「基礎体力」をつける

討論の授業への憧れを持つ教師は多い。しかも学級の子ども達のほぼ全員が参加する討論だ。一つの言葉の解釈をめぐって丁々発止とやり合う。文章の構造について意見が交錯する。そんな授業だ。

私は現在小学校の5年生を担任している。国語では上記のような討論を作りたいと願っている。そこで意見の述べ方、反論の仕方などをていねいに指導するのだが、どこか迫力がない。理由は「基礎体力」不足にあると感じた。

「基礎体力」とは何か。読み間違えずに教科書を音読する力、指示された箇所を的確に見つけ出せる力、文章をそのまま写し取ることができる力、である。

教育出版5年生(上)に、「漢語、和語、外来語」という単元がある。お昼ごはんを表現する場合、和語→昼飯 漢語→昼食 外来語→ランチといった例を出し、語感の違いなどを学ばせる単元である。この単元では教材文を一読した後、言葉調べに移るという学習過程が組まれることが多いだろう。

しかし、私は、最初の時間には「基礎体力」を意識した授業を行ってみた。

まずは音読である。
「11年間生きていたなかで、一番上手!と思えるように読みなさい。」
「起立して、一段落ずつ読みます。一回でも間違えたらすわりなさい。」
「教室の隅にいる、虫にも聞こえるように読むのです」
といった、追い込みをかけたり、意欲喚起の言葉がけをしたりして、読ませる。
一定の速さでスラスラ読めるようにさせる。

次は読解である。
「漢語とは何か。ずばり書いてあるところに薄いサイドラインを引きなさい。その後班で相談して、箇所を決定しなさい。決定したら学習リーダーは教科書を持っていらっしゃい。ヒント、言います。13文字です。」
と言った。続けて、和語についても同様に指示した。外来語については、「今度は個人で持っていらっしゃい。」と変えた。少し変化をつけながら同じ作業を繰り返えさせた。
まとめで用いる市販のテストは9割が文中から答えを探し出す、という問題である。これと同様の問いを授業でも発している。

最後は書きである。
「和語、漢語、外来語のそれぞれの定義がわかりましたね。すべてをノートに書き写しなさい。」
すべてを書き写して、ノート6行分である。これができない。四分の一弱の子がどこかしら間違えるのだ。以前、有名な私立中学校の入試問題に「この文章をそっくりそのまま書き写しなさい」という問題が出たそうだ。子どもにとっては(大人も、か)、決して簡単な作業ではないのだろう。

以上のような「基礎体力」づくりを重視する授業を行っている。