国語授業の改革2号(2002年)

新学習指導要領 国語科新教材のポイント発問 この発問で授業がおもしろくなる

まえがき
 新しい学習指導要領が、今年の四月からいよいよ実施される。「総合的な学習の時間」が新設され、国語では「伝え合う力」が強調され、「話すこと・聞くこと」が「目標」「内容」の一番はじめに位置づけられている。そういう流れの中で相対的に「読むこと」が軽視されつつあるかのような印象さえ受ける。
 しかし、そういう傾向が仮にあったとしても、私たちは「読むこと」の重要性は全く変わらないと考える。それどころか、これからはより一層深く広く、そして確かに読むことの重要性は大きくなってくる。特に教師待ちでない、文章吟味を含んだ子どもたちの主体的な読みの力は、今後一層大きな意味をもつはずである。
 新指導要領に伴って教科書が新しくなり、新しい国語の教材がたくさん登場した。「国語授業の改革1」に引き続き、この「国語授業の改革2」でもその新教材を取り上げる。それも、すべて前回とは重ならない教材選択をした。今回は新教材の詳細な分析と同時に、ポイントとなる「発問」を具体的に枠囲みで示した。発問・指示い説明・提言・助言といった指導言のメカニズムの解明も行った。また、光村図書・教育出版・東京書籍の三社に採用された谷川俊太郎の詩「春に」を教材にし、君漢学園の町田雅弘教論が生き生きと授業をしてくれた。それをストップモーション方式で紹介し、鶴田清司氏、五十嵐淳氏が検討を加えている。
 今回も、多くの著名な研究者にご寄稿いただいた。豊田ひさき氏、望月善次氏、鈴木秀一氏、宮坂義彦氏、府川源一郎氏、須貝千里氏である。また、「わたしが勧めるこの一冊」を、同じく著名で経験豊かな研究者の方々にお書きいただいた。
 私たちは、ある一定の確かな方法(指導方法・分析方法)と内容(何をこそ学ばせるのかという教科内容)を身につけ把握しさえすれば、誰でも中身の濃い、エキサイティングな国語の授業が展開できると考えている。この「国語授業の改革」が、そのことに大きな示唆を与えてくれることと思う。
 この「国語授業の改革」シリーズを多くの先生方、研究者の方々に読んでいただき、改革のうねりを広げていきたいと考えている。

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■国語授業の改革2号(2002年)目次■

1 特集 国語科新教材の分析とポイント発問

1 国語科・新教材のための発問のつくり方──新教材「三つのお願い」(ルシール・クリフトン)を例に…阿部 昇
2 国語教師のための発問研究入門…豊田ひさき

3 新教材の分析とポイント発問 小学校・物語(1)「きつつきの商売」(林原玉枝)〔光村図書3年〕…本山智子
4 小学校・物語(2) 「消しゴムころりん」(岡田 淳)〔教育出版3年〕…臺野芳孝
5 小学校・物語(3) 「三つのお願い」(ルシール・クリフトン)〔光村図書4年〕…重藤照文
6 小学校・物語(4) 「きいちゃん」(山元加津子)〔光村図書6年〕…加藤辰雄
7 小学校・物語(5) 「美月の夢」(長崎夏海)〔教育出版6年〕…若杉和徳
8 小学枚・説明的文章(1) 「とんぽの楽園づくり」(森 清和)〔教育出版4年〕…岩崎成寿
9 小学校・説明的文章(2) 「海にねむる未来」(矢野哲治)〔光村図書5年〕…柳田良雄
10 中学校・小説(1) 「麦わら帽子」(今江祥智)〔光村図書1年〕…小倉泰子
11 中学校・小説(2) 「新聞少年の歌」(辻 仁成)〔教育図書出版1年〕…平野孝子
12 中学校・小説(3) 「ゼブラ」(ハイム・ポトク)〔光村図書2年〕…杉山明信
13 中学校・詩  「春に」(谷川俊太郎)〔教育出版3年〕…町田雅弘
14 中学校・説明的文章(1) 「パソコン通信というコミュニケーション」(俵 万智)〔光村図書3年〕…高橋喜代治
15 中学校・説明的文章(2) 「情報社会を生きる」(半田智久)〔教育出版3年〕…小林義明
16 高等学校・小説  「ナイン」(井上ひさし)〔尚学図書他〕…丸山義昭・神田富士男

2 発問・指示・説明・提言・助言をつくり出すための方法と技術

1 柱の発問(提言)のつくり方──五つのコツ…加藤郁夫
2 発問を支える助言の打ち方──六つのポイント…永橋和行
3 明確な指示の出し方──四つのコツ…小林信次
4 わかりやすい説明の仕方──三つのコツ…薄井道正
5 発問・指示・説明を立体的に組み合わせるための技術…海崎義隆

3 国語科新教材・詩「春に」(谷川俊太郎)の1時間全授業記録とその徹底分析

1 「春に」(谷川俊太郎)の1時間の全授業記録…鈴野高志
2 授業へのコメント(1)作品にふさわしいモノサシを使って読む…鶴田清司
3 授業へのコメント(2)読みの方法と授業の受け方を教えるということ…五十嵐淳
4 授業者へのコメント 授業の三つの目的…町田雅弘

4 提言・国語科教育の改革

1 多様な可能性の確保をこそ──目標論・評価論の観点への過度の傾斜を危惧しつつ …望月善次
2 国語科の総合性を生かす方向…鈴木秀一
3 教え込み方式の授業から追求方式の授業への転換──「文学表現の言葉」を追求することの方法論的意味…宮坂義彦
4 「国語」科という枠組みの見直し…府川源一郎
5 「ドブン」と「やまなし」論──学習課題を提起し、<読み>の倫理を問う…須貝千里

5 国語教師のための「わたしが勧めるこの一冊」

ヴィゴツキー著、柴田義松新訳書『思考と言語』…柴田義松
野口芳宏著『名人への道・国語教師』…野口芳宏
井上尚美著『言語論理教育への道──国語科における思考──』…大内善一
高木まさき著『「他者」を発見する国語の授業…田中 実
植山俊宏著『小学校読みの指導における日本語』…小林義明

プロフィール

「読み」の授業研究会
「読み」の授業研究会(読み研)
「読み」の授業研究会は、子どもたちに深く豊かな国語の力を身につけさせるための方法を体系的に解明している国語科の研究会です。
2021年に設立35年を迎えました。