第15回高等学校部会報告(2007.2.10-11 名古屋)

史上最多の参加者数で「古典」を研究・討議

湯原定男(多治見西高等学校)

 2月10日(土)~11日(日)名古屋文化短期大学を会場に、読み研第15回高校部会を開催しました。
 参加者は、1日目が50名、2日目が42名でした。実質的な参加者が52名と、高校部会始まって以来の最多人数となりました。読み研に対する期待と関心の強さを感じました。北海道や青森、高知といった遠方から参加してくださった先生方がいらっしゃったことも、大変にうれしいことでした。
 今回の研究会の最大の特徴は高校部会としてはじめて古典をとりあげたことです。アンケートでも「古典」だからという参加理由をあげていた方が多かったことも、期待の高さを感じました。

★「読み研入門講座(文学作品の読み方)」
 最初の講座は運営委員岩崎成寿さんによる文学作品の読み方入門講座です。最新の研究成果を取り入れた読み研方式による小説の読み方の基本を説明されました。とくにクライマックスをふまえた展開部の線引きの演習は新鮮でした。クライマックスをふまえることで、線引きがすっきりと明確になるのですね。

○参加者の感想
「クライマックスが大事で、クライマックスに向かうところ、関係するところに注目し、そこを重点的に教えるとわかりやすいと思いました。」
「参加する前に予習をと、読み研関係の本を拝読させていただいてはいたものの、実際目の前にしてみると、より奥深く、うなる思いでした。」

★講演「古典文学研究と高校における古典教育との繋がりについて」
 次は名古屋女子大学辻和良先生の講演です。源氏物語の冒頭、若紫などを題材に一語一語の表現に即して読むことで作品があらたな姿を見せるというお話は、新たな勉強への意欲をかきたてられました。敬語に注目することで、深く読むことができるというのは驚きでした。

○参加者の感想
「教材研究をしていく中で、もやもやとした疑問がわいてきても、指導書には触れられていないことが多い。先生に明快に話していただき、納得がいきました。」
「『女御更衣あまた……』の冒頭に『皇后』がないということの意味には気づいていませんでした。考えてもいませんでした。驚きでした。」

★模擬授業 伊勢物語「芥川」を読む
 次の講座は、今回の目玉の一つ、多治見西高校の篠原政臣さんによる古文「芥川」の模擬授業です。「昔男ありけり」の「男」を竹取物語の冒頭と比較してその意味を読み取ったり、「え聞かざりけり」を「聞こえざりけり」との差異から、男の意識を読み取るなど意欲的な内容でした。古文の授業を文法や口語訳の授業から脱皮する方向性を提案するものでした。

○参加者の感想
「面白かった。これなら生徒は古文好きになるだろう。現代語訳とこのような授業をどうからみあわせるかがこれからの課題だと思った。」
「めざそうという方向性が、私なりに感じることが出来、それに十分共感できました。」

★討議「これからの古典の授業」
 読み研事務局長加藤さんの「古典の文章をどう読み込んでいくかという観点での教材研究はなされていないのでは」という問題提起、そしてこれまでの辻先生の講演、篠原先生の模擬授業をうけ、活発な意見が交換されました。
 印象に残ったこととして、まず受験校でない高校での古典授業では、「文章がおもしろくて、読む意味がはっきりしていないと授業にならない」との意見があり、そうした教材研究の共有化こそこれから古典の授業にとって重要なことだと感じました。
 また、古文の読み方を巡っては、辻先生から的確な指摘やアドバイスを受け、古典研究者との連携の重要性を強く感じました。古文の深い教材研究をする場合、独りよがりにならないためにも、共同研究がぜひとも必要だと思います。

○参加者の感想
「いろいろな解釈、理解の仕方があることを知り、目が開かれたような思いです。古典研究者とのタイアップが必要だと思いました。」
「敬語から主語、述語から主語を探すという方法はとても参考になりました。」
「参加者の先生を含めて、みなさんの発言はとても面白く聞けました。」

★読み研入門講座(説明的文章の読み方)
 二日目の最初は運営委員の薄井道正さんによる「説明的文章の読み方」でした。豊富で具体的な材料を使いながら、説明的文章の基本的な構造、説明的文章を読む意味、などの意欲的な説明でした。評論が基本的には「問い」と「答え」でできており、それを解き明かす文だということ、ことばとことばの関係は共通性と差異性であるるという説明は非常にわかりやすく、納得しました。

○参加者の感想
「小さな問題の一つ一つの分析が大きな問題(文章全体の読み解き)につながるということがわかったことと、その方法も今後の手がかりになりました。」
「『問いかけ=つっこみ→思考停止の状態を避ける』 とても説得力がありました。」

★模擬授業と教材分析  評論文「ものとことば」
  最後に私が評論文「ものとことば」の模擬授業をしました。構造読みがたんなる段落分けでなく、「何について、どのように述べているかを概観する」ための読みだということを目標に授業しました。また、高校1年のはじめのころの教材ということで吟味の初歩的な読みをと考えて実施しました。

○参加者の感想
「評論の授業を実際にうけて、自分の意見とはちがう結論でしたが、ストンと胸におちました。」
「教科書教材が万全でないことを構造読みを通して立証していく、また変だなと感じることを指摘させるのも面白い作業でした。」

★最後に
「この三連休に、こんなに先生方が集まっていることにまず感動しました」というコメントがありました。本当です。熱気ある研究会ができて、本当にうれしい2日間でした。参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。

プロフィール

「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。