1時間の授業をどう組み立てるか(1)

「森のスケーター やまね」(教育出版小3)を例に

辞書の意味だけでよしとしていませんか?

語句の意味を考えて、読みの力をつける

●「先生、国語辞典の引き方はわかったけど、辞書には三つも四つもの意味が書いてあって、この
文章ではどれが当てはまるのか、わかりません。」と子どもたちは言います。言葉の豊かさと正確
さをどう教えたらよいでしょうか。
 文章を読むには、辞典に書かれている意味がわかり、文章に即した言葉の意味を的確に理解することが必要です。そのとき、語句を二つに分けて考えると、意味がつかみやすくなることを教えます。例えば「やまね」は、「山」と「ね(ネズミ)」に分けて考えると、山に住んでいるねずみだと推測できます。いわば「言葉の二分法」です。辞典を引いて意味がわかるというのは、まだ単なる手作業の段階です。語句を二つに分けて考えることは、語彙の豊かさに気づき、思考力を養うことです。
●この小単元で教えたいことは次の四つです。
ステップ1 国語辞典の引き方がわかり、使い慣れるようにすること
ステップ2 文中で使われている語句の意味をつかむこと
ステップ3 「森のスケーター やまね」の文章構成と内容の大筋を読み取ること
ステップ4 文の内容を吟味すること
 本時はステップ2・3を授業のねらいにします。キーワードの意味を二つに分けて考え、文章の内容を読み取る力をつけます。

〈学習指導計画〉

語句の意味を考えて、読みの力をつける(15時間)

小単元 語彙のひろがり  
教材 ①「森のスケーター やまね」
時数 8時間
内容 語句の意味を調べ、説明文を読む
学年 3年


◇語句調べと読み 1 音読・黙読して大事な語句に傍線を引く
           語句の意味調べ(二分法で意味をつかむ)
         1 国語辞典で意味を調べる
     〈本時〉1 意味調べ(大事な語句の取立て指導) 
            「やまね・天敵・冬みん」の3語を取り立てる
◇文章の組み立て 1 はじめ・なか・おわりに分けて、文章構成と大筋をつかむ
◇内容把握    3 身を守る方法について書かれた部分を読み取る
◇文の吟味     1 「やまね」が長い間生き抜いてき理由を吟味する
 
小単元 説明文の読み  
教材 ②「めだか」(説明文)
時数 6時間
内容 説明文を読んで、書かれた内容を理解する

発展(1)動物について書かれた短い説明文を読んで大事な語句を三つ調べ、読み取った内容をノートにまとめる。語句の意味を考えて、読みの力をつける

「森のスケーター やまね」(湊 秋作・教育出版・小3)は、「やまね」という小さくて寝てばかりいるねずみが、日本で、数百万年以上の昔から生きぬいてこられたのはなぜだろうか、という疑問を解き明かした説明文です。

 授業例
●教 材     「森のスケーター やまね」
●授業のねらい ・「やまね」の意味を国語辞典で調べる方法を理解する
        ・文章構成と内容の大筋をつかむ
●準備するもの  国語辞典・動物の絵がある干支(えと)の表・一円玉(?枚―やまねの体重)                                             
授業展開
◆国語辞典の引き方からはじめよう 
【前時の復習】
発問1 辞典には、日本語の辞典と外国語の辞典(例として、英和辞典を見せる)があります。日本語の辞典には、どんなものがありましたか?
・ 国語辞典、漢和辞典、百科事典…。
教科書には「じてん」と書いてありますが、漢字ではこう書きます。「辞典」は言葉を調べるもので、「事典」は物事を調べるときに使います。

発問2 今日は国語辞典の引き方を復習します。どうやって引けばいいのかな?
・「あいうえお」の順番でさがします。

発問3 そうですね。では、教科書を見てください。「森のスケーター やまね」の「やまね」を調べるには…。最初にどうするんだったかな?
・どんな意味か、予想してみる。予想をメモする。
・「つけ問い」をする。
・まず、言葉を二つに分けてみる。二つに分けて、意味を考えます。

発問4 ハイ、どれも大事なことですね。では、「やまね」を二つの言葉に分けると?メモをしながら考えてみよう。
では、発表してもらいます。
・「や・まね」
・「やま・ね」
・あれ、「や・まね」は変だよ。
・「やま・ね」の方の「やま」は、漢字の「山」かな。じゃあ、「ね」って何だろう?
・教科書に「ねずみ」って出ているよ。
・「ねずみ」の「ね」じゃない?
・「山にいるねずみ」ってことかな。

発問5 国語辞典を引いてみよう。見つかったかな?
・見つかりません。出ていません。
・先生、出ていましたが、むずかしくて読めません。
どれどれ…。ほんとだ。先生が読んでみます。
「ネズミ目ヤマネ科の哺乳類。体長約8センチメートル。毛色は褐色で、背に1条の黒線がある。北海道を除く各地の森林にすみ、冬眠する。日本特産で、天然記念物。」(「広辞苑」)
 やっぱり、小さなネズミのことですね。でも、教科書に書かれていることとちょっと違いますね。

 やまねは、およそ数百万年いじょうものむかしから日本にすんでいて、日本にいる動物の中で、もっとも古くからいるしゅるいの一つだと考えられています。今は、本州、四国、九州と隠岐のしまの森にすんでいます。(傍線―小林)

 昔は「北海道を除く各地の森林」に住んでいたのに、だんだん住める森が少なくなったのかな。

教師のウラ技  つけ問い=語句の意味を予想してから国語辞典を引くこと。
 意味が分からない語句が出てきたとき、すぐ辞典を引くのでなく、その語句の意味を予想してメモをさせてから辞典で調べ、合っていたか、いなかったか、合っていなかったのはなぜかを考えさせることです。その際、語句を二つに分けて考える方法(二分法)を使うのがたいへん効果的です。
 本時は語句の意味を「二分法」でつかみ、文章の読みの力につなげます。本文の新出漢字は「本州・体重・横・冬みん・血・指定・心配」の7字ですが、読みとの関連で取り立てて指導すべき語句は、「やまね・天てき・冬みん」の三語です。この三つの言葉を軸にすえることで、文章全体の内容が的確に把握できるようになるからです。(つづく)