ/第5問:白葱/第6問:海

参考文献:嶋岡晨「詩のある俳句」(飯塚書店1992年)

今回ご紹介した熊谷先生の文章は、『読み研通信』に掲載されていたものです。
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