第20回 高校部会報告(2)

竹田博雄

御参加ありがとうございました!

● 『清兵衛と瓢箪』の教材研究(大阪 高槻中学高等学校 竹田博雄)
 この物語のクライマックスはどこになるのか? という問いに対して多くの一文が指摘されました。それ  らを整理する過程で、対立する二つの勢力が二重になっていることが判ってきました。「瓢箪作りに没頭す る清兵衛とそれを苦々しく思う父親」という構図の中に、「どんな瓢箪が素晴らしい瓢箪か?」という瓢箪 についての評価基準や価値観の対立があることが見えてきたのです。そこから小説の主題に迫っていく読み を試みました。

参加者感想
・いろいろな意見をあえて出させてまとめていく手法に感心しました。
・「価値の対立」というのは、生徒も「そう考えられるのか!」と驚きを与えられると思います。
・授業の進め方として面白いと思いました。クライマックスを探すというところをやってみたいと思います。

●「書くこと」の指導(大阪 初芝立命館中学高等学校 加藤郁夫)
 私たちが指導の必要性を常に感じながらも、ついつい後回しにしがちな、「書くことの指導」。その指導に 一定の方向性を与える新しい提案でした。特に、「型にはめて書く」と「具体を書く」という二つの提案は 実際の指導を考えたときとても実践的な方法であり、参考になるものでした。その他、「生徒自身に添削さ せる」や「指導の前に教師自身が書いて生徒が書けるかどうか確認する」など、画期的で、目から鱗の提言 もあり、とても為になる発表でした。

参加者感想
・具体的な指導例を示していただき、大変勉強になりました。
・国語表現にかぎらず、国語総合、現代文などでただちに実践可能な内容で大いに参考になりました。
・「読み」を「書き」につなげていく指導のお話は大変参考になりました。

●「水の東西」の教材研究(神奈川 川崎市立川崎総合科学高等学校 建石哲男)
 国語総合の定番といえるこの教材。ですが、構造を考えてみると、筆者の、曖昧で情緒的な述べ方が気にな ってきました。批判的な「吟味よみ」では多くの意見が提出され、「これって評論なの? 随想ではない  の?」という声がフロアからあがりました。漫然と読むのではなく、構造を探る読みをきっかけにして、改 めて多くのことが読めてきました。
 建石氏の発表は、ご自身の勤務校でのご経験を交えた、フロアの参加者の方も時にうなずき共感しながらの 面白い発表でした。

参加者感想
・構造よみや論理よみで文章に迫っていく読み方に驚きました。
・指示語の内容を明らかにしたり、筆者の意見をまとめたりすることが到達点であった私は、これではいけな かったのだと気付かされました。評論文も楽しんで指導できるとわかりました。
・どのように授業を行っていくのかに対する一つの方向性を得ることができました。

●「おくのほそ道(立石寺)」の教材研究(岐阜県 多治見西高等学校 湯原定男)
 現代語訳を通せば、それ以外に一見何もやりようがないような文章でも、一語一文の形象を読むことで、実 に多くの発見がある! そのことを実感させられた湯原氏の発表でした。氏の読みで素晴らしかったのは、 「閑かさや-」の句の解釈を中心にするのではなく、むしろその句に至るまでのところにこだわった点で  す。対句を手がかりに、そこに表現された共通性や対象性を明確にし、「俗」と「聖」の対比という独自性 のある読みを提出されました。

 また古文の授業実践について、富山県の富山国際付属の松原先生から、「伊勢物語」を素材にして、新たな 視点からの問題提起をいただいきました。

参加者感想
・本当におもしろかったです。湯原先生のように「ああ、なるほど!」と生徒の発見をほめて、一緒に古典 を楽しむ授業を目指します。
・比較的平易な古文でも、細部にこだわって読むといろいろな読みが可能だということが分かりました。
・俳句の解釈について、やりとりの中で、あっと驚く解釈が出て面白かったです。

 今回の高校部会は、とても充実した部会になりました。初めて御参加下さった先生方はもちろん、すべての 参加者の先生方と、学びの輪を広げていくことができればと思っています。御参加ありがとうございました。

プロフィール

「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。