「センセのがっこ」で「ごんぎつね」の構造よみ

高橋喜代治

「センセのがっこ」というのは埼玉県教職員組合青年部が主催する学習会です。若い先生たちの勉強会・交流会で、泊まり込みも含め年に数回おこなわれていますが、毎回1・2年目の若い先生を中心に100人前後が集まってワイワイと楽しくやっている学習会なのです。
 2月3日(金)におこなわれたこの「センセのがっこ」で、読み研三芳サークルの奥富浩(埼玉・唐沢小)先生が、「読み研のやり方でぜひ」と依頼されて、「ごんぎつね」の構造よみの模擬授業をおこないました。会場は川越駅にほど近い勤労福祉センターです。奥富先生は読み研の夏と冬の研究集会の常連中の常連で、研究会ではいつも前の方に陣取って発言している顔のいかつい先生です。
 まず講座風に30分ほど読み研方式の説明がおこなわれて、いよいよ構造読みの模擬授業です。構造よみについては、参加者の全員が初めてということもあって、「クライマックスはどこか」を読み取ることになりました。
 はじめはおとなしかった子どもたち(参加者の先生たち)も、班や全体の討論になると辺りはばからず、「私はここだと思う」とか「いや私はこっちだ」と持論を展開するようになってカンカンガクガクの様相を呈して、楽しくも活気のある学習会となりました。同時並行で生活指導や他の教科の実践講座が4つほどあったので、「ごんぎつね」の構造読みの参加者は23名でしたが、金曜日の夜に、疲れた体をひきずってほんとにたくさんの若い先生が集まってくれたと思います。
 ところで、埼玉の新任研修は拠点方式と言って、新任の教師はある一つの職場に3人が配置されます。私の勤務する三芳町で言えば、隣の中学校に配置されているので私の学校にはここ数年新任教師がいません。新任3人が配置された職場では指導教官が1人配置されて、それこそマンツーマンで「ミッチリ」指導されるのです。そして指導教官との濃い「師弟関係」がつくりだされるようになっています。
 そういう経歴を持つ若い先生たちが、夜にわざわざ「センセのがっこ」に参加してくるのです(豪華な夜食につられてくるのでは?という屈折した精神で分析をする人もいますが)。
 参加者のある先生は次のように感想をよせてくれました。

 国語の授業のおもしろさがとてもよくわかりました。クライマックスを見つける内容で、グループごとに話し合いを進めていましたが、このグループの話し合いがとても大切だということがわかりました。子どもたちが意欲的に学べるような授業を目指して今後がんばっていきたいと思います。

 グループでの話し合いが意欲的な学びをつくりだしたのだ、ということをこの若い先生は知ったのです。
 また、こんな感想も寄せられました。

 参加してほんとうによかったです。自分にはなんにもないにもかかわらず、毎日子どもの前に立って教えなければならず、いつもいろいろ悩んでいます。きょうは模擬授業の中で、みんなの意見を聞いたり自分が話したりして「なんて楽しいんだろう」と感じました。こんな感動を子どもたちにも味わわせてあげられたらと心から思いました。今日の資料と体験をおみやげにこれからの授業をがんばっていこうと思います。本当にありがとうございました。

 これは多くの若い先生の本音の悩みなのだろうと思います。そして、私たち「読み研」は「あてどない国語の授業を何とかするのだ」と世間に宣言した以上、この真面目で悲痛な現場の叫びに正面から答えなければ、研究会として恥ずかしい、申し訳ないと思うのです。
 模擬授業の後の質疑応答の際、2・3名の先生たちに「読み研って聞いたことありますか」と尋ねてみました。「知っている」と答えたのは数名でした。これは悲しいけれど嬉しい人数です。なぜなら、この日、残りの十数名の先生に「読み研」のことを知ってもらえたのですから。

プロフィール

「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。