ノート指導「学習記録」

宮城洋之(東京都杉並区立荻窪中学校)

※この実践は大村はま氏の著作にヒントを得たものです。

「読み研方式」を生徒たち自身が理解するようになると、授業に活気が生まれます。それは学習の見通しが立つようになるということと、さまざまな読みの方法を使って文章を読み解く面白さを実感できるからだろうと思います。
 このように「読み研」の授業には「学び方を学ぶ」という側面があります。一つの文章で学んだ読みの方法が、次の文章を読むための力となるわけです。ですから毎時間の授業で何を理解したのか、何を学んだのかということを生徒たちが自覚できるような機会を設けることは大切です。
 そこでオススメしたいのが「学習記録」。準備も手間もほとんどかかりませんが学習効果は抜群です!

(1)方法

 授業の最後の3~4分間程度をこの「学習記録」の時間にあてます。やることは単純。本時の授業の「内容」と「ポイント」を日記のように文章で記録するだけです。ただし、ちょっとしたコツがあります。

○同じページに書かせる
 ノートのあちらこちらに記録を書くのでは、ひと目で学習の過程を振り返ることができません。ですから「学習記録」は教材・単元ごとに同じページにまとめて書くように指導します。新しい教材に入った時にはノートの新しいページに題名や作者・筆者を書いたりしますね。私はこのページを「学習記録」用にさせています。1ページに書ききれなくなってしまった場合には新しいページを用意させればOKです。

○「本時のポイント」は生徒自身で書かせる
「今日初めて学習したこと」「以前に学習したのに忘れていたこと」「今日の授業では解決できなかった課題」などが「ポイント」です。これを生徒自身に振り返らせます。だから記録する内容は生徒によって異なります。
 文章で記録しますので中途半端に理解していることは書けません。生徒たちはこの数分間で本時の授業の理解度を自己チェックすることになるわけです。

○重要事項は色ペンで記入させる
「これはテストに出そうだぞ」「この読み方は他の文章でも使えるぞ」といった特に大事なことは色ペンを使って記録するように指導します。
 ノートを提出させると、その子が毎回の授業で何を学んだのか、どれだけ学ぼうとしていたのか、そして何を重要だと考えたのかが「学習記録」を通してわかります。時にはまちがって理解している生徒が見つかることもあり、教師にとっては指導改善の資料として活用することができます。

○書き方の条件をつける
 本来の目的ではありませんが、「学習記録」は日常的に短作文を書く練習にもなります。私の場合は「常体に統一する」「一文を短くする」といった点に注意するよう指導しています。

(2)「学習記録」生徒の記入例

【島崎藤村「初恋」の授業のノートから】
第△時(□月○日)
 今日は『初恋』の第二連の形象よみをやった。
 ポイントは「読点の位置によって二重に読む」という方法である。「やさしく白き手をのべて」はA「やさしく、白き~」とB「やさしく白き、手を」で何がやさしいのかが変わってしまう。Aは仕草がやさしく、Bは手つきがやさしいという違いだ。

【俳句の授業のノートから】
第○時(△月□日)
 今日は正岡子規の俳句を読んだ。
 ポイントは、俳句には必ず季語が必要ということだ。この俳句の場合、季語は「雪」で季節はもちろん冬である。また、最後の「けり」は2年生の時に短歌で習った「切れ字」の一つである。これで「尋ねけり」の部分が強調されていることがわかる。短歌と同じく俳句にも「句切れ」があり、この俳句は「句切れなし」だ。尋ねるだけで自分で見に行かない(行けない)ということから、作者が正岡子規であることを突き止めた。

(3)さいごに

 毎回の授業で3~4分を確保するのが意外に難しかったりしますが、生徒たちが慣れてしまえば家庭学習として取り組ませることもできます。
 定期テスト前の勉強でも役に立つことを経験するせいか、2年生、3年生と学年が上がるにしたがって詳細な記録をとる生徒が増えてきます。そうなると、何が重要なのか焦点が定まらない授業になってしまった時などは生徒からクレームが付くようにまでなります。ですから、「学習記録」は教師にとっても生徒たちに力をつける授業をしていたかどうかを振り返るために役立ちます。
 ちょっとした工夫で、生徒も教師も力が付く「学習記録」。皆さんも始めてみませんか。

プロフィール

「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。