書評「読みのスリルとサスペンス」(広井護著)

 高知の広井護さんが本を出された。広井さんは私立土佐中高等学校の国語教師で、古くから読み研にも参加されている実践家である。

 『読みのスリルとサスペンス ― 深層読みで名作に迫る』というタイトルである。
 簡単に目次を紹介する。

 第一章 言葉の裏を読む
 第二章 深層読みで名作に迫る
 第三章 読みのアラカルト

 第一章では「咳をしても一人」や「鉄鉢の中へも霰」などの俳句を題材に鋭い読みを展開されている。
 第二章では『坊っちゃん』『舞姫』などの作品をとり上げて、授業の一端をも示しながらここでも興味深い読みが随所に示されている。
 『文化高知』という機関誌に五年にわたって連載していたコラムをもとに、本にされたとのことで、国語教育の面白さにとどまらず、一般の方にとっても魅力的な内容になっている。
 本の終わりに「読みの方法」として四つの読み方が紹介されている。その一つが「主語の逆読み」というもの。広井さんの学生時代の話から、三上章『象は鼻が長い』に言及していく壮大な背景をもった話がそこで展開されている。どんな読み方かは、ぜひ本を手にとって確認していただきたい。

本の注文は、【南の風社】HP(http://www.minaminokaze.co.jp/)から出来ます。