関西サークル 堺例会(第4回)の報告

7月13日(土)に関西サークルin堺 の第4回例会を持ちました。
参加は5名でした。
はじめに、加藤(大阪・初芝立命館高校)があまんきみこ『ちいちゃんのかげおくり』(光村図書3年)の教材研究を報告しました。立命館小学校での実践を踏まえての教材研究でした。
この作品は、国語教材として子どもたちが初めて戦争と出会う作品です。戦争について学んでいくことは大事なのですが、あくまでも国語の授業であり、教材を横において、戦争のことを学習する授業ではいけない。国語の授業であることに軸足を置きつつ、教材の読みを助けていくような戦争の学習をしていくことを心がけるべきと考えます。
以下報告から、何箇所か抜粋します。

1.構造よみ
○冒頭  「かげおくり」って遊びをちいちゃんに教えてくれたのは、……

  ○発端  夏のはじめのある夜、くうしゅうけいほうのサイレンで、……

 ○山場のはじまり 明るい光が顔に当たって、目がさめました……

◎ 最高潮  そのとき、体がすうっとすきとおって、空にすいこまれていくのが分
      かりました。
 
 ○結末  ……小さな女の子の命が、空にきえました。

  ○終わり ……きらきらわらい声を上げて、遊んでいます。

【発端】
 ① 空襲にあい、お母さん・お兄ちゃんとはぐれ、一人ぼっちになる。
    → ちいちゃんが一人ぼっちになる、そのはじまり
 ②「ある夜」と始まっている
    → 何かがあった夜=空襲
 ③ 行アキがある
【最高潮】
 ① ちいちゃんの死(天国へ行く)ことが示される
 ② 一人の女の子が空襲で親と離れ、死んでいく話と読み取れる

2.形象よみ
「ちいちゃんは、ひとりぼっちになりました。ちいちゃんは、たくさんの人たちの中でねむりました。」
一見、相反する表現になっている
 ①大勢の人がいても、ちいちゃんを知っている人はいない 
 ②まわりにいる人たちは、それぞれ自分のことで精一杯 → 他人のことを思いやる余裕が無い
 ③大勢の人の中にいるだけに、ちいちゃんの「ひとりぼっち」さがより強調される
 ④ちいちゃんを知っている人がいないことから、かなりの距離を逃げまわったと考えられる

「その夜、ちいちゃんは、ざつのうの中に入れてあるほしいいを、少し食べました。」
 ①一日中、ちいちゃんは家のあとでお母さんの帰りを待っていた
 ②お母さんもお兄ちゃんも帰って来なかった
 ③お母さんが無事ならば、家のあとに帰ってこないはずがない
 ④お母さんとお兄ちゃんの死を予感させる

「くもった朝が来て、昼がすぎ、また、暗い夜が来ました。」
夜は暗いもの、なぜ「暗い」とつけるのか?
 ①お母さんやお兄ちゃんが帰ってこない暗さ
 ②ひとりぼっちの寂しさ・怖さ
 ③ちいちゃんの気持ちの暗さ
 ④ちいちゃんの置かれた状況の暗さ → 死に近づく

「ちいちゃんは、ざつのうの中のほしいいを、また少しかじりました。」
 ①前は「少し食べました」、表現が変わっている
 ②食べる量が減っている
 ③ほしいいの量が減っている。残りが少なくなっている。
 ④やがてほしいいがなくなることを暗示 → 死

「夏のはじめのある朝、こうして、小さな女の子の命が、空にきえました。」
 ①それまでのことが、「夢」であることが示される
 ②読者を現実にもどす
 ③「ちいちゃん」ではなく「小さな女の子」
   → つきはなした語り方になっている
 ④「女の子」の死んだことの意味を読者に考えてもらいたい(読者に問題を投げかけている)
 ⑤死んだのはちいちゃんだけではない。他にもたくさんの人(女の子)が死んだことを暗示する
 ⑥「~死にました」と比べて
   きれいな表現 空のどこかにいるようなイメージを残す

次に、朝倉さん(大阪狭山市西小学校)から「すがたをかえる大豆」の実践提案をしてもらいました。
来学期に朝倉さんが取り組む教材で、構造よみから論理の読みを中心に議論をしました。
「大豆」と「ダイズ」の使い分けがなされているなど、面白い発見もありました。
本文にあたる3~7段落は、すべて段落のはじめに柱の文がおかれていて、とてもわかりやすい書かれ方になっています。3年生他の学年でも導入教材として使えるのではないかと改めて思いました。

 次回は秋になるかと思います。日程や教材などについてご要望があれば、読み研問い合わせメールでくださると、参考にさせて頂きます。