『大造じいさんとがん』常体バージョンと敬体バージョンの比較

 椋鳩十『大造じいさんとガン』には、常体バージョンと敬体バージョンがある。光村図書・東京書籍・学校図書は敬体バージョンを、教育出版は常体バージョンを採用している。同じ敬体バージョンでも、光村図書は「まえがき」があるものを、東京書籍・学校図書は「まえがき」のないものと、違いがある。4社ともに5年生の教材としていながら、本文の有り様は異なっている。同じ作品でありながら、教科書に掲載される有り様がこれほど異なっている例も珍しいといえる。
 ここから、常体バージョンと敬体バージョンの比較や「まえがき」の有無を巡っての吟味よみの授業が構想できる。
 添付したPDFは、この3月にある小学校で行う予定だった研究授業(コロナウィルスのために中止になったのだが)の相談を受けて、加藤が試みに作成した比較表である。常体と敬体の比較を行うにしても、授業で扱う場合には、全文を取り上げるのは、子どもたちにとって荷が重すぎる。はやぶさの登場場面に絞り、比較してはと考えた。
 敬体版は東京書籍、常体版は教育出版の教科書本文をもとにしている。ただし、両者には行替えや表記の違いもある。授業では敬体と常体の違いに焦点をあわせるために、それらの違いはある程度統一したので、教科書の表記とは異なる箇所もある。
敬体と常体による違いを子どもたち自身が見つけ、その意味を考える授業を考えていた。