中学校部会報告(2004.10.15-16 東京)

五十嵐 淳(担当運営委員)

 2004年10月15日(金)・16日(土)の二日間にわたり、東京都葛飾区立一之台中学校を会場として、読み研中学校部会が開催されました。
 中学校部会は、第1回より、模擬授業ではなく、実際の生徒を相手にした生の授業を公開することを「売り」にしてきました。今回もその伝統を受け継いで小倉泰子さんが公開授業を行なう都合上、金曜の午前中からの、学校を会場とする部会となりました。
 その結果、参加者の少なかったことが残念でした。各種研究会でも中学校教員の参加が激減していると聞きます。あらためて、中学校現場の厳しさを目の当たりにする思いでした。
 公開授業は、3・4校時と連続して、同一教材の同一過程を違うクラスで実施するという興味深いものでした。教材は『空中ブランコ乗りのキキ』(別役実・三省堂中一)。
 生活指導面で大変だという話を小倉さんから聞いていたので、それなりに覚悟して学校に入ったのですが、生徒たちの表情は総じて穏やかで、むしろ落ち着いた学校という印象を受けました。
 授業は、「おばあさんは何者か?」という提言を受けて、生徒が学習班ごとに意見と根拠を出し合うというものです。この提言は、一読後に多くの生徒が疑問として挙げたものでもあるそうです。
 生徒たちは熱心に授業に参加していました。まず、その反応のよさと雰囲気の穏やかさに感心しました。これは多分に、ふだんの信頼関係と、授業中の小倉さんの瞬時の生徒扱いの上手さに負うところが大きいのでしょう。
 あとで小倉さんから聞いたところによると、授業直前に他教師から厳しく叱責された生徒もいたそうで、公開授業を行なう学習集団としては難しさを抱えていたにもかかわらず、参観者にはまったくそんなことを感じさせませんでした。
 オーソドックスな読み研方式の授業とは違うのですが、「おばあさんはキキ自身である」という読みを、生徒たちはよく追求していたと思います。ただ、授業後の協議で小倉さんが「助言が難しかった」と言っていたように、ねらいどおりその読みが生徒の胸にストンと落ちたというわけにはいかなかったようです。
 15日の午後は、授業についての研究協議の後、運営委員の小林義明さんが詩の構造よみの模擬授業を行ないました。教材は『わたしが一番きれいだったとき』(茨木のり子)。前述したように参加者は少なかったのですが、模擬授業では、「転」をめぐって白熱した討論が展開されました。中身や技法などから「転」を追求する授業展開はまさに「お手の物」。できれば、あまり読み研になじみのない方から多く参加していただきたかった内容でした。
 16日午前は、五十嵐が説明文の講座を担当しました。内容は、私たち新潟サークルがここ数年来追究してきた形式論理(包括概念)による説明文指導の紹介です。少人数ならではの忌憚のない意見交換が行なわれました。
 個人的な感触かもしれませんが、私たちの主張に対する理解が徐々に広がってきたように感じました。
 内容の濃い、とても面白い中学校部会でした。実務から公開授業にわたって大車輪の活躍をされた小倉泰子さんと、東京東サークルに心からの拍手を贈ります。

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