平野先生の国語通信(その2)

東陵中学校 第三学年
国語通信 第三号
発行*そろそろテストを作成している平野先生。
   腕によりをかけて涙が出るようなものをお送りするので覚悟しておこう。

俳句の読み方

「近代の俳句」の学習で、俳句はビデオより写真に近い表現方法であり、一瞬を切り取った世界の表現だと説明しました。
 俳句は世界で一番短い定型詩です。少ない言葉を結びつけることで、深い世界を表現しています。ひょっとすると十七音で、小説以上の世界を表現しているかもしれません。その深さを味わってみましょう。
 以下に、その読み取り方の例を説明します。

①音読で五・七・五のリズムを確認する。
 破調といって「字余り」「字足らず」のようにわざとリズムをくずしているものもあるので、注意しましょう。
※「こんなよい月を一人で見て寝る」など定型のリズムをくずしているものを自由律俳句という。

②表層の読み。語句の意味や漢字の読みを確認する。

③季語を指摘し、季節を確認する。

④切れ字を指摘し、意味の切れめを確認し、どのような二つの世界を一つに結びつけているか考える。また切れ字には作者の感動の中心が表れているのでそこを確認する。あわせて句切れを確認する。「~であることよ」などと訳す。
(例)や・かな・けり・ぬ など
⑤表現技法を指摘し、その効果を確認する。
*比喩(直喩・隠喩・擬人法・擬態語・擬声語)なら何を何にたとえているか。どういう効果があるか。
(例)「ゆさゆさと」擬態語(様子をたとえている)
    「金剛の露」隠喩(本当にダイアモンドがあるわけではなく、その輝きをたとえている)
*体言止めなら何にスポットをあてて感動を詠んでいるか。
(例)「牧の木々」で木々に視点を当てて、木々が冬支度を急いでいる様子を伝えている。
*対比なら何と何がどのように比べられていて、何が強調されているか考える。
(例)万緑(緑)と歯(白)色の対比。

⑥主語・述語・修飾語の関係をとらえる。が・は・を・になど、助詞を補ったり、口語文法で読み替えたりする。

⑦5W1Hで場面をつかむ。
*いつ(WHEN)季節・時間帯など、どの一瞬を切り取ったのか。季語を詳しく読んでみる。
(例)「啄木鳥」は秋の季語だけど「落葉」は冬の季語だ。どちらがこの俳句の季節を表しているのだろうか。
*どこで(WHERE)暑い地方か寒い地方か、部屋の中か外か。
(例)お地蔵さんもわたしもずぶぬれになっているような場所はどこなんだろう?
だれが(WHO)主人物あるいは物、動物。主語を確認する。
(例)「闘志いだきて丘にたつ」人物って誰だろう?俳句の中に書いてないから、作者なんじゃないだろうか。
*なにを(WHAT)主人物が何をしようとしている場面か。
(例)鷺が一羽で何をしているの?水を渡るってどういうこと?
*どのように(HOW)主人物の行動がどのような様子なのか。
(例)ゆさゆさと桜の大枝がゆれるとあるがどんなゆれ方なんだろう?
*なぜ(WHY)これまで読み取ってきた事実をもとになぞを解明する。書かれていないが、事実をつきあわせると、疑問がわく。
(例)なぜ作者は何度も尋ねたのだろう?

⑧大意(大まかな意味)を書く。句切れがあれば二文で、なければ一文で訳す。
(例)厳しい春風が吹いていることよ。それに向かってわたしは闘志をいだいて丘の上に立っているのだ。

⑨視点人物(作者)の位置とその感動をとらえる。
 作者はどこでその様子を見ているのか。
(例)作者は、万緑を遠くながめつつ、近くの赤ちゃんの歯を見つめている。

⑩主題(テーマ)を短い文で表す。体言止めで表しても良い。
(例)月夜の孤独感と満足感

以上のことをふまえて、中間テスト勉強に取り組みましょう。

東陵中学校 第三学年
国語通信 第四号 
発行*三年生の授業が楽しくなってきた平野先生。弁論大会や俳句の発想いいねえ。


助動詞の覚え方

 二年生の時に習った文法でおそらく最も難しかったのは、助動詞ではないでしょうか。「付属語で活用がある」と言葉で表せば、たった九文字ですが、なかなか奥が深いのです。日本語は文末決定性といって、文を最後まで読まないと話し手・書き手の意思がわかりません。そのかぎをにぎっているのが、付属語(助動詞・助詞)なのです。
 助動詞についてわかりやすくまとめてあるのが、「便覧」200ページです。「新文法ノート」の70から81ページにも載っていますが問題中心でくわしすぎるようです。「新研究」116から119ページにも載っていますので、余裕のある人はチャレンジしてみましょう。

