「サンゴの海の生きものたち」のテスト問題で、説明的文章指導の導入

高橋喜代治

テストに取り組むうちに説明的文章の面白さを体感

 私は、大学の国語科教育法の授業で、「サンゴの海の生きものたち」(小2・光村)を使っています。ただし、この教材は今は掲載されていません。使うのは説明的文章指導の授業の導入段階で、下記に示したように、教材文と設問をプリントして、学生に配布し、グループで学習させます。
 ねらいは、説明的文章の論理と吟味の面白さを実感してもらうことです。学生たちは中学・高校の国語教師を目指しています。だから、平仮名だらけの「サンゴの海の生きものたち」を示すと、学生たちはかなりとまどいますが、個人でテストに取り組み、グループ学習で討論が始まると、かなり熱気を帯びてきます。
 授業の後で、ミニコメントを書かせると、「面白かった」とか「説明文の構成が分かった」「教科書を初めて批判的に読めて面白かった」などの反応が必ず寄せられます。
 設問と問題文は以下のとおりです。

≪設問≫
問1 第6段落の③文に対応させるようにして、第9段落に第④文を付け加えなさい。
問2 また、筆者は9段落の④文をなぜ書かなかったのか、あなたの考えを述べなさい。
問3 さらに、④文は書いた方がよいか、書かない方がよいか、あなたの考えを述べなさい。

≪問題文≫

           「サンゴの海の生きものたち」
                           もとかわ たつお

1 サンゴの海には、たくさんの生きものたちが、すんでいます。それらの中には、たがいに、やくにたつよう に かかわり合って、くらしているものがいます。
2 どんな生きものたちが、どんなかかわり合いをしているのでしょうか。海の中をのぞいてみましょう。
3 おおきなイソギンチャクがいますね。細長いたくさんのしょく手をゆらゆらさせています。そのしょく手の 間に、きれいなオレンジ色の魚がうかんでいます。クマノミです。
4 イソギンチャクのしょく手には、どくのはりがあります。イソギンチャクは、これで、小さなどうぶつをつ かまえて食べているのです。クマノミも、さされるとたいへんなことになります。でも、さされることはあり ません。クマノミの体は、ねばねばしたえきでおおわれています。これがさされないひみつです。
5 クマノミを食べる大きな魚は、イソギンチャクをこわがって、近づいてきません。だから、イソギンチャク の中にいれば、クマノミはあんぜんです。
6 イソギンチャクを食べにくる小さな魚がいます。クマノミはこの魚が近づいてくると、カチカチと音を立て ておいはらってしまいます。③こうして、イソギンチャクとクマノミは、たがいにまもりあっているのです。
7 サンゴの海には、うつくしい魚がたくさんいます。ホンソメワケベラも、その一つです。明るい青色の体  に、頭からしっぽにかけて黒いすじが一本あります。体の長さは、十二センチメートルほどです。
8 この小さい魚が、大きな魚の口の中に入っていくのを見ると、びっくりしてしまいます。でも、食べられる ことはありません。大きな魚たちは、体や口の中についた虫を、ホンソメワケベラがとって、きれいにそうじ してくれるのを、知っているからです。
9 ①ホンソメワケベラは、そうじ魚とよばれています。②でも、ただ、そうじをしているのではありません。 ③ホンソメワケベラにとっては、そうじをしてとった虫が、食べものになるのです。
 ④(                                  )
10 このように、サンゴのうつくしい海では、たくさんの生きものたちが、さまざまにかかわり合ってくらして います。
 

≪補足≫
 問1の解答では「助けあっている」「協力しあっている」「共生している」などが出ます。「ウィンウインになっている」というの面白いのもありました。この解答の的確性や是非をグループや全体でしっかり討論することが、問2、問3の吟味学習の深めることにもつながります。また、前文(第1、第2段落)の「やくに立つようにかかわり合って」や「どんなかかわり合い」の問題提示の意味も検討するようになります。

プロフィール

「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。