説明文「たんぽぽのちえ」(光村・小2)の教材研究
(1)段落の構成
本教材は、「(はじめ)話題提示―〈中〉知恵の列挙―(おわり)まとめ」という構成になっている。本教材は「問い」がない説明文である。隠れた問いを①段落に作るとすれば、「たんぽぽはどのようなちえをはたらかせているのでしょうか」となる。この問いは、⑩段落のまとめと対応させて作るとよいだろう。
この文章を前文(はじめ)・本文(なか)・後文(おわり)の大きく3つに分けると、①段落が前文、②~⑨段落が本文、⑩段落が後文となる。本文は②③段落が本文Ⅰ、④⑤段落が本文Ⅱ、⑥⑦段落が本文Ⅲ、⑧⑨段落が本文Ⅳに分けられる。
①段落は、黄色いきれいなはなを咲かせるたんぽぽについて話題を提示し、読者の関心をひこうとしている。そして、たんぽぽの生態の秘密について、今後説明していく段落の前書きの働きをしている。
②③段落は、「二、三日たつと」という時間を表す言葉を述べ、1つめのたんぽぽの知恵を紹介している。すなわち、「花はしぼんで、くろっぽい色にかわる」「花のじくはじめんにたおれる」のである。その理由として、「たねにえいようをおくり」「たねを太らせる」ことを述べている。
④⑤段落は、「やがて」という時間を表す言葉を述べ、2つめのたんぽぽの知恵を紹介している。すなわち、「花がかれて、わた毛ができる」「らっかさんのようになる」のである。その理由として、「たねをふわふわとばす」ことを述べている。
⑥⑦段落は、「このころになると」(わた毛ができるころ)という時間を表す言葉を述べ、3つめのたんぽぽの知恵を紹介している。すなわち、「じくがおき上がる」「ぐんぐんのびていく」のである。その理由として、「せいを高くするほうが、たねをとおくまでとばすことができる」ことを述べている。
⑧⑨段落は、「よく晴れて、風のある日」と「しめり気の多い日や、雨ふりの日」と天候による条件を挙げ、4つめのたんぽぽの知恵を紹介している。すなわち、晴れて風のある日は「わた毛のらっかさんはとおくまでとんでいく」しめり気の多い日や、雨降りの日は「わた毛のらっかさんはすぼんでしまう」のである。その理由として、「わた毛がしめっておもくなるとたねをとおくまでとばすことができない」ことを述べている。
本文Ⅰ、本文Ⅱ、本文Ⅲ、本文Ⅳに小見出しをつけると次のようになる。
本文Ⅰ―たねを太らせるちえ
本文Ⅱ―たねをとばすちえ(わた毛、らっかさん)
本文Ⅲ―たねを遠くへとばすちえ(花のじく)
本文Ⅳ―天候によってわた毛の開き方を変えるちえ
⑩段落は、「このように」という接続語で文章全体をまとめている。「たんぽぽは、いろいろなちえをはたらかせています」と4つの知恵があることをもう一度まとめ直している。そして、その知恵をはたらかせる理由は、「あたらしいなかまをふやす」ためであることを明らかにしている。
(2)本文Ⅱと本文Ⅲの段落関係を考える
本文Ⅱの④⑤段落は、たんぽぽに白いわた毛ができ、このわた毛がらっかさんのようになり、たねをふわふわとばすと述べている。そして、⑥段落では、「このころになる」と述べており、白いわた毛ができるころをさしている。⑦段落では、「せいを高くするほうが、わた毛に風がよくあたって、たねをとおくまでとばすことができる」と述べている。たねをとばすという観点で考えると、④⑤段落と⑥⑦段落は同じ知恵と考えられるので、⑥⑦段落は本文Ⅱとなる。
しかし、たねをとばすための工夫という観点で考えると、④⑤段落ではわた毛に焦点を当て、「わた毛になる」ことと「らっかんのような」とび方をすることが述べられている。⑥⑦段落では、わた毛そのものには焦点を当てずに、花のじくに焦点を当て、「じくがおき上がる」ことと「せのびするように、ぐんぐんのびる」ことが述べられている。
「たんぽぽのちえ」という隠れた問いと対応させて考えると、⑥⑦段落は花のじくに関わるたんぽぽの知恵なので、本文Ⅱとはちがう知恵と考えられる。したがって⑥⑦段落は本文Ⅲと考えられる。
(3)指導過程
1.表層の読み取り
①段落番号書き
②教師の範読
③児童の音読
④初読の感想交流
初めて知ったこと、驚いたこと
2.文章構成の読み取り
①「はじめ―なか―おわり」の把握
② 話題提示の把握
3.本文構成と内容の読み取り
①・たねを太らせるちえ ②③段落―本文Ⅰ
・たねをとばすちえ ④⑤段落―本文Ⅱ
・たねを遠くへとばすちえ ⑥⑦段落―本文Ⅲ
・天候によってわた毛の開き方を変えるちえ ⑧⑨段落―本文Ⅳ
これらの知恵とその理由の把握、小見出しつけを行う
②本文Ⅱと本文Ⅲの段落関係の把握
4.文章の工夫の発見(文章の吟味)
5.感想の交流
学習してわかったこと、新しく出てきた疑問について感想を書き、発表し合う。
(4)文章の工夫の発見
・ 「二、三日たつと」「やがて」「このころになると」などといった時間を表す言葉を使って、時間を追って変わっていくたんぽぽの様子を表している。
・各段落では、「―のです」「―からです」という表現で、その様子の理由を述べている。
・最後の段落で「このように」という形で、文章全体をまとめている。
・各段落の内容とさし絵を対比させて読むようになるようになっていて、言葉だけではむずかしいものがわかりやすくなっている。
・たんぽぽの知恵が2つずつの段落を使って述べられている。
・最後の段落では、たんぽぽが4つの知恵を働かせる理由が明らかにされている。そのために「このように」と文章全体をもう一度、まとめ直している。
プロフィール
- 2020.03.05授業づくり説明的文章の読みに役立つ書籍の紹介
- 2019.04.14授業づくり「教育科学国語教育」5月号の紹介
- 2017.09.03教材研究小学校・詩の授業「風景 純銀もざいく」(山村暮鳥)教材分析
- 2013.06.16教材研究『あめ玉』(新美南吉)の教材研究