授業びらき「開講クイズ&解説」「一年間やり通せることを伝える 」(中学・高校編)

『読み研通信』第126号(2018.3.31発行)より町田雅弘先生・竹田博雄先生の「授業びらき」を再掲します。


開講クイズ&解説―豊かな言語と思考のために

by 町田雅弘先生

 高校の授業びらき例です。

1.開講クイズ

 次の三つの例文のうち「ありえない」という言葉が正しく使われていないのはどれか。

  • 例文1:A「最近、巨人、調子いいじゃん。また、ミラクルあるかもよ。」B「まさか、ありえないって。」
  • 例文2:A「きのう阪神まけたなあ。」B「え、うそ。マジで。ありえないって。」
  • 例文3:A「見て、見て。逆転されちゃったよ。」B「うそ。ありえない……。」

2.解説と解答

 こんなことがあった。
 東京駅から出るつくば行きのバスの停留所。ディズニーランド帰りの中学生二人が、その停留所にやってきた。夜ももう遅い時間、一刻も早く帰りたかったのだろう。ところがそのバスを待つ仕事帰りの人々は多く、長蛇の列。その列を眺めながら、絶叫する二人。
「わっ!なにこれ。マジ。ありえなくない?」

 この使い方が変だと思うのは、今目の前で現実に行列があるのに「ありえない」と言っているからだ。
 「ありえない」の正しい使い方は、「きっとそのようなことが将来ないだろうと思う」という未来のことを指す時に使う。たぶん彼女たちは「ありえない」と言うことで、行列をなかったことにしたいのだろう。

 (例文2・3)は過去・現在に実際起きているいる事実を見なかったことにしようとしているので違和感を覚えるのだ。正しいのは(例文1)のみだ。

3.現代文を学ぶ理由

 現代文を学ぶ理由、それは、豊かな「外言語」(話す・聞く・読む・書く時に使う言葉)の使い手となるためだ。それができれば、豊かな「内言語」(自分が頭の中で思考するときに使う言葉)を持つことができるのだ。つまり、薄っぺらな言語しか持たない人は、薄っぺらな思考しかできない。逆に豊かな言語を持つ人は、豊かな思考をすることができる。

 将来、困難なことが起こった時、全てを「ありえない」という言葉で片づけ、見なかったことにして過ごす人生を選ぶのか。それとも豊かな語彙を駆使し論理的思考をすることで困難を乗り越えていく人生を選ぶのか。皆はどちらを選ぶ?

一年間やり通せることを伝える

by 竹田博雄先生

 最初の授業では、自分で出来ること、一年間にわたって、やり通すことができることを生徒に伝えるようにしている。

 曰く、「私は一生懸命に授業します。教科の好き嫌いや、私への好き嫌いが出てくると思いますが、私が何をわかって欲しいと思っているのか?それだけは、そういう好き嫌いは別にして、必ず理解して下さい。」というような意味のことを言う。

 その後の一年は、一心不乱である。生徒の方が根負けするくらいに、一生懸命授業をする。

今回ご紹介した文章は、『読み研通信』に掲載されていたものです。
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