 助動詞で覚えるべきことは、以下の三つです。

 ①意味による分類
 ②活用の仕方
 ③接続の仕方

 このうち、中学校での勉強の中心はそれぞれの「意味」を覚えて、他の言葉との見分けができるようにすることです。そのためにはそれぞれの助動詞の用法を覚えましょう。
 次の「意味による分類」の説明をよく読んでみてください。それぞれの助動詞を見分けるコツを書いておきました。これらは、絶対そうなるというものではありません。あくまで見分けるコツとして覚えておくと便利です。

【れる・られる】
「れる」五段・サ変の未然形
「られる」それ以外の未然形
A受け身(~に~される)彼に足を踏まれる。など動作する相手が存在する。
B自発(自然にそうなる)昔のことが思われる。
  ※「思う」「思い出す」「感じる」「案じる」などにつく。
C可能(~できる)すぐに行かれる。など「行くことができる」という意味で使われる。
 ※可能動詞に注意 すぐに行ける。五段活用を下一段活用に変えている。
D尊敬(目上の人がする)先生が来られる。など上に目上の人が存在する。「~なさる」という意味で使われる。

【せる・させる】
「せる」五段・サ変の未然形
「される」それ以外の未然形
E使役(他に~をさせる)息子に買い物に行かせる。

【たい・たがる】
「たい」自分の希望
「たがる」自分以外の希望
F希望(~したい)きれいな海が見たい。
         彼は外に出たがる。

【だ・です】
「です」は丁寧な言い方
G断定(~である)彼は中学生だ。
  ※「だ(です)」の識別
   ア、体言+「だ(です)」→断定の助動詞
   イ、動詞の連用形+「だ(です)」→過去・完了の助動詞
   ウ、「~だ」を「~な」に置き換え可能→形容動詞

【そうだ・そうです】
H様態(自分で様子を見て判断)雨が降りそうだ。
   など動詞の連用形や形容詞・形容動詞の語幹。
I伝聞(他から聞いて判断)雨が降るそうだ。など用言の終止形につく。

【ようだ・ようです】
J推定(根拠のある想像)彼は欠席するようだ。など「~らしい」という意味。「どうやら」をつけることができる。
Kたとえ(ある事物をたとえる)彼女は雪のような白い肌だ。など「まるで」「いかにも」をつけることができる。
L例示(例を示す)ウルトラマンのように強くなりたい。など「たとえば」「まさに」をつけることができる。
   ※たとえと例示の識別
    たとえは実際にないこと、例示は実際にあることを例に示す

【らしい】
M推定(根拠のある想像)彼は中学生らしい。など「どうも」「どうやら」をつけることができる。
  ※「らしい」の識別
 ア、「どうやら~らしい」「~である」+「らしい」→推定の助動詞
 イ、「~にふさわしい」→形容詞

【う・よう】
N推量(根拠のない想像)明日は雨が降るだろう。
O意志(~するつもりだ)僕もいっしょに行こう。
P勧誘(~しようよと相手を誘う)いっしょに勉強しようよ。など英語でいう「レッツ」と同じ。

【まい】
Q打ち消し推量(~しないだろう)彼はきっと来まい。
R打ち消し意志(~するのはやめよう)もう二度と行くまい。

【ぬ・ない】
S打ち消し(否定~ない)雨が降らない。
  ※「ない」の識別
 ア、「ない」の上に「は・も」を入れることができる。→形容詞「美しくはない」
 イ、「ない」を「ぬ」に置きかえることができる。→打ち消しの助動詞「走らぬ」

【た(だ)】
T過去(~した、~だった)昨日、塾に行った。など、「昔」「かつて」という言葉を入れることができる。
U完了(今ちょうど動作が終了したところ)駅に電車が到着した。など,文中に「今(ちょうど)」という言葉を入れることができる。
V存続(現在進行~ている、~てある)壁にかかった絵。
W確認(相手に確かめる)太郎くん、準備はできた?
  ※過去・完了・存続の違い 
   (未来)
   (現在)
      ○完了(現在までつながっている)
      ●過去(現在とは切れている過去の一時期のできごと)
      ○存続(過去から現在、未来にかけて続いている)
   (過去)

【ます】
X丁寧(ていねいな意味)私が先生です。

◎助動詞の活用の型の分類
 ①「れる」「せる」など「―る」で終わる動詞型
  下一段活用のような活用。
 ②「たい」「らしい」など「―い」で終わる形容詞型
  「かろ・かっ・く・い・い・けれ・○」と活用。
 ③「だ」「ようだ」など「―だ」で終わる形容動詞型
  「だろ・だっ・で・に・だ・な・なら・○」と活用。
 ④「ます」「た」「う」など活用しなかったり、特殊な活用をする特殊型