第21回 高校部会報告(第3次報告)

初めて高校公開授業実施 30名の参加で熱心な討議

多治見西高校  湯原 定男 

◇21回の重み、積み重ね◇
 2月22日(土)・23日(日)の両日、岐阜県にある私立多治見西高等学校を
会場に第21回高校部会が開催された。はじめての公開授業の実施、漢文での模
擬授業、「書き」と読みを結びつけた実践の提案など高校部会の歴史にさらに
積み上げることができた研究会だった。
 最初の挨拶で、加藤郁夫読み研事務局長が次のように述べた。
「高校部会は、大西忠治先生からやるよう勧められて始めた。高校部会をやり
つづけることは私の責任だと思って取り組んできた。気がつけば21回という感
じです。」
 ことばどおり「21回続けてきたことの重み」を感じながらの高校部会だっ
た。

 参加者は、北は東北青森から西は山口をはじめとして遠方の方も、地元岐阜
県からも多くの参加者を得、30名。公開授業には本校多治見西高校からも国語
のみならず、英語や体育の先生にも見ていただき、実質的には45名ほどの参加
者であった。

◇高校部会はじめての公開授業◇
 今回、いつも名古屋開催時でお借りする会場が使えず、苦肉の策で私の勤務
校で開催することにした。ちょうどこの日は入試の振替授業日ということもあ
り、公開授業を実施することにした。
 夏目漱石『夢十夜・第一夜』を授業、クライマックスを探すことで事件を読
み、できれば主題まで迫りたいと考えた。 グループ討議を経た上で、クライ
マックス案を出し、全体討議で決定していくという手順で進めた。
 生徒たちは、意欲的に読み込み、グループでの話し合いも創造的な読みがで
きたようで、「百合の花」=「女の化身」という形象の読みも証拠をつかみな
がら読み込むことができた。
 三つの案が出されたが、つぶし合いをやりきることができず、(私の課題で
す)その点は残念であった。ただ生徒たちが新しい意見を言ってくれるたび
に、驚きと喜びでほんとうに授業者としては、うれしい時間を持つことができ
た。

〈参加者の感想〉
・ 生徒たちが生き生きと意見交換をしており、読み深めている姿に 感動し
  ました。自分で考えを出し、発表する訓練をしっかりされていることがわかり
  ました。意見を集約していくときの先生の助言も、とても参考になりました。
・ 生徒の発言(読み)がすばらしかった。多様な読みの可能性を感じさせて
  くれる授業だった。
・ きちんとトレーニングを段階的に積めば、あれだけ深い読みができるのか
  と、驚きました。

◇漢文「四面楚歌」の分析と模擬授業◇
 多治見国語サークルのメンバーで東濃フロンティア高校中山徹也さんは、史
記「四面楚歌」をとおして、項羽の人物像を読む分析と模擬授業を提案した。
4回ほど多治見サークルで討議を重ねながら分析と授業を作りあげていった。
 中山さんの分析と模擬授業で、よかったのは、訓読することと訳すことそし
て句法などの文法事項を教え込むことが中心になってしまいがちな漢文に、
「登場人物の心理」に注目したことだ。特に項羽が、それまで「怒」っていた
のに、ここではじめて「大いに驚く」という心理状態になったことに着目し、
それをとおして項羽の故郷への特別の思いを読み取っていく点である。
 また、「乃」「則」の訳も人物像にあわせて読み取っていく工夫もあった。

〈参加者の感想〉
・「乃」一語にこだわることで作品世界がパッとイメージできる一つの例とし
 て有効でした。
・研究の深さに驚くばかりです
・漢文で一つの単語にこだわった読みが新鮮だった。
・一つの漢字の訳し方から、登場人物の人物像を呼んでいくというのが実にお
 もしろくて興味深く思いました。

◇説明的文章の読み方入門◇
 三つ目の提案は、読み研運営委員で高槻中学高等学校竹田博雄さんの説明的
文章の読み方入門た。
 とくに今回は「構造よみ」と「吟味よみ」を中心に、小学校や中学校の教材
を使って解説、実際に模擬授業的に読解を進めていった。「構造よみ」では次
の規
定をもとに読みを進めていった。  

前文=問題提起、話題提示=「問い」
本文=提起・提示に対する筆者の見解・主張(「問い」に対する「答え」
後文=結論(まとめ)答えの確認。 発展的な主張。新しい問題提起  

 また、教材については、小学校・中学校の教材については、書き下ろしの物
が多く、この三部構造にぴったりと合致する教材が多いこと、それに対して高
校の場合、「部分」を切り取ってくることが多く、かならずしもこの構造に合
わない教材が多く見られるという指摘は、実際の教材研究において、しばしば
感じていたことだけに、納得した。
 また、小学校や中学校の教材も構造よみをすると単純でなく、興味は尽きな
い。高校生相手の授業にも十分堪えられると改めて感じた。

〈参加者の感想〉
・前文の探し方が、「問題提示されているところ」というはっきりとした指
  針を得ることができ、よかったです。
・とてもわかりやすかったです。
・「問い」と「答え」の対応で読んでいくことの有効性及びその問題点など
  がよく分かる授業でした。
・初めての参加で「構造よみ」をどのような形で行えばいいか、わかりやす
  かったです。教科書の本文を一枚のプリントするして、生徒に示すというのは
  全体を見るという点から、参考になりました。
・説明文の構成をまず考えさせることで、どこに何が書かれているかをつと
  らえさせるという構造よみは、「どう読んでいいか、わからん??」という生
  徒に対して有効で、苦手意識をクリアさせ、わかりやすく説明もできそうで、
  参考になりました。

◇「書くこと」の指導の提案◇
 二日目の最後は、読み研事務局長加藤郁夫さんの「書くこと」の指導の提
案。 昨年度に引き続き、「書くこと」について実践的で具体的なすぐに使え
る提案だった。
 教師の側としても添削のことなどの負担を考えると、敬遠しがちな書くこと
であるが、そのあたりの困難さを指摘しながら、それを乗りこえて気軽にでき
る実践を提案されたことに、新しさがあった。 まず、書き言葉の特殊性を、
①音声を欠くこと、②対話者を欠く、という二点にとらえ、かつ「書き言葉へ
の欲求が乏しい」という書くことへの困難性を押さえた点が興味深かった。子
供の作文嫌いには必然性があるということだ。
 その上で、「書く力」を「自らの考えを論理的に表現する力、的確に伝えて
いく伝達能力」とする。
 氏の実践で興味深かったのは、まず200字程度から始め、内容は授業の内
容など「すでにわかっていること」、とした点。これは、「内容」ではなく、
「書く」という行為、「型」に指導の重点を置くと言うこと。
 また、「添削を前提」というのもおもしろい。つまり、「書き直す」のをあ
たりまえとするということ。しかも、「消しゴムで消さない」、「赤ペンで自
分で直せば良い」。これは、生徒の「書くことの」ハードルをさげる。実際我
々も何度も書き直しているのだから。

〈参加者の感想〉
・生徒の立場になると、何がしんどいのか、何を与えることで組み立てるこ
  とでき、達成感を持てるのか、考えさせられました。
・読みを書きにつなげるという点と、継続するという点に大変感銘を受け
 ました。
・自分自身書くことが苦手なので、書くことを普段から練習しなくては、と
  強く感じました。評価を単純にすることや、指導の仕方など大変参考になりま
  した。
・具体的な書き方の指導方法が示されていて実践的である。ぜひ実践してみ
  たいと感じられた提案だった。
・より具体的に示していただき、よかったです。大変わかりやすかったで
  す。

◇ 最後に◇
 懇親会も12名の参加で、盛り上がった。遠方の方とも教材や授業を肴にし
て、飲みながら語り合う楽しさを感じた。こうした機会があることの幸せを感
じた二日間だった。

 最後に、今回の高校部会は、読み研で知り合った先生方と5年前に始めた
「多治見国語サークル」の皆さんの全面的な協力を得ての開催だった。メンバ
ーの皆さんにはこの場を借りて心より感謝申し上げたい

〈参加者の感想〉
・飲み物と甘い物のサービスがとてもありがたかったです。休憩時の和み、
  会話も弾ました。ごちそうさまです。
・懇親会を含めて、示唆に富むお話を聞け、参加してよかったです。ありが
  とうございました。
・もっともっと学ばねば。大変刺激的な研究会でした。