【国語授業実践講座Q&A】文学作品・小説を読むとき、なぜ「構造よみ→形象よみ→吟味よみ」の順番なのでしょうか。
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文学作品・小説を読むとき、なぜ「構造よみ→形象よみ→吟味よみ」の順番なのでしょうか。どうして「形象よみ」の前に「構造よみ」を先にやるのか教えてください。
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回答者:小林信次
「読み」の授業研究会(読み研)では、次のような文学作品の指導過程を考えています。
1物語・小説の構成・構造を読むー構造よみ
2物語・小説の形象・技法を読むー形象よみ
3物語・小説の吟味・評価をするー吟味よみ
さらに、それぞれの指導過程の読みを深める着目の指標があります。
1構造よみ
・作品の構成(導入部ー展開部ー山場ー終結部)を読む。
・作品の構造(クライマックスを軸とした形象の方向性・つながりや仕掛け)を読む。
2形象よみ
・作品の鍵となる語句や文に着目し取り出す。
・取り出した語句や文の形象を、技法や様々な方法で読み深めていく。
・そうした際に文脈(相互の形象の関係性)を重視する。その延長戦上で主題を把握する。
3吟味よみ
・作品の共感・違和感を意識しつつ再読・評価を行う。
・吟味文を書き、交流する。(「読むこと」から「書くこと」への発展)
このような三読(1→2→3)の読みの指導過程を通して、読む力を付けていくのです。
なぜ、「構造よみ」を最初の段階に位置づけるのでしょうか。
なぜ、「構造よみ」を最初の段階に位置づけるのか。つまり、「形象よみ」や「吟味よみ」の前に読むのかを考えてみます。
物語には、構成と構造があります。構成とは四部構成(導入部ー展開部ー山場ー終結部)です。構造とは、クライマックスを中心に組み立てられているプロット(筋)の関係性です。
「構造よみ」の段階で重要なのは、「発端」や「クライマックス」を見つけ、次の段階の形象よみにつなげていくことです。
「構造よみ」は、おおよその筋、事件をあきらかにする段階であるが、大きくは「発端」と「クライマクス」の二つの決定が重要です。
「発端」はその物語・小説の事件とは何かを決めていきます。つまりね主要な人物の出会い、日常とは違った事が起き、説明的な書かれ方から、描写的な書かれ方に変わるところ、など、その小説の事件をめくって読み解いていくことになります。
そして、それが「クライマックス」と対応した読みと関係づけられていきます。「クライマックス」に向かって読みの質がたかまっていきます。
クライマックスを巡っての議論こそが、構造読みのポイントであり、「形象よみ」より、前の段階での読みが大事になってきます。
「クライマックス」とは、
①事件がそこで決定的となる。
②読者により強くアピールする書かれ方になっている。
・そのための描写の密度が特に濃い
・緊迫感・緊張感が高い。
・技法や表現上の工夫がされている。
③作品の主題に強く関わる。
・導入・展開・山場の「事件の発展」「伏線」「暗示」等がクライマックスに収れんされる。
・主題に関わり象徴性を強くもつ場合がある。
授業では「クライマックスはどこか」を巡っての話し合いで作品の読みの方向ができていきます。
例えば、「ごんぎつね」の「クライマックス」の決定を巡って。いくつか焦点かされていくが、大きくはA「兵十は・・・ドンとうちました」 B「ごんおまえだったのか。いつもくりをくれたのは」 に収斂され、議論では、事件とは何か、「こちらがクライマックス」とより細かな理由づけによって、ごんのいたずらと兵十との関わりを探りだし、いくつか焦点かされ、次の形象読みへの読みのポイント、事件、人物、文体の読みへと繋がっていきます。
そして、構造よみによって、物語のどこに着目するのか、その着目する観点が明らかになっていく。構成・構造をとらえることによって組み立てが見えてくます。人物像に関わるところや、すでに作品の背景(時や場所)に関わるところも着目されます。また、クライマックスなどの話し合いによって、表現技法が用いられることへの着目がされます。
さらに着目したところをどう読むのかが形象よみとして大事なところです。
構造よみを先にしたからこそ!
形象よみは、書かれている言葉や文を手がかりに読み進めていきます。構造よみで明らかになったクライマックスに関わる事件が明らかになっているので、どこを読めばいいのか明らかになっています。線引きなどで取り出し、その抜き出した言葉や文を文脈とかかわらせながら読み深めていくことができます。
形象よみをしてから、構造を読むというのは、全体を把握しないで部分を読むということになってしまいます。
初めに全体の構成・構造をつかみ、そこで作品の組み立てや事件の方向性を俯瞰的に把握する。次にそれを生かしながら鍵となる言葉や文(クライマックスで明らかになった重要箇所など)に着目し、形象を深めるのが方法としても有効です。
参考図書
阿部昇『増補改訂版・国語力をつける物語・小説の「読み」の授業』(2020年 明治図書)
阿部昇『物語・小説「読み」の授業のための教材研究』(2019年 明治図書)
プロフィール
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