阿部昇『国語力をつける物語・小説の「読み」の授業』(明治図書)
阿部昇『国語力をつける物語・小説の「読み」の授業』(明治図書)の紹介
● 庄司 伸子 (秋田県・鷹巣西小学校)
「国語の授業は何を教えたらいいのだろうか」と考えたことはありませんか。また,「国語の授業で他の文章でも生かせるような読み方,学び方をどう指導したらいいのだろうか」と思ったことはありませんか。物語文教材を扱う単元に入る前に気持ちが重くなってしまうことはありませんか。
この本は3つの「指導過程」と子どもに身に付けさせたい「教科内容」としての「読む方法」を示してくれています。指標だけでなく教材を挙げ,どのような点に着目したらいいのかという具体例を提示してくれています。すべて新しいことを取り組まなくてはならないというのではなく,授業者たる自分自身の普段の実践に意味付けをしてくれる本でもあると思いました。そして,教材研究への興味もかき立てられました。この本を通して,「教材を教える」授業から,「教材で教える」つまり,様々な文章でも生かせる「読みの力」をつける指導の仕方が見えてくるのではないかと思います。
国語科が専門の先生にも,専門ではないけれども校種によって国語科に携わっている先生にもきっとためになる1冊です。
● 熊谷 尚(秋田大学教育文化学部附属小学校・主幹教諭)
どんな力を付ければ子どもたちは物語・小説を豊かに読めるようになるのか。その力はどういう手順でどういう過程で指導していけば身に付くのか。「読む力」すなわち国語の「教科内容」の解明と,「読むこと」の授業の新しい指導過程・指導方法を提案した,読み研代表・阿部昇先生の待望の新著が刊行された。
第1部では,物語・小説の「構造よみ」「形象よみ」「吟味よみ」の指導過程と,そこで身に付けさせる「教科内容」が示されている。「スイミー」「お手紙」「一つの花」「大造じいさんとガン」「カレーライス」「少年の日の思い出」といった小・中学校の有名教材を具体例に挙げながら,それぞれの指導過程の急所が分かりやすく解説されている。「第4章「『形象』を読み深めるための方法」では,直喩と隠喩の違い,換喩・提喩・声喩への着目,反復,倒置,体言止めといった表現技法の効果など,他書ではあまり取り上げられていない新しい切り口からの読みの方法が示されている。
第2部では,小学校の「ごんぎつね」,中学校の「走れメロス」という2つの代表的な教材を取り上げ,第1部で示された指導過程と指導方法の活用の具体例が述べられている。教材研究の具体的な方法や,授業づくりのちょっとした「コツ」なども書かれており,明日からの授業づくりにすぐに役立つ内容となっている。
「国語の授業は,何をどう教えたらよいのかが今ひとつよく分からない」といった声を聞くことが少なくない。そんな思いをもつ若手の教師はもちろんのこと,ベテランの教師にとっても,読めば〝目から鱗が落ちる〟こと請け合いの一冊である。
プロフィール
- 2024.10.31国語授業の改革国語授業の改革23号(2024年)
- 2024.10.07冬の研究会2024年12月21日(土)22日(日)「読み」の授業研究会(読み研)第39回 冬の研究会のお知らせ
- 2024.10.06関西地方2024年 11月 3日(日) 読み研 関西サークル 学習会
- 2024.08.25夏の大会2024年「読み」の授業研究会・夏の大会が、本日終了しました!