「対話的な学び」を成功させるための「謎解き型学習」のコツ

『国語の授業で『対話的な学び』を最大限に生かす(国語授業の改革20)』(学文社)より、臺野芳孝先生の「『対話的な学び』を成功させるための「授業びらき」「謎解き型学習」のコツ」を一部抜粋し、掲載します。

学習集団を鍛え育てる

 学習集団について押さえておきたい。学習集団を鍛え育てるために次のような視点で子どもたちの様子を観察する。足りないところがあれば、具体的なヒントや手立てを駆使する。

  • 全ての子どもが参加しているか
  • 全員で考えることに喜びを感じているか
  • 安心して話したり、間違えたりできるか
  • お互いの考える時間を尊重しているか
  • 自分の意見を決めて参加しているか
  • うまく説明できなくても助け船を頼める友だちがいるか
  • 意見の違う相手も仲間として見ているか
  • 多数に流されないで考えることができるか
  • 人間関係に引きずられずに考えられるか

 最初から全ての項目がクリアできるはずはない。二~三か月かけて少しずつ褒めながら鍛えていく。子どもたち自身が、自分たちの成長を意識でき楽しく前向きな気持ちで学習ができるようになるとよい。

対話を生み出す「謎解き型学習」

 物語の読解の授業で、子どもたちの疑問を話し合うことは、読解の学習では欠かせない。例えば次のような疑問である。

〇 豆太はやはり臆病なのか?(「モチモチの木」)
〇 大造じいさんはなぜ残雪を撃たなかったか?残雪に感動したから?(「大造じいさんとガン」)

コツ① 意見が分かれる時こそ学習が深まるところである。自分の立場をはっきりさせ話し合わせたい。

 グーとパーのハンドサインや、AとBをノートに書く、赤帽子と白帽子を被るなど学年に応じた立場表明をさせる。「後はバトルだ!」と意見を戦わせる。

 根拠や理由の出し合いになるが、広範囲を読み込んでいる子どもの意見は鋭い。子ども同士「あの意見はよかった。」と互いを評価できるようにしていく。

コツ② 反対意見や少数意見を出す子どもこそ大切にする。

 昔は話し合いといえば多数決だったが、現代では、少数派の意見も取り入れた落としどころを探すことが大切なのは周知の事実である。多数派が敗れるなどの経験も大切である。

コツ③ 意見を言った子だけで進めるのではなく、同意や反対意見を必ず聞いて全員参加を促す。

 意見を聞いた後、教師が「いい意見が出ました。」などということは学習を深めない。「今の意見、どうですか?賛成の人は?反対は?」と必ず全員に聞き返す。できれば、そう思った理由まで発言させたい。

コツ④ 狙った答えが出てもポーカーフェイスで授業を進めることで、子どもたちは考えるようになる。

 教師の顔色をうかがっていてはダメだと子どもたちが身をもって知ることが大切である。先生の顔に答えはないのだから、自分で読むしかない。自力解決の訓練である。

 対話を深める授業では、教師の提示する問いに対し、子どもたちが考えを述べやすいように、教師は黒子に徹する。教師の顔色を見て「これが正解だ」と思わせてはならない。時間が許す限り、教師は司会であって子どもたちの意見を整理し、対立点をはっきりさせることだけでよい。感じることは人それぞれなので、正解が無い場合もある。

 対話は、相手がいてこそできることである。子どもたちに相手意識を持たせながら、自分の考えを膨らませ、相手の意見に対応しながら、考えを深めていく過程なのである。散々言いあった後、「あー、面白かった!」と言える子どもたちを育てていきたい。

今回ご紹介した臺野先生の文章が掲載されている『国語授業の改革20号』(2021年)では、次の3つのことを解明しました。

  • 国語の授業で求められている「対話的な学び」とは何か
  • どうしたら国語の授業で質の高い「対話的な学び」を実現できるのか
  • 「対話的な学び」がどのように「深い学び」を生み出し、「言葉による見方・考え方」を鍛えていくのか

本書で取り上げている教材

お手紙/白いぼうし/やまなし/少年の日の思い出/星の花が降るころに/パラリンピックが目指すもの/固有種が教えてくれること/幻の魚は生きていた/おくのほそ道/他

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プロフィール

「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